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オーガスト日記  作者: フィクサー
第1章 追憶の文月編
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第2話 Xとの出会い

 まず表紙をめくったところで、俺は不意を突かれた。


 というのも、まず1ページが日記のそれではなかったのだ。

 具体的に言えば、「私たちの国土」なんて書いてあって、普通に社会の授業の板書だった。


 そのうえ、そこにある字は俺の字ではなかった。


 なんというか、見たことあるような気はするのだが、まるで女子が書いたような丸くて綺麗な字だ。


 もしかして。

 間違えてクラスの女子のノートでも持って帰って、返すのが億劫になり、私物化したのか...?

 そもそも、わざとではないよな?

 というか、ならこれは日記じゃないじゃん。


 なんだこれ。

 こわいこわい。


 そんなことを考えながら、1ページずつ、なんとなく慎重にめくる。

 そして15ページほどめくったとき、見えるその右のページには板書ではない文字が見えた。


 しかも、かつての俺の字だった。


 これを見た瞬間、俺の忘れていた記憶が芋蔓式に鮮明に思い出された。

 たしかにこれは日記だ。

 だが、ノーマルな日記ではない。

 それは、友達なんかと交換しながら日記を介してコミュニケーションをする日記。

 そう、俗にいう「交換日記」だ。




 俺には2歳差の姉がいた。


 この年の差の姉弟っていうのはまあ多分仲良くなりやすいんだろう。

 俺は姉と友達のような感覚で接していた。


 そんな関係だったため、俺が友達を家に連れてきて遊ぶときにもそこに姉は居たし、逆も然りで俺も姉の友達と遊ぶ機会は多くあった。


 姉はフレンドリーでコミュ力もあるから、特に人脈も広く、信頼も相当厚かったらしい。




 俺がたしか8歳ぐらいだったか。

 ある日、学校が終わった後、姉がいつものように家に友達を連れてきた。

 その友達、仮にXとしよう。


 Xと俺は初対面だった。

 リビングでゲームをしていた俺はXに挨拶をするべく、玄関へと出向いた。

 姉に紹介されてぺこりと頭を下げる俺。

 次の瞬間Xは小さく声を上げた。


「えっ!」


 Xは酷く驚いた顔をした。

 まるで俺と顔見知りかのような反応だった。

 もちろん俺はXの顔は記憶にない。

 俺たち姉弟は不思議そうな顔でXを見た。

 すると、Xは人違いでした、と言わんばかりに顔を赤くした。

 しかし決して俺から目は逸さなかった。


 Xはその日、勉強道具を持参していた。

 俺がいつものように姉の部屋に遊びに行こうとすると、今日は勉強をするから、と一蹴された。

 少し悲しかったが、終わったら3人でゲームするということを条件に大人しくすることにした。


 俺たち姉弟の会話の間、Xはもの珍しそうにちらっと俺を見たり、口を開こうとしては閉じる、なんてのを繰り返していた。



 その後は特に何もなく、2時間ほど俺は自室で1人でゲームしたのち、姉の部屋に行った。

 そろそろゲームパーティをしようと思ったからだ。


 途中廊下を通るとき、人の気配を感じたような気がした。

 が、特に気にせず母親が帰ってきたのかな、なんて思っていた。


 姉の部屋に入る。

 そして部屋に入ってまず思ったこと。

 Xがいない。

 姉に聞いてみる。


「Xちゃんならちょうど今帰ったよ?」


 え?聞いてないんだが。

 ゲームを3人でする約束じゃなかったのか?


「急用を思い出したんだって」


 ああ、そうか。なら許そう。

 なんて別に怒ってなかったが、なんとなく裏切られた気がして、気を紛らわすためにそのまま夜まで姉とゲームをし続けた。



 自室に戻ったのは21時くらいだっただろうか。

 もう疲れたのでお風呂に入って寝ようか、なんて考えながら机の上にゲーム機を置こうとした。


 置けない。

 すでにそこには先客がいたようだ。


 そこには、俺が知らないノートが置いてあったのだ。

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