決戦①
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「失礼します」
「……失礼する」
「…………………………」
向こうの弁護士に続き、父さんと和也がやって来た。
「「…………………………」」
俺としゆのさんは、そんな父親を無言で見つめていると。
「っ!?」
「……フン」
父さんは俺達を一瞥し、鼻を鳴らして椅子に腰かけた。
まるで、俺としゆのさんを馬鹿にするかのように。
「さあ……それじゃ時間ももったいないですので、早速話に入りましょう」
弁護士の紅林さんが、にこやかな表情を浮かべて司会進行を始めた。
まず、お互いの自己紹介から始める。
「しゆのの父の佐久間です」
「……和也の父の池田です」
笑顔のお父さんに対し、うちの父親は仏頂面で名刺交換をする。
だけど……お父さん、なんでうちの父親の名刺を見て、ニヤッと笑ったんだろう……。
で、俺達というと、やはり被害者と加害者の立場であること、お互い未成年で心理的ストレスを考慮し、挨拶はしないこととなった。
次に、今回のストーカー行為についての経緯と現状確認について、紅林さんが資料を交えて説明する。
内容は、当然和也がしたつきまといやストーキングなどの問題行動の数々について。
理路整然と説明されると、聞いている俺達は思わずゾッとする。
それは、しゆのさんはこんな被害を受けていたんだと、再認識することとなった。
そして。
「では、いよいよ本題ですが……まず、佐久間さん側から示談に当たっての……「その前に」」
紅林さんの発言をうちの父親が突然遮った。
「今回の件ですが……少し事情が違うのでは?」
「と、言いますと……?」
うちの父親の言葉の意味が分からず、お父さんが尋ねる。
とはいえ、お父さんは笑顔を崩さないままだが。
「そもそも、うちの愚息……つまり、そこにいる長男の塔也が、おたくの娘さんに誑かされて、同棲している……そうですな?」
っ!? 言うに事欠いて、誰が誑かされてるだって!?
俺は父親のあんまりな言葉に、拳を強く握って肩を震わせる。
でも……そんな俺の拳に、しゆのさんがそっと手を添えた。
「(あは、塔也も落ち着くし)」
小声でそうささやくと、しゆのさんがニコリ、と微笑んだ。
……しゆのさんが冷静なのに、俺が先に血が昇ってちゃダメだろ……。
俺は深く息を吐くと、落ち着くように自分に言い聞かせた。
「ははは、誑かしているかどうかは知りませんが、確かに同棲していますね」
「ほう……それを認めると?」
「ええ、それが何か?」
お父さんの言葉に、まるで鬼の首を取ったかのようにうちの父親は口の端を吊り上げた。
一体何を企んでるんだ……?
「そうですか……やはり、そもそも話になりませんな」
父親は肩を竦め、自分達が連れて来た弁護士に向かって苦笑した。
「分かるように説明していただけますか?」
こんなあからさまに人を馬鹿にするような態度を見せるうちの父親に対し、お父さんはなおも笑顔を崩さない。
「なに、簡単な話です。つまりおたくの娘さんは、そこにいる愚息を誘拐した、ってことですよ」
「はあ!?」
とうとう我慢できず、俺は思わず声を上げた。
だってそうだろ! なんでしゆのさんが俺を誘拐したことになるんだよ!?
「いや……親である私は、次男の和也が同じ学校を通うようになったのを機に、一緒に住むようにと妻……愚息の母親からそう伝えたのに、全く言うことを聞かなかった。これは、おたくの娘さんが誑かしたせいだ。そうですよね?」
「な、何が『そうですよね?』だ! そもそも母さんが俺の気持ちも全部無視して、あんなこと……!」
俺は立ち上がり、大声で叫ぶ。
だが。
「黙れ。部外者のお前が喋るな」
あろうことか、うちの父親は俺を引き合いに出したにもかかわらず、部外者扱いした!?
「ふ……ふざけ「まあまあ塔也くん、まずは向こうの主張を聞こう、ね?」」
なおも叫ぼうとした俺を、お父さんが笑顔で窘めた。
い、一体お父さんは何を考えてるんだよ……!
俺はギリ、と唇を噛み締め、射殺すような視線を父さんに向ける。
だが、父さんはそんな俺の視線を、鼻で笑った
「そして、うちの和也が兄である愚息を心配して、わざわざ何度も足を運んだ。勿論その中には、おたくの娘さんを説得しようと、アルバイト先に行ったものもあるかもしれませんが」
うちの父親は、勝ち誇ったように、まるで見下すようにお父さんをねめつける。
こんなの……こんなの……!
「あは……塔也、大丈夫だし。うちのお父さんは、塔也の次にカッコイイんだし!」
「し、しゆのさん……?」
自信に満ちた表情で俺に語りかけるしゆのさんは、すごく綺麗で、カッコ良くて……。
「ははは、まあ塔也くんの次っていうのは仕方ないか」
お父さんが頭を掻きながら苦笑する。
そして、そんなお父さんやしゆのさんの態度が気に入らないのか、うちの父親は二人を睨みつけた。
「……そんな態度を取られるのなら、仕方ない。不本意ではありますが、警察に誘拐罪として告発するしかないですな」
「そんな……!」
な、なんでしゆのさんが誘拐犯みたいなことになるんだよ!
そんなのおかしいだろ!
俺は思わずお父さんとしゆのさんを見る。
すると。
「ええ、構いませんよ? どうぞ告発なさってください。まあ……それが受理されるかどうかは分かりませんが、ね」
そう言うと、お父さんがニヤリ、と笑った。
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次回は明日の夜更新!
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