糾弾
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「ごめん後藤くん、あと十分くらいで戻るよ」
しゆのさんを喫茶店に送り届けた俺は、すぐに後藤くんに電話を掛けた。
俺が彼女を送り届けている間、あらかじめ彼には和也の監視を頼んでいたのだ。
『チッス、今んとこ弟クンは、教室でクラスの女の子と喋ってるなあ』
「そう……じゃあ俺が戻るまで、引き続き監視を頼む」
『リョーカイ!』
通話終了のボタンをタップし、俺はスマホをポケットに入れる。
さて……急いで戻らないとな。
俺は足早に学校へと向かい、結局十分とかからないうちにたどり着いた。
そして、俺は校門をくぐると。
「……(ペコリ)」
すれ違いざま、黒髪ショートボフの女子生徒に軽く会釈された。
俺も会釈して返すと、そのまま振り向きもせずに校舎の中へ入る。
恐らく、後藤くんはまだ教室の前で張り込んでいる……と思っていたんだが。
「(お! 池田クン、コッチコッチ!)」
何故か下駄箱の傍にいた後藤くんが、手招きしながら俺を呼んでいたので、急いで彼の元に駈け寄る。
「後藤くん、ゴメン待たせた」
「イヤイヤ、むしろタイミングバッチリだったし。ホラ」
下駄箱の陰に隠れながら、後藤くんが指を差す。
その先には……靴に履き替えている和也の姿があった。
「……捕まえるなら今、かな」
「だな」
俺達はゆっくりと近づき、和也の後ろに立つと。
「ん? ……って、兄さん!?」
和也の肩をポン、と叩くと、面倒くさそうに振り返った和也が俺達を見て目を見開く。
「和也……話がある」
「ま、チョット付き合えよ」
すると後藤くんは和也の肩に腕を回し、グイ、と引き寄せた。
要は逃げられないようにするために、だな。
不安そうな表情を浮かべる和也を無視し、俺と後藤くんは和也を間に挟むようにして校舎裏へと連れて行った。
「そ、それで一体何の用?」
さすがに雰囲気で察したのか、和也はそわそわしながら尋ねた。
「決まってる。しゆのさんのことだ」
「…………………………」
そう言うと、和也は唇を噛みながら悔しそうに俯いた。
「昨日……警察から実家に連絡が行ったりしてないか?」
「っ! あ、あれは兄さんの仕業か!」
俺の言葉に、和也が俺を睨みつける。
だけど、やっぱりもう連絡が入っていたか。警察、意外と対応が早いな。
「? 池田クン、警察って……?」
「ああ。実は昨日、しゆのさんが警察に被害届を出したんだ。内容はもちろん、ストーカーによる被害について」
「おうふ……」
簡単に事情を説明すると、後藤くんは呆れた表情で変な声を出した。
だが、一番呆れているのは兄である俺なんだが。
「それで……どうしてあんな真似をしたんだ? いくらオマエが俺を嫌いだからって、兄の彼女につきまとうっていうのは……」
俺は軽くかぶりを振りながら問い掛ける。
すると。
「……兄さんのくせに」
「ん?」
「兄さんのくせに! なんであんな綺麗な人が兄さんの彼女なんだよ! 僕に! 何一つ勝てない兄さんが!」
突然そう叫ぶと、和也が俺に憎悪の視線を向ける。
「大体兄さんのくせに生意気なんだよ! 兄さんは僕より下じゃなきゃいけないんだ! 兄さんが僕より幸せにしてちゃダメだろ! ゴミクズのくせに!」
和也は俺に向け、あらんかぎりの罵倒を繰り返す。
「はあ……まあ、俺のことを下に見てるのはずっと前から分かっていることだ、それはいい。それより……なんでオマエは、俺じゃなくしゆのさんをつきまとったんだ?」
「そ、それは……」
すると、和也は急に視線をずらして口ごもった。
「ハハ! 池田クン、そんなの決まってんじゃん! コイツ、萩月チャンに惚れたんだよ!」
「そうなのか?」
俺は思わず和也に尋ねる。
「フ、フン! そもそも兄さんのようなカスなんかじゃ、しゆのさんが可哀想だろ! だから、誰よりも相応しいこの僕が、兄さんから救い出して、彼女を隣に置いてあげようと思っただけだ!」
オイオイ……言うに事欠いてコイツは……!
「全く……しゆのさんもしゆのさんだね。わざわざ兄さんから守ってあげようと、こんなに見守ってた僕をストーカー扱いして警察に被害届を出すなんて……幻滅だよ」
和也は、やれやれといった表情で肩を竦める。
コイツは……コイツは……!
「まあ、所詮兄さんの彼女だから、顔は良くても少し頭が足りないのかも……ヒッ!?」
気がつくと、俺は和也の胸倉をつかんでいた。
「黙れ! オマエがやったことは、しゆのさんへのストーキングなんだよ! オマエのせいで、しゆのさんが悲しんだ! 苦しんだ! 俺は、絶対にオマエを許さない!」
「ヒイイ!?」
俺は和也に向かって思い切り叫ぶと、和也は怯えた表情を見せた。
こんな自分勝手な理由で俺のしゆのさんを怖がらせやがって……!
「……マアマア池田クン、ちょっと落ち着きなよ。とにかく、こうなったらオマエがしたこと、コレに向かって洗いざらい全部吐いちまえよ。じゃねーと、俺もこれ以上池田クン止める自信ねーわ」
後藤くんが俺を窘めると、嘲笑を浮かべながらスマホを取り出した。
「は、吐くって何を……?」
「え? 分かんねーの? オマエがやったストーキング行為の数々だよ」
「ぼ、僕はそんなことやって……「やったよなあ?」……ヒッ! は、はい……」
後藤くんに凄まれ、和也は怯えた表情で頷く。
さあ……このクズな弟が二度とこんな真似をしないよう、キッチリ話をつけようか。
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次回は今日の夜更新!
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