デートの約束
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「萩月さん、どうだった?」
学年末テストも全て無事終わり、教室まで迎えに来てくれた萩月さんに尋ねる。
「んふふー! 池っちの教え方が上手だから、バッチリだし!」
「そうか、良かった……」
萩月さんが笑顔でピースサインするのを見て、俺はホッと胸を撫で下ろした。
「あは、ホントに池っちは心配性だし」
「いやいや、そりゃ心配もするさ。だって、もうすぐ春休みなのに、ここで赤点なんて取って補習にでもなったら、ね……」
「うわー……考えただけでゾッとするし……」
そう言うと、萩月さんは肩を竦めた。
「はは、とりあえず無事に終わったんだし、そろそろバイトに……」
って、萩月さんと話している最中で。
「しーちゃああああああああああん!」
……うん、古賀さんが全速力で走ってきた。
「あ、コラ! 離れろし!」
「ヤダ!」
古賀さんは萩月さんに全力で抱きつき、意地でも離れようとしない。
というか、俺達はこれからバイトなんだが……。
「ハハ、悪いね池田クン」
でた、口では謝るけど一切悪びれていない後藤くんが。
「だけど、うちの葵と萩月チャンがああやってじゃれてるの見ると、小さな妹を全力であやすお姉ちゃんって感じだよな」
「……一応聞くけど、どっちがお姉ちゃん?」
「え? そりゃうちの葵だけど?」
さも当然とばかりにのたまう後藤くん。
俺はチラリ、と二人の様子を窺うと。
「早く! アンタは練習行けし!」
「ヤダ! しーちゃんとまだ約束してないもん!」
背の低い萩月さんに、身長一七〇センチの古賀さんが覆い被さるように抱きつく様子は、なんとも形容しがたいが……少なくとも、お姉ちゃんは萩月さんだろ。
それより。
「今、古賀さん“約束”って言ってなかった?」
「ん? おお、せっかく春休みだし、俺達とダブルデートしようかって誘おうと思ってさ」
「「ダ、ダブルデート!?」」
俺と萩月さんが声を揃えて叫んだ。
い、いや、ダブルデートって、そもそも俺達、まだデートもしたことないんだが!?
「え? 二人共付き合ったんじゃないの?」
キョトンとした表情で尋ねる後藤くんに、俺と萩月さんはお互い顔を見合わせる。
もちろん、俺達は正式に付き合うことにはなったが、その……。
「あ、あは……そ、そりゃアタシと池っちは恋人同士だけど……」
「ま、まあ……うん……」
うう、こうやって誰かに面と向かって尋ねられると、恥ずかしい……。
「もおおおおお! 私は何を見せられてるワケ!?」
「ハハハハハ! 初々しいねえ!」
「ウ、ウッサイ!」
頬を膨らませる古賀さんと、腹を抱えて笑う後藤くんに、萩月さんが猛抗議する。
「ま、そういうことで、ダブルデートは春休み最初の日曜日な。時間と場所はまたRINEするから」
「うん……って、その日ピンポイントなの!?」
「ああ、葵の練習の関係で、その日しか空いてないんだよ」
ああ……古賀さんにとっては、次のインターハイが最後の大会だもんなあ……。
そうすると、春休みの練習が重要になってくるし、仕方ない、か。
「一応、バイト先にその日休みが取れないか確認はしてみるが……」
「ア、アタシも、マスターに確認しないと……」
「あ、そっか。二人共バイトしてるもんな。んじゃ、休み取れたら教えてよ」
「ああ」
「うう……名残惜しいけど、しーちゃんバイバイ……」
「ハイハイ、早く練習行けし」
メソメソしながら何度も振り返る古賀さんに、萩月さんはシッシッと手で追い払う仕草をする。
だけど……ダブルデート、かあ……。
俺はチラリ、と萩月さんを見ると……あ、目が合った。
「あ、あは……何だか急な話だったし……」
「う、うん……」
とはいえ、一度もデートしないままいきなりダブルデートっていうのも……。
「な、なあ、萩月さん」
「な、何? 池っち」
「その……ダ、ダブルデートの前に、お、俺達……デート……しない?」
「っ!」
俺の提案に、萩月さんが息を飲んだ。
「う、うん! そ、そうだし! やっぱり、一度もデートしないでダブルデートなんておかしいし!」
「だ、だよな! お、俺もそう思う!」
俺と萩月さんは手を取り合いながら、強く頷き合う。
「そ、そしたら、春休みの最初の日曜日より前……お、俺、春休み初日は確か休みなんだけど、萩月さんは?」
「ア、アタシは……あは! だ、大丈夫だし!」
「ホ、ホントに! 良かった……じゃ、じゃあその日で!」
「あは! た、楽しみー!」
「お、俺もだよ……!」
思いがけず、俺と萩月さんの、初デートが決まった。
お、俺、デート用の服とか買わないと……!
「あ、そ、それじゃ、そろそろバイトに行こうか」
「そ、そうだし! もうこんな時間だし!」
俺達は下駄箱で慌てて靴に履き替えると、急いでバイトに向かった。
「……あは、デートの日のバイトは、瑞希に全部やらせるし(ボソッ)」
……聞かなかったことにしよう。
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