ギャルと黒髪ショートボブ①
ご覧いただき、ありがとうございます!
「しーちゃあああああああああん!」
「げ!? 葵! コッチ来んなし!」
次の日の朝、通学路で待ち構えていた古賀さんが、久しぶりにしゆのさんに特攻を仕掛けて来た。
「ハハハ、おっす池田クン!」
「はは、おはよう後藤くん」
俺は後藤くんとコツン、と拳を当てる。
「ところで、古賀さんは今日は部活じゃないの?」
「ん? おお、昨日はフルで試合だったから、疲れを取るために朝練は休みなんだ」
「なるほど」
でも、あんなにしゆのさんに絡んでたら逆に疲れが溜まりそうな気が……。
「にゅふふ、しーちゃん成分を補充して疲れを取るのだ」
「はあ……何だしソレ……」
嬉しそうにしゆのさんに頬ずりする古賀さんと、ヤレヤレと苦笑するしゆのさん。
まあ、あれはあれで癒されてるってことでいいのかな?
「それより、池田クンも聞いたんだろ?」
「ああ、しゆのさんに教えてもらったよ」
後藤くんが言うのは、あの“神森陽菜”のことだ。
まさか和也に色々情報流したりしていたあの女の子と、古賀さんが言ってた俺に気がある女の子が同一人物だったなんてな……。
「おーコワイコワイ、モテる池田クンは違うねえ」
「からかうなよ後藤くん……」
おどけてそう言う後藤くんを、俺はジト目で睨んだ。
「ハハハ! ま、必要だったらいつでも俺達頼ってくれよ!」
「ああ、もちろん頼りにしてるよ。だけど、今回は大丈夫」
「およ?」
俺は古賀さんとじゃれるしゆのさんをチラリ、と見る。
「しゆのさんとも話したけど、この件は俺としゆのさんの二人で“神森陽菜”に会うことにしたよ」
「うーん、そっか。でも、萩月チャンやり過ぎそうだな……」
「はは、そこは彼氏の俺がちゃんと止めるよ」
「お! なんだよ、その神森って女の子に見せつけて諦めさせる作戦か?」
「はは、まあね」
後藤くんがウリウリと肘で突くが、本当にその通りだから甘んじて受けておこう。
だって、俺達のしようとしていることは、そういうことなんだから。
しゆのさんの隣には、俺しかいないこと。
俺の隣には、しゆのさんしかいないこと。
それを、“神森陽菜”に分からせるだけだから。
◇
——キーンコーン。
放課後になり、俺達は帰り支度もしないまま、教室を出る。
だって、彼女を逃がす訳にはいかないから。
「しゆのさん」
俺はス、と手を差し出すと。
「あは、塔也」
察したしゆのさんが、俺の手を恋人つなぎで握った。
俺達は帰宅しようとしている生徒達に見せつけるように、二年の教室を目指す。
そして。
——ガラ。
「“神森陽菜”って子、いる?」
しゆのさんの凛とした声が二年の教室に響き渡ると、生徒達は一斉に彼女に注目した。
そして、次に教室の窓側の席に座る黒髪ショートボブの女の子を見た。
神森陽菜は、ガタ、と席を立つと、ツカツカとこちらへやって来た。
「何ですか、萩月センパイ?」
しゆのさんの真正面に立つと、神森陽菜は背の低いしゆのさんを見下すようにねめつけた。
「ちょっと話があるし」
「話? 私にはありませんが」
どうやら神森陽菜はしゆのさんの言うことなど、何一つ聞く気はないらしい。
「そうか。ならここで話をしようか?」
俺が彼女にそう告げると、少し顔をしかめた。
「……分かりました」
渋々と言った様子で、神森陽菜が教室を出る。
「ホラ、センパイ行くんでしょ?」
そう言うと、神森陽菜はプイ、と正面を向いてスタスタと歩く。
「何アイツ……!」
「はは、俺達から嫌な話を聞かされるんだから、冷静にはなれないんじゃないかな?」
俺はしゆのさんに微笑みかけると。
「あは! 確かに!」
しゆのさんも俺に微笑み返し、俺の腕に抱きついた。
「っ! ……………………チッ」
こちらをチラリ、と見た神森陽菜は、しゆのさんが嬉しそうに俺の腕にしがみつく様子に、顔を歪めて舌打ちした。
そんな彼女を見ながら、しゆのさんはフフン、とドヤ顔で返した。
はは、何だかなあ……。
そして俺達は体育館裏に来た。
というか、須藤花凛の時といい、和也の時といい……何かある時はいつもこの場所だなあ……。
「それで、話ってなんですか?」
「あは! 決まってんじゃん! 塔也の弟使ってアタシをストーカーさせて、どういうつもりだし!」
しゆのさんは挑戦的な笑みを浮かべ、神森陽菜に直球でぶつけた。
「どうって……言っている意味が分かりませんが?」
神森陽菜は不思議そうな表情を浮かべ、首を傾げた。
「とぼけんなし! アンタがアタシと塔也を別れさせようとしてそうさせたのは分かってるんだし!」
「悪いけど、それは和也がはっきりと答えたよ。聞いてみる?」
俺はポケットからスマホを取り出し、ボイスメモの再生ボタンをタップすると、スマホから俺と後藤くんで和也を問い詰めた時の音声が流れだした。
そして、一部始終が語られる。
『ねえ、あなたのお兄さんにあんな彼女がいるなんておかしくない?』
『あのギャルみたいな萩月先輩には、池田くんみたいな人のほうがお似合いだと思うけどなあ』
『というかいっそのこと、池田くんが萩月先輩を救ってあげたら?』
『大丈夫、それはあと少しで萩月先輩が君に救われるところまで来たってことだから』
「……これらは全て、和也の口から出てきた、君が和也に言った台詞だよ」
停止ボタンをタップし、俺はスマホをしまった。
「これでもシラを切る?」
「……………………………」
睨みつけるしゆのさんの視線に、神森陽菜は俯く。
だけど。
「……………………………クフ♪」
口の端を吊り上げ、神森陽菜は不気味に嗤った。
お読みいただき、ありがとうございました!
次回は明日の夜更新!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!




