ギャルのおねだり
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「ふう……」
しゆのさんのご両親との楽しかった夕食も終わり、俺達は部屋に帰ってきた。
で、俺はといえば、テーブルの前に座って一息吐いているところだ。
「あは、塔也、お茶だし」
「あ、ありがとう」
しゆのさんがお茶を淹れて運んできてくれた。
俺はお茶を受け取ると、口に含む。
うん、ホッとする。
「後は大家さんとの話次第だけど、このままこの部屋で一緒に暮らせそうだね」
「あは……うん……」
夕食の後、今後についてご両親と具体的に話を詰めた。
まず、家賃については全額ご両親が負担してくれることになった。
俺も少しだけでも払うと言ったんだが、二人は頑として聞き入れてくれなかったのだ。
まあ、『その代わり、生活費は五万円だから、足らない分は二人で頑張りなさい』と言われてしまった。
でも……そもそも、元々の仕送り自体が三万円しかなかったんだから、むしろアップしてしまった……。
そのことを聞いた二人は、『そんな! たったそれだけのお金だけで大切な息子を生活させるだなんて!』と、かなり怒っていたけど。
「まあ、浮くことが確実な二万円は、バッチリ貯金するとしてー……」
などと、しゆのさんが指を折りながら今後の生活設計についてシミュレーションしてくれている。
いや、本当にしゆのさんって、いい奥さんになると思う。
願わくば、その相手は俺で……って、何言ってるんだよ。
そうなるように、ちゃんと俺が頑張るんだろ!
俺は気合いを入れるためにパシン、と両頬を叩く。
「え、と、塔也、どうしたの!?」
あ、いきなり自分の頬を叩いたもんだから、しゆのさんを驚かせてしまった……。
「あ、ああいや、これからのことを考えて、ちょっと気合いを入れたんだ」
「そ、そう? ならいいけど……」
少し怪訝な表情を浮かべながらも、とりあえずは納得してくれた。
「それより、もうこんな時間だからお風呂に入らないと」
「あは、うん……じゃ、入って来るし」
そう言って、しゆのさんは立ち上がると脱衣所へと向かう。
そして、カーテンを閉めたかと思うと、隙間からこちらを覗いていた。
「え、ええと……しゆのさん?」
「あは……覗いてもいいし?」
「なあああああああ!?」
思わず叫ぶ俺をよそに、しゆのさんはニシシ、と笑いながらお風呂場へと入って行った。
な、なんてことを……。
◇
「ちぇー、せっかくだから覗いたらよかったのに……」
布団の中で、しゆのさんが唇を尖らせながらそんなことを言った。
イヤイヤ、そんな真似したら、俺の理性がもたないんだが……。
「ホントにもう……と、塔也は奥手なんだし……」
ブーブー文句を言うしゆのさんだけど、俺が実際にそんなことしたら、絶対恥ずかしがって何にもできないくせに……。
「し、しょうがないから、その……おやすみのキスしてくれたら……勘弁するし……」
そう言うと、しゆのさんは恥ずかしそうに上目遣いで俺を見る。
こ、これは、彼氏としてご要望に応えるしかないだろう。うん。
俺はしゆのさんにそっと近づき、その肩を抱き寄せると。
「ん……ちゅ……」
その柔らかい唇に、そっとキスをした。
だけど……しゆのさんからシャンプーのいい香りが……。
う、うう……理性が……!
「っ! ……ちゅ……くちゅ……」
俺は、つい我慢できず、しゆのさんの唇に舌を差し入れてしまった。
驚くしゆのさんだけど、彼女も俺の舌に自分の舌を絡めてきてくれた。
「れろ……ちゅぷ……ちゅ……」
俺はしばらくしゆのさんの唇と舌を堪能すると。
「じゅぷ……ちゅく……ぷは……」
俺は、そっとしゆのさんの唇から自分の口を離した。
「あ……」
しゆのさんはトロンとした表情を浮かべながら、少し名残惜しそうにする。
「そ、そろそろ……寝よう、か……」
「う、うん……」
うん、これ以上は歯止めがきかなくなってしまう……というか、むしろここで引き下がった俺を褒めたたえて欲しい。
そう言い聞かせ、俺は悶々としながら布団に潜った。
すると。
「ね……塔也……手、つないでもいい?」
はにかみながら、そんな可愛いお願いをするしゆのさん。
もちろん、俺の返事は。
「ああ……」
俺はしゆのさんの柔らかい手を握り、微笑み返した。
「あは……塔也の手、あったかい」
「しゆのさんの手も、柔らかくて安心する」
色んな事があったせいか、俺達は手をつないだまま、そのまま深い眠りについた。
◇
——ピピピ。
「んう……」
スマホのアラームに起こされ、目をこすりながらスマホを探してアラームを止めた。
「あは、おはよう塔也!」
するとエプロン姿のしゆのさんが、キッチンから笑顔でおはようの挨拶をしてくれた。
「ああ、おはよう」
俺は布団から出て挨拶を返すと、しゆのさんの傍へと向かった。
「お、今日はパンなんだ」
「あは、そうだし。ホラ、春休みのデートで塔也が喜んでくれた、あのハムサンドを作ろうかなって」
「おお!」
あの時のことを思い出し、俺は思わず唾を飲み込む。
あれ、超美味しかったんだよなあ……。
「ということで、塔也は布団をたたんで準備……ん……」
気づけば、俺はしゆのさんの唇にキスしていた。
だって、朝から俺のために頑張ってくれているしゆのさんを見たら、その……ねえ?
「ん……ちゅ……ホラホラ、早く早く!」
唇を離すと、照れ隠しなのかしゆのさんが俺をせかす。
はあ……やっぱりしゆのさんは、最高だ。
◇
朝食と支度を終え、部屋を出た俺達は、いつものように登校する。
だけど。
「今日は後藤くんと古賀さん、いないね……」
「あー……昨日の夜、葵からRINE入ってたし。インターハイに向けての朝練なんだって」
「そっかー……」
まあ、もうすぐ地区予選も近いみたいだし、大詰めだろうからなあ。
「ねえ、しゆのさん、古賀さんの大会に俺達も応援に行こうよ」
「あは! そうだね! 葵も絶対喜ぶし!」
うん、その時は俺達と後藤くんの三人で、古賀さんを精一杯応援しよう。
こうやって未来が次々と、しゆのさんとのことで埋まっていく……俺は、それがたまらなく幸せだ。
「あは……もう、塔也はまた幸せそうな顔してるし……」
「俺はしゆのさんがいれば、いつだって幸せだから」
「あは、知ってる……」
そうやって、お互い幸せを噛み締めながら校門をくぐろうとすると。
「あ、やっと来た。兄さん!」
……弟の和也が、手を振りながら俺達の傍に駆け寄ってきた。
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