決戦②
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「ええ、構いませんよ? どうぞ告発なさってください。まあ……それが受理されるかどうかは分かりませんが、ね」
そう言うと、お父さんがニヤリ、と笑った。
「……強気ですな。本当に、そうしても良いと?」
怪訝な表情で、うちの父親はお父さんをジロリ、と睨む。
俺にも……お父さんが何を考えているのかさっぱり分からない。
本当に、大丈夫なんだろうか……。
「ええ。だって、うちのしゆのは、あなた方の虐待から守るために、塔也くんを匿っていた訳ですから。本当に、自慢の娘ですよ」
そう言って微笑むお父さんと、何故かクスクスと笑う紅林さん。
「虐待? そんな事実はありませんが?」
「いえいえ、先日、お宅の奥様が色々と話してくださいましたよ? 塔也くんに対するネグレクトと精神的虐待の数々を」
あ……あの時の……。
「なのでうちの妻と話し合って、塔也くんの件について児童相談所に足しげく相談しに行ったんですよ。そうしたら、やはり一時的に実のご家族から引き離すことが妥当じゃないかとのご意見もいただきまして」
「はあ!?」
すると、うちの父親が驚きの声を上げて立ち上がった。
「そ、それは話が……!」
「話? 何の話ですか?」
「う……いや……」
「ああ、ひょっとしてうちの妻とあなたの奥さんで交わした、塔也くんに対する虐待を口外しないっていう、あの話ですか?」
「…………………………」
白々しく語るお父さんに、うちの父親は苦虫を噛み潰したような表情を見せる。
「ははは、そもそも虐待事案なのに、そんな約束なんて無効に決まっているじゃないですか。とにかく、先程も申し上げたように、告発するならどうぞなさってください」
「クッ……!」
はは……父さん、悔しそうにしているな。
俺をダシに使った罰だよ。
「あなたからこの話題に触れていただいたのでちょうど良かったですね。それで、そのこともあってこちらの紅林弁護士とも相談し、塔也くんの親権について、家庭裁判所に申し立てることにしました」
「はあ!? な、何を勝手な!」
またうちの父親が驚いているが……『何を勝手な』、だって……?
「……フザケルナ」
俺はポツリ、と呟く。
「フザケルナ! 今まで好き勝手に俺のこと無能扱いして、無視して、いいように利用していたのはソッチだろう! 何が『何を勝手な』だ! アンタなんか親じゃない! 家族じゃない! 俺の……俺の“家族”は、しゆのさんと、お父さんと、お母さんの三人……だけだ……!」
俺は涙を流しながら、今まで溜まっていたものの全てをぶちまけた。
ずっと認めたくなくて、言いたくなくて、でも、言わずにはいられなくて。
すると。
「塔也……!」
しゆのさんが、俺を優しく抱き締める。
俺の心を癒すように。
俺の心を包み込むように。
「……まあ、ご覧の通り答えは出ています。これから僕達は家庭裁判所に親権制限の申立てをし、塔也くんの未成年後見人にこの僕と妻がなる予定です」
「…………………………」
うちの父親は悔しそうに俯く。
本当に悔しいのは……俺のほうなのに。
「そして、本題のうちの大切な娘へのストーカー行為についてですが、こちらも示談に応じるつもりは全くありません。警察に提出した被害届の取り下げはしませんし、娘が受けた精神的苦痛についても、損害賠償を請求させていただきます」
「そ、そんな……僕はストーカーなんてしてないのに……!」
「うちの娘を追い込んでおきながら、ふざけないでいただきたい。甘えたことを言ってないで、君は自分のした過ちを受け入れるんだ」
「うう……僕は……僕は……!」
お父さんにピシャリと言い放たれ、和也は顔を歪めながら頭を抱えた。
「そして、これまであなた方から受けた無礼の数々……到底人として信用できるようなものじゃない。これまであなたの会社とは色々とお付き合いさせていただいたが、今後は全て引上げさせていただく」
「…………………………え?」
お父さんの言葉に、うちの父親が呆けた声を漏らした。
「おや? 気づいてないのですか? うちの『サクマシステムズ』は、おたくの会社と懇意にさせていただいていたのに。まあ、それも今日までですが」
「えええええ!?」
うちの父親が今日一番の驚きの声を上げた。
「だ、だって名刺には会社名も何も……!」
「当たり前じゃないですか。今日はしゆのと塔也くんの父としてお会いしているんです。それと会社の肩書は関係ありませんから」
「あ……あああ……」
そう冷たく言い放たれ、父さんはガックリとうなだれた。
俺にしていたように、相手をちゃんと見ようとしないからこうなるんだ。
「さて……もうこれ以上の話し合いは無駄だと思いますし……紅林さん、後は……」
「ええ、相手の皆さんにはお引き取りいただいて、塔也くんの親権制限の申立ての手続きをしちゃいましょう」
「ま、待って……!」
「どうぞ、お引き取りを」
紅林さんは向こうの弁護士さんと二言三言話した後、父さん達を事務所から追い出した。
「ふう……」
お父さんが弛緩した表情で深く息を吐いた。
「お父さん……ありがとう、ございました……」
「ははは、なあに……子どもを護るのが、親の役目、だよ」
そう言って、お父さんはニコリ、と微笑んだ。
「はい……っ!」
俺は涙を零しながら頷いた。
この誇らしいお父さんの姿を、俺は永遠に心に焼きつけよう。
俺にいつか……いつか自分に子どもが生まれる、その日のために。
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次回は明日の夜更新!
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