序章1
この小説を開き読んでいただき、ありがとうございます。
真城 悠様の『メタモル・ファイト』を読めばもっと楽しめる、というよりそちらをある程度読んでいる前提になってしまっている作品なので、そちらもどうぞ。というより、そちらをどうぞ。
やっと見つけた――。
視線の先の相手を、「彼」はじっと見つめていた。
―間違いない、橋場英男だ。
彼は最近、「彼」らのメタモルファイターのグループの中で(勝手に)名を上げて行ってる。
「彼ら」が秋葉原まで少し遠出してやって来たのは橋場ら御一行と戦うため、そして橋場ら一行が戦ってきたという数多のファイターの情報を得る為だ。
「彼ら」は―いや、「彼女ら」は―スカートを穿きながら橋場英男らを見つめていた。
ーーー
メタモルファイターの水谷千春は、兄の水谷祐樹とともに秋葉原へ向かっていた。
橋場英男らに挑戦し、彼らからも他のファイターの情報を聞き出すためだ。
兄弟そろってファイターという珍しい家計の彼らは、間違いなく「ジャンキー」と言えるほどにはバトル好きであった。兄弟でバトルをする機会が多かったのが大きい。
彼らはとあるメタモルファイターの「グループ」に属していた。
グループと言っても資金を集めて何か活動をする訳でもなく、仲間同士特殊能力者同士の集い、チャット程度だったが、そこを通じてさらにバトルに惹かれて行った彼らは、最近名前を聞いた橋場を尋ねに秋葉原まで来たーという訳だが…
「で、ソイツらはどこにいるんだって?」これは兄の祐樹。
「うーん、『質素なメイドカフェ』…って情報は得たけど、それ以外はよくわかんないな…」
「質素…?メイドカフェって時点で華やかだと思うんだが…」
「ま、特殊な場所なら見つけやすいし…、時間にも余裕はあるから。ってことで…」
「ここからは『単独行動』だろ。俺も秋葉来るのは久しぶりだからな、寄って来たいとこもあるし。」
「いいけど、カフェ探しも忘れないでよ?見つかったらすぐ連絡。」
「あいよ」
こうして祐樹は千春と別れて一人で秋葉原を渡り歩いていた。
久し振りに来たアニメショップによって近所じゃ販売してないものを買ったりしつつ、メイドカフェとやらも探してみたのだが、どれも真っピンクだったり、サービス過剰(?)だったり、とてもじゃないが「質素」には見えないものばかりだった。
その時だった。
「ちょっとそこの兄さん、いいかい?」
祐樹は立ち止った。
声のした方に目を向けると、サングラスをかけて、バンダナをしている男だった。
「カツアゲですか?お金持ってませんよ。」
「おっと、いきなり酷い言われようだな…。ま、いい。間違えだったら悪いが…、あんた、メタモルファイターかい?」
この一言だけで祐樹は彼の言わんとするところを悟った。
少なくとも悪意を持った犯罪者ではないと察し態度を若干崩す。
「ファイト?いいですよ。ただ、条件で賭けたい物が。」
「お、なんだ?なんでも言ってみろ、おいらに勝ったらできることならなんでもやるよ。ただ、そっちが負けた場合はこっちの条件を飲んでもらいたい。」
えらく強気な男だ。特殊系か?だがそこはどうでもいい。戦うことが自分への経験値にもなるのだ。
「ま、多分いいですよ。こっちが勝ったら、他のメタモルファイターの情報を誰か教えてください。」
「おおっと、ジャンキーさんか。ま、いいぜ。心当たりは数人はいるしな。んで、こっちが勝ったら―デートだ。」
「デート…ですか…」祐樹が露骨に嫌な顔をする。
「んだよ、そこも含めての条件付き勝負だろ?釣れないなぁ」
「…まぁ、いいですけど、今は予定があるんで一回後になりますよ?」
「おいらは別に構わないが、その間条件的にずっと戻れないぜ?」
「…もし負けたら連絡先渡しと組んで」
「あいよ…ならそれでいいか。準備は?」
「いつでも」
「んじゃ…いざ勝負!」「勝負!」
その瞬間、背中にとてつもない衝撃を感じた。
後ろから誰かがぶつかって来たのが―、さすがの不意打ちにたまらず前に転げまわる、
そのまま押されつつその先にいるはずの男の顔を心配してみると―
―笑っていた。
中だるみもしたくないので、序章はちゃっちゃと行きたいと思います。
ある意味で適当になってしまっているかもしれません。すいません。