家族
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父親と和也を追い出した後、俺達は親権制限の申し立てに関する手続きをした。
といっても、俺のしたことは申立書などの必要な書類に自分の名前とか生年月日とかを書いたりした程度だが。
それ以外の必要な書類なんかは、弁護士の紅林さんがしてくれるとのことだ。
「それで……裁判所から決定されるまでの間って、まだ向こうに親権ってあるんですよね……?」
俺は心配になって紅林さんに尋ねる。
だって、さっきお父さんはああ言ったけど、親権がまだ向こうにあるんだったら、父親が言っていた誘拐罪になって、被害届が出せるってことだし……。
「ははは、心配いらない。それまでの間は親権を一時的に停止したりすることができるんだ。もちろん、その間の親権の代わりは佐久間さんが務めてくださるよ」
「そ、そうですか……」
それを聞いて、俺はホッと胸を撫で下ろした。
そのせいで、しゆのさんやお父さんに迷惑が掛かったりしたらどうしようかと思ったし。
「はは、本当に君は優しいね。こんなこと言っては何だけど、親兄弟はアレなのに、なんでこんなに真っ直ぐに成長できたんだろう」
そう言うと、紅林さんが首を傾げた。
だけど、そんなの答えは簡単だ。
「それは……しゆのさんがいたからです。しゆのさんが、俺のことを信じてくれたから、俺のことを見てくれたから」
「あ……塔也……」
俺はしゆのさんの手をキュ、と握る。
あの時、しゆのさんに出逢わなければ、俺は今もあのアパートの薄汚れた部屋で、陰鬱な生活を続けていたに違いない。
俺は……本当に幸運だった。
「いやあ、まさか高校生に妬くとは思わなかったよ」
紅林さんが俺達を見て笑った。
俺としゆのさんは、肩を竦めて苦笑するばかりだ。
「はは、それじゃ帰ろうか。美月さんも心配して待ってるだろうしね」
「あれ? お父さん、お母さんに電話しないの?」
「せっかくだから直接言いたいじゃないか」
そう言ってお父さんは微笑んだ。
「はい、俺もお母さんに直接伝えたいです。結果とその……“ありがとう”って」
「あは! お母さん絶対喜ぶし! ていうか、塔也にそんなこと言われたら、絶対お母さん泣くんじゃない?」
「はは、かもしれないね」
俺達三人はドッ、と笑った。
ああ……幸せだ。
◇
「おかえりなさい! その……どうだった?」
しゆのさんの家に着くなり、お母さんが玄関から飛び出してきて、少し不安そうな表情で尋ねた。
「はい……無事、話はつきました」
「本当に! やった!」
お母さんが両手を上げて喜ぶ。
「お母さん……本当に、ありがとうございます! 俺なんかのために……」
「こら! 『俺なんか』とか言っちゃダメよ! 塔也くんは素晴らしい男の子なの。そんなこと言ったら、私達三人の想いに失礼よ?」
「あ……す、すいません!」
お母さんに言われて、俺が失言だったことに気づいた。
そうだよ。しゆのさんが、お母さんが、お父さんが……そうやって俺のこと想ってくれているのに、自分自身が卑下しちゃったらその想いを否定することになってしまう。
「うん、分かればよろしい」
そう言うと、お母さんがニコリ、と笑った。
「それより、もう夕方も過ぎた頃だし、せっかくだから美味しいものでも食べに行こうか。ほら、今日の結果の祝勝会も兼ねて」
「あは! いいじゃんそれ!」
お父さんの提案に、しゆのさんが賛同の挙手をした。
「うーん……ま、いいか」
お母さんは二人とは違い、少し苦笑した。
あ、ひょっとして……。
「まあまあ、今日の分はせっかくだし二人に持って帰ってもらったら? 明日の朝ご飯のこととかもあるだろうから」
「ええ、そうね」
さすがお父さんだな、ちゃんとお母さんが晩ご飯を作っていたことも気づいた上でそう提案するんだから。
「あは、自慢のお父さんだし」
そして、しゆのさんが俺にそっと寄り添いながら、微笑みながら俺にそう言った。
「うん……俺の目標、だよ」
「んふふー、そっかー」
「うん、そう」
俺はしゆのさんの肩を抱く。
「ですって、あなた」
「ははは、何だか照れちゃうね」
からかい気味にお母さんが話を振ると、お父さんは少し嬉しそうに頭を掻いていた。
「さて、じゃあ行きましょ! 塔也くんは何が食べたい?」
「お、俺ですか? そうですね……しゆのさんの作ったご飯、かなあ……」
お母さんの問い掛けに少し悩んだ後、無意識に出てきた言葉がソレだった。
「あうう……塔也のバカ、大好き」
「あらあら」
「ははは」
俺は思わず頭を掻きながら苦笑した。
——家族に囲まれる幸せを噛みしめながら。
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