ギャルへの信頼
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「池っちー! 晩ご飯できたから、運ぶの手伝ってー!」
「ああ」
萩月さんに呼ばれ、俺はキッチンへと行くと。
「おお……!」
できあがった料理を見て、俺は思わず感嘆の声を漏らした。
野菜がたくさん入った味噌汁に、鮭のムニエル、そしてポテトサラダ。
その美味しそうな料理の数々に、俺は釘付けになる。
「んふふー、美味しそう?」
「ああ! 本当に萩月さんはすごいな!」
「あ、あは……そんな、面と向かって褒められたら、照れるし……」
萩月さんははにかみながら視線を落とす。
そんな萩月さんが可愛くて、俺は、今度は料理から彼女に釘付けになってしまった。
「ホ、ホラ! 早く運んでくんないと!」
「あ、ああ!」
俺は待ちきれないとばかりに、大慌てで料理をテーブルに運んで並べる。
もちろん、料理の器は百均で買ったもの。これも、萩月さんとお揃いだ。
「さてさて、それじゃ……いただきます!」
「いただきます!」
手を合わせると、俺は真っ先にお椀を持って、味噌汁を一口すする。
「……美味い!」
「んふふー、でしょ?」
ちゃんと味噌の味だけじゃなくて、ダシの風味もあるし、多くの種類の野菜を入れているからか、味がさらに複雑になって……うん、美味いの一言に尽きる!
「こ、今度は!」
鮭のムニエルに箸を入れ、口の中へと放り込む。
「うーん……パリッとした皮と、バターの風味たっぷりの身が何とも……」
あまりの美味さに、俺はただ目を細め、口元を緩めることしかできない。
「そして……ポテトサラダ!」
次はポテトサラダに狙いを定め、少し多く箸でつかむと、大きく口を開けて一気に頬張る。
「モグモグ……ああ、幸せだ……」
「あは、池っちったら、ホントーに美味しそうにご飯食べちゃってさ」
見ると、萩月さんが頬杖を突きながら、ジッと俺を見て微笑んでいた。
「本当に美味しいんだから仕方ない! こんな美味しい晩ご飯、生まれて初めてだ!」
「あはははは! それは大袈裟だって!」
「そんなことはない! 最高の晩ご飯だよ!」
「も、もう……ま、まあ、これからもアタシが作るんだから、たった一食で満足してどうすんの」
「そ、そっか、明日もこんな美味しいご飯が食べられるんだな……」
嬉しい。
ただ、嬉しい。
俺は嬉しさのあまり少し泣きそうになるのを抑えて、夢中でご飯をかき込んだ。
◇
「ごちそうさまでした!」
「あは、お粗末様でした」
あっという間に平らげ、俺は満足して一息吐いた。
「はあ……美味かったなあ……」
「わ、分かったから! いちいち感動すんなし!」
頬を真っ赤にして苦笑しながら、萩月さんが俺の肩を軽く押した。
何か、いいな……。
「さ、さあ! チャッチャと洗い物済ませちゃうから、食器をシンクに運んで!」
「ああ! というか、洗い物は俺がするぞ?」
「んー……じゃあ、一緒にしよっか」
「ああ、そうだな」
俺と萩月さんは食器をシンクに運ぶと、並んで食器を洗う。
洗剤とスポンジで汚れを取るのが萩月さんで、俺はそれを水で流す係だ。
で、全部洗い終わったら、布巾で食器を拭いて重ね置きしておく。
「さてさて、それじゃアタシはお風呂に入ってくるから」
「ああ、行ってらっしゃい」
萩月さんはバスタオルや着替えを取り出すと、脱衣所に向かってカーテンを閉め……たかと思ったら、隙間からこちらを覗いていた。
「覗くなよ……?」
「も、もちろん!」
今日もキッチリ釘を刺されてしまった。
——シャアアア……。
シャワーの音が聞こえ、昨日と同じく俺は緊張しながら正座待機をしている。
すると。
——ピコン。
あれ? メール?
俺はスマホを取り出し、画面を見ると。
「あ、やっと一つ来た」
それは、昨日申し込んだ、バイト募集していた店からの面接案内だった。
でも。
「うーん……喫茶店、かあ……」
連絡くれたのが、できれば避けたかった飲食店というのは、ついてない。
とはいえ。
「……これからは二人分いるんだ。選り好みはしてられないし、後は長く働かせてもらえるように祈るしかないな」
「何を祈るの?」
「おわっ!?」
突然、いつの間にかお風呂から上がった萩月さんが背後からヒョコッと顔を出したので、俺は驚いて仰け反った。
だが、それも仕方ない。
しっとりと濡れたウェーブのかかった髪からトリートメントの香りを漂わせ、その可愛い顔が触れてしまいそうな程至近距離にあったんだから。
「? 池っち?」
「あ、ああいや、申し込んでいたバイトに関しての連絡があったんだ」
「ふーん、そこって良さげ?」
「ど、どうなんだろう。喫茶店なんだが、良くは分からないな」
「そっか」
俺はしどろもどろしながらそう言うと、興味を失ったかのようにフイ、と離れた。
「あ、そ、それで、明日の放課後に面接があるみたいなんだ。だから明日は、萩月さんは先に帰っていてくれ。そ、それと」
俺は押入れを開け、通帳や印鑑などの貴重品をしまってある引き出しから、念のためにと置いてあるお金、十万円の入った封筒を取り出すと。
「こ、これ、当面の生活費だから。必要な物とかはこれを使ってくれ」
「ちょ!? い、池っち!?」
萩月さんに差し出すが、何故か彼女は焦った表情を浮かべた。
「ま、待ってよ! いきなりそんな大金、なんでアタシに渡そうとすんの!?」
「え? だって、俺じゃ何を買っていいかも分からないし……」
そう伝えると、萩月さんがこめかみを手で押さえながら眉根を寄せた。
「池っち……もっと用心しなよ。アタシがそのお金を受け取って、そのまま持ち逃げしたらどうすんの」
「いや、それはない」
「は、はあ!? な、なんでそんなこと言い切れるの!?」
なんでって、それは。
「萩月さんだから、だな……」
「っ!?」
うん、やっぱりその答えが一番しっくりくる。
こんな俺を信じてくれた優しい萩月さんだからこそ、俺は誰よりも信頼できるんだ。
で、萩月さんはというと、何故か顔を真っ赤にして視線を泳がせていた。
「も、もう! 池っちのバカ!」
「ええ!?」
な、なんで!?
「と、とりあえず、このお金は預かっとく! で、使ったらレシートと一緒に池っちに確認してもらうから!」
「え、いや、別にそんなこと……「するし!」は、はい!」
そんなことしなくてもいいと言おうとしたが、萩月さんの勢いに負け、つい返事してしまった。
「ホ、ホントにもう……」
封筒をギュ、と両手で握り締め、俯きながら口を尖らせてブツブツと言う萩月さん。
そんな彼女を見て、俺はついクスリ、と笑ってしまった。
「……何?」
「い、いや、何も……」
ジロリ、と睨む萩月さんに、俺は顔を背けた。
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次回は今日の夜投稿予定!
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