ギャルと一緒
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春休みも終わり、今日からいよいよ俺達も高校三年になる。
高校に入ってから……いや、それ以前もそうか。とにかく碌なことがなかった俺だが、どうやら神様って奴は意外といるもんだと思えるようになってきた。
だって。
「あは! 塔也と同じクラスになれたらいいなー!」
朝の通学路、今日も俺の隣には笑顔のしゆのさんがいる。
それだけで、俺は最高の気分だ。
「はは、そうだな。俺もしゆのさんと同じクラス……いや、願わくば隣の席がいいなあ……」
「あ、あは……そうだね……」
しゆのさんは俺の言葉で頬を染めながら、嬉しそうにはにかんだ。
もう、それだけで俺は幸せ一杯です。
「しーちゃあああああああん!」
お、今日もいつものように古賀さんが突撃してきたぞ。
「ダキッ!」
「『ダキッ!』じゃないし!」
ということで、しゆのさんは例のごとく古賀さんに抱きつかれ、鬱陶しそうに引き剥がそうとしている。
「ハハ、はよー!」
「おはよう、後藤くん」
古賀さんから少し遅れてやってきた後藤くんと、俺は拳をコツン、と合わせる。
「それより、せっかくだしこの四人全員、同じクラスだといいな」
「ああ、ちょうどその話をしゆのさんともしていたところだよ」
「まあ、萩月チャン的には、池田クンと同じクラスってのは外せないところだろうしなー」
などと暢気に会話しながら、四人で学校に向かった。
学校に着き、俺達は下駄箱の前に張り出されているクラス分けの表から名前を探すと……。
「あは! やったやった! 塔也と同じクラス!」
「え!? ……本当だ! あった!」
先に見つけたしゆのさんの指差す場所を見ると、確かに俺としゆのさんの名前があった。
高校三年は最高のスタートを切れたぞ!
「はは! これから一年、よろしくお願いします!」
「あは! こちらこそ!」
俺としゆのさんが手をつなぎながらはしゃいでいると。
「ハハ、おーい、俺達も一緒だったぞ!」
「後藤くん、本当か!」
まさか、この四人が同じクラスだなんてなあ……!
「わーい! しーちゃんと一緒だ!」
「わ、コラ! くっつくなし!」
はは、しゆのさん、早速古賀さんに抱きつかれてるし。
「さーて……んじゃ、俺達も自分達のクラスに行こうぜ」
「ああ」
俺達四人は嬉しそうに新しい教室へと向かった。
◇
「んふふー♪」
しゆのさんが俺の隣の席で嬉しそうに微笑む。
それもそうだろう。最初の席替えで、俺達は見事に隣同士になれたんだから。
というか、ここまで上手く行き過ぎると、この後とんでもない不幸が待ってるんじゃないかと、少しだけ警戒してしまうな……。
「ねえねえ塔也、アタシと席が隣同士になれて嬉しい?」
「当然!」
「あは! アタシも最高に嬉しい!」
はあ……少なくとも、二学期まではこの席のままだから、これからは毎日しゆのさんと一緒に授業を受けられるな。最高すぎる。
それに。
「同じクラスだから、夏休み前にある修学旅行も、同じ班になれるな」
「あは! ホントだ!」
うん、高校最大のイベントを、しゆのさんと一緒に楽しめるなんて、最高だ。
というか俺、今朝から最高、最高って連呼してる気がする。
いや、しゆのさんと知り合ってからずっとか。
ただ……どうせ修学旅行の費用なんて、うちの親が出す筈ないから、貯金を切り崩さないとな……。
うーん……バイト、増やすか……。
◇
——キーンコーン。
一日の授業終了のチャイムが鳴り、俺達は帰る準備を始める。
今日は始業式のため、昼までで授業は終わりなのだ。
「あ、塔也。そういえばお母さんが、『今日はうちで晩ご飯食べに来て!』って言ってたし」
「え? そうなの?」
「うん」
うん、できればその情報は早く欲しかった。
そうしたら、手土産とかあらかじめ準備しておいたのに……って、バイト帰りに買いに行くか……。
「あ、それと、『塔也くんのことだから、色々と気を遣いそうだから、手ぶらで来るように』って釘刺されたし」
「あ、はい」
くそう、そこまで抜かりなしか。
「あは! お母さん、すごく張り切ってたから、多分お寿司かもだし!」
「そ、そう……」
いや、歓待してくれるのはありがたいんだけど、逆に緊張してしまうんだが……。
「まあとにかく、早く部屋に帰ってお昼ご飯食べないとだし! 塔也もバイトの時間あるでしょ?」
「ああ、そうだな。でも、それでも昼食べても一時間くらいは余裕がある」
「ホント? だ、だったら、一緒にゆっくりしよっか……」
もちろん、その一時間は全力でしゆのさんとの二人っきりの時間に費やすつもりだとも。
ということで、俺達は教室を出て下駄箱に向かう。
その時。
「やあ兄さん、久しぶり!」
俺はその声に、思わず勢いよく振り返る。
「か、和也……!」
そこには……何故かうちの学校の制服を着た俺の弟、“池田和也”が笑顔で立っていた。
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次回は今日の夜更新!
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