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オーガスト日記  作者: フィクサー
第2章 親睦の夏休み編
12/24

第12話 暗闇の中の君

 俺は放心したままただ機械的に部屋に戻り、本当にこの手に日記があることを確認すると愁眉を開いた。


 やはりXは悪い子ではなかったのだ。



 日記の亀裂はセロハンテープで軽く修復されていた。

 亀裂は何とかなったようだが、しかし完全に水に濡れてしまったノートは、乾いてもシワが残っていた。


 そして日記と共にポストに入っていた俺のハンカチは、花の甘い匂いを少し漂わせていた。

 洗濯してくれたのだろうか。

 ハンカチは既に冷たくなっていた。



 俺はノートを開いて2日前の日記を読むことにした。


『8月2日水曜日

 たしかに1日前のことじゃないと日記に書けないね。

 はずかしながら今気がついたよ。


 わざわざ雨の日まで日記を届けてくれてありがとう。

 確かに2日に1回昼までに持ってく、っていう約束だったけど、無理して守らなくてもいいんだよ?

 今日は雨だから来ないだろうなーなんて思ってたら、びしょぬれのハンカチと破れた日記が入っててびっくりしたよ。

 ハンカチでふこうとして破れたんでしょ。

 君らしくていいなぁなんて思っちゃった。


 話変わるけど、明後日くらいに君の家に遊びに行くことになったよ。

 お姉ちゃんにはもう話はしてるからね。

 また3人でゲームパーティしよ!


 P.S.

 ハンカチはきれいに洗たくしといたからそのまま使ってもいーよー』


 その日記の内容は俺を少し驚かせるものだった。

 Xは日記の亀裂に対して、全く怒っていなさそうだった。

 なんならいつもより少し優しいような気さえした。


 日記の内容から察するに、Xは昨日のうちに俺の家へ日記を届けていたんだろう。

 俺は秘密のポストに来ることを考慮していなかった。

 そういえば、一度だけXを勝手口から家に入れたことがあったから、Xはポストの場所を知ってるのか。


 姉に見つからないためとはいえ、一言言ってくれればよかったのに。


 無理しなくてもいいとは言われたが、俺は昼までに日記を出したかったので、特に書きたいこともなかった俺はあの雨の日の出来事を詳しく綴った。

 心の中の小さな氷が徐々に溶けていくのを感じた。




 次の日、Xは朝早くから俺の家へ来ていたようだ。


 昨夜俺は夜中までゲームをしていて、完全に眠りについたのは日を跨いでさらに2時間ほど経った頃だった。

 夏休みということもあり、俺は翌朝寝坊をした。

 昼前くらいまで寝ていたのだ。




 俺は頬に何か冷たいものが当たった気がして目を覚ました。


 重い瞼を少し上げると、そこには白くて艶やかな手と、俺の見知った顔が微笑みながらこちらを覗いていた。

 彼女は俺が目を覚ましたことに気がつくと、焦りながら俺から手を離して二歩ほど後ろに下がった。


「ご、ごめん。起きちゃった?」


 Xの声のようだった。

 俺はまだ寝ぼけていたので状況がよく理解できず、また反対側を向いて寝ようとした。

 あまりにも眠過ぎて、瞼を閉じたと同時に俺は気を失った。



 なんとなく背中から温かい何かに包まれたような気がした。




「そろそろ起きなさい!

 Xちゃんももうとっくに来てるんだから!」


 俺は姉の怒声で布団から飛び起きた。

 カーテンの閉まった薄暗い部屋の中には、姉しかいないようだった。

 ていうか、今日がXが遊びに来る日か。


 俺は洗面所に行って顔を洗ったあと、急いで服を着替えてご飯も食べずにリビングへと向かった。


 俺は既にゲームを始めていた姉とXに加わって、その日はひたすら3人でゲームパーティを楽しんだ。

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