ギャルのピースサイン
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「ふう……」
ご両親との食事を終えて部屋へと帰って来ると、俺は一息吐いた。
しゆのさんの家も居心地がいいけど、それでもやっぱりこの部屋が一番落ち着く。
「あは……色々あって疲れたね……」
しゆのさんも俺の隣にちょこん、と座ると、もたれかかってきた。
「うん、色々あった。でも、それ以上に嬉しくて、楽しかったよ」
「ん……」
しゆのさんが幸せそうな表情で俺の肩に頭を乗せる。
「あー……でも明日から学校かあ……」
少し苦笑しながらしゆのさんがポツリ、と呟いた。
確かに、できればあと一日くらいゆっくりしたいなあ……。
あ、でも。
「学校もそうだけど、バイトだってあるからあんまりゆっくりはできないかな」
「あは……忘れてた……」
うん、俺達の生活がかかってるから、バイト休む訳にはいかないもんなあ。
「はあ、しょうがない……その分今日は思いっ切り塔也に甘えるし」
「はは、俺も明日からのために充電させてもらおう」
そう言うと、俺はしゆのさんの腰に手を回して抱き寄せると。
「ん……ちゅ……」
しゆのさんに口づけをする。
「ちゅ、ちゅく……ふ……ん……」
するとしゆのさんも、求めるようにキスを返してくれた。
なら、俺も……。
「ちゅぷ……じゅ……くちゅ……」
しゆのさんと舌を絡ませ合う。
「ぷは……は……塔也……」
とろん、とした表情を見せ、しゆのさんは「もっと」とおねだりするように俺を見つめる。
「しゆのさん……」
「は……ん……………………んう……っ!?」
気づけば、俺はしゆのさんのその柔らかくて大きな胸に手を置いていた。
でも、しゆのさんも抵抗することなく、むしろ、俺の首に腕を回してくる。
「塔也……ん……は……あ、ああ……」
「しゆのさん……」
「あ……は、ん……っ!」
——ピリリリリリリリ。
「「あああああああああああ!?」」
突然、しゆのさんのスマホが鳴り響いた。
「だだだ、誰だし!」
しゆのさんが怒りながらスマホを手に取ると。
「もしもし! ……って、葵!?」
どうやら電話の主は古賀さんみたいだった。
「はあ……こんな時に何だし……」
しゆのさんが古賀さんと話し込んでいる。
は、はは……ま、まあアッチはその……ま、また今度、かな……。
「うん……うん……って、はあ!?」
すると、しゆのさんが突然大きな声を上げた。
「……それで……うん……分かった、ありがと」
しゆのさんは電話を切ると、はあ、と深い溜息を吐いた。
「しゆのさん、何かあったの?」
「あは……ほら、前に葵が言ってた、塔也のこと気になってる女の子がいるって話あったじゃん。その子が、色々とアタシの悪口言ったりしてるんだって」
「あ……」
そ、そういえばあの話もしておかないと。
実家との示談があった関係ですっかり後回しになっていたもんな……。
それに。
「ね、ねえ、その女の子の名前って分かる?」
「……ねえ塔也、まさかその子に興味があるとか、そんなんじゃないよね?」
しゆのさんがジト目で俺を睨む。
「ま、まさか!」
「ホントに~?」
「ほ、本当だから!」
な、何でも念を押されても、俺の答えは一つなのは分かってるくせに……。
「あ、あは……アタシだって信じてるけど、その……それでも心配しちゃうのはしょうがないし……」
そう言うと、しゆのさんが苦笑した。
ああもう! しゆのさんは!
「っ! と、塔也……?」
「はあ……そんな可愛いの、反則だろ……」
俺はそんな嫉妬というか、ヤキモチを焼くしゆのさんが可愛すぎて、思わず抱き締めた。
「あは……塔也ったら、アタシにベタ惚れだし」
「当然」
俺はしゆのさんの瞳を見つめ、即答した。
「それで、その女の子の名前……」
「あ、うん。“神森陽菜”って女の子だって」
「やっぱり……」
「『やっぱり』って、どういうこと……?」
俺がポツリ、と呟いた言葉を拾い、しゆのさんが訝し気な表情を浮かべた。
「ああ、実は……」
俺はしゆのさんに事情を説明した。
和也が俺達のバイト先を知っていたのは、俺達の後をつけていたのではなくて、その“神森陽菜”から教えてもらっていたこと。
“神森陽菜”は、事あるごとに和也に『池田塔也に萩月しゆのは相応しくない』と何度も言っていたこと。
そして。
「……和也をそそのかして、しゆのさんは和也にこそお似合いだ、と言っていたらしい」
「何それ……」
しゆのさんは思わず顔をしかめる。
「ほら、しゆのさんも知ってるんじゃないかな。俺達が下駄箱で和也の奴を見かけるたびに、一緒にいた黒髪ショートボブの女の子を」
「あ!」
どうやらしゆのさんも思い出したらしい。
「ああ、和也にも確認したから間違いない」
「弟に確認って……どういうこと?」
すると、しゆのさんが咎めるような視線を俺に向けた。
「……しゆのさんに内緒で和也にあったことは謝るよ」
「はあ……塔也のことだから、アタシがアイツに少しビビッてたから、そんなことしたんでしょ……?」
「……ああ」
すると、しゆのさんが俺の顔を両手で挟んだ。
「し、しゆのさん!?」
「塔也……アンタがアタシのこと心配してくれるように、アタシだって塔也が心配なんだし。だから……今度からはせめてアタシにちゃんと話して」
「うん……ごめん」
はあ、本当にしゆのさんの言う通り、だな。
「まあ、塔也のことだから、会った時は後藤あたりと一緒だったりするとは思うけど」
「はは……当たり」
俺は苦笑しながら頭を掻いた。
「もう……とにかく、明日学校でその“神森陽菜”って子と会ってみるし」
「あ、俺も一緒に行くよ」
「当然! だって、ハッキリ言ってやんなきゃだし! 塔也の隣は、アタシしかいないんだってこと!」
そう言うと、しゆのさんは満面の笑みでピースサインをした。
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次回は明日の夜更新!
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