Extra『……き───だ……』
2台の撮影機からの録画映像を加工せず送信すると、アレクシス・ワルキュナーは借りていた編集室に向かった。ここは、船内で映像配信を行う者などがよく使う設備で、いろんな機器が使用可能となっている。
情報局のデータベースから水森亮一のものを呼び出し、先程の映像と同調させる。ライブラリから、参照可能な音源とつきあわせて音を消してゆくとデータと重なる彼の声だけが残された。
『………………ダ』
ボリュームが小さすぎてうまく聴き取れない。
どうせこの部屋は防音だ。アレクシスは音量を最大にした。
『……きれいだ……』
医師のややうわずった声はそう告げていた。
「まったく、油断も隙もない」
思わずため息が出た。
「……しかし、それにしては」
褒め言葉のはずなのに、言われた本人の表情が険しくなったのが彼にはわかった。その理由は惑星ヤンドリケへ降下するシャトルの中で明らかになった。
「ねぇ、アレク」
隣席に座る彼女は平静を装い、尋ねた。
「切れちゃダメだ、ってどういう意味だと思う?」
「…………は?」
かすかに狼狽する彼の頭の中で映像の理由が合致した。そうなのだ。彼女は、あれをそう聞いたのだ。
「そう、いうことでしたか……」
思わず笑いだしたくなったが、彼はそれをなんとか堪えた。
fin.
ということでした(*^^*)