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オーガスト日記  作者: フィクサー
第1章 追憶の文月編
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第4話 優しい勘違い

 俺は今自室で、Xたちの勉強が終わるのを今か今かと待ち望んでいる。

 3人でのゲームがそれほど楽しみなのだ。


 今回もまた2時間ほど待った後に、姉の部屋へと訪問をする予定だった。

 俺は暇を潰すため、また姉の思う壺にならないため、勉強をせずにゲームを始めた。


 ふと、あのノートどうしよう、やっぱり返すべきだよな、なんて考えが脳裏をよぎった。

 人間一度気になったことは中々忘れられないらしい。

 俺はゲームをやめて、ノートのこれからについて、頭を悩ませた。



 少しして、俺は良い案を思いついた。


 実はこの世界には、

「目には目を歯には歯を」

 なんて言葉がある。

 多分恩は同じくらいで返そう、みたいなやつなはずだ。


 なんとなく意味を履き違えている気がするが、とにかく同じ方法で返す、ということで俺もノートに書いて渡すのがいいだろう。


 最初自分のノートを使ってもいいか、と思ったが、それではXにノートを返せないので、置かれていたあのノートを使うことにした。


 ノートを1ページずつめくり、例のページへと辿り着く。

 薄く綺麗に書かれたあの一文の上に、矢印をピッと伸ばす。

 2Bの鉛筆だからか、下の字が薄いからかは分からないが、矢印の黒が少し濃く見えた。


 そして矢印の先に一文書く。


『たのしみにする』


 あまりに字が濃く写りすぎて、もはや怒られるんじゃなかろうか、なんて少し不安になった。


 そして俺は、ノートを持って立った。

 特に何かしようってわけじゃなかったが、ただとりあえず立ったんだ。



 すると、後ろに気配を感じた。


 すごく嫌な予感がする。


 恐る恐る後ろを振り返ると、3m先くらいにある部屋の扉のそばに立った少女が、何か疑うような目つきで、俺を不思議そうに見ていた。


「なにこそこそしてんの?」


 勉強中であるはずの姉だった。


 振り返った俺の手には、表紙が新品のような、題名の書いていないノートがあった。

 その表紙の色は黄色だった。


 それを見た瞬間、姉は先手を取るかのように早足でこちらへと近づいてきた。


「あんたが黄色使うなんてめずらしい。

 ちょっとノートチェックさせてよ」


 姉は何かに気づいているかのようだった。

 俺が言葉を発するより前に、俺の手から黄色いノートを優しく奪い取った。

 俺は、別にこそこそしてないし!と証明するかのように、何も抵抗せずに手を離した。


 あの一文がバレたら、また姉に勉強のこと、うるさく言われちゃうのかな、なんて勉強について口酸っぱく言われることを危惧していた。


 しかし、そんな心配は杞憂だった。


 姉は1,2ページほどめくってその文字を凝視したのち、こちらを見て嫌な顔をした。


「これ、Xちゃんのだよね。

 勝手に取ったんでしょ。なんで取ったの」


 え?


 俺は状況を理解するのに少し時間がかかった。

 つまり、姉は、俺がXのこのノートを何かしらの理由があって盗んできた、そう思ってるのか。


 なんでやねん!


 俺は誤解を解くための言い訳を考えた。

 俺は悪いことをしていないはずなのに、額から汗が垂れてきた。


 このままでは姉に一文がバレる以前に、別の問題に発展してしまう。

 しかし焦れど言い訳は出てこない。

 俺は嘘がつけない体質なのだ。


 俺は黙り込み、進退窮まってしまった。


 そんな俺を見かねて姉が口を開いた。


「とりあえずこれはXちゃんに返しとくね。

 あとで謝ったほうがいいよ」


 ふう。難を逃れた、のかは分からない。

 いや逃れてない。

 姉はおそらくひどい勘違いをしている。


 俺は墓穴を掘りたくなかったので、そのまま姉が黄色いノートを持って部屋から出ていくのを、ただただ見守っていた。

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