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「あは! 池っち、今日は早いじゃん!」
あの部屋で萩月さんと結ばれ、喜び勇んでいつも以上に張り切ってバイトに精を出した俺は、お陰でいつもより早く今日の分の仕事が終わったのだ。
で、支店長から今日は早上がりしてもいいとありがたいお言葉をいただいたので、俺は急いで喫茶店に来た訳で。
「うん。今日の分の仕事、すぐ終わったから」
「んふふー! そっかそっか、そんなにアタシに早く逢いたかったか」
そんなことを言いながら、萩月さんが俺の顔を下から覗き込む。
「ああ……今すぐにでも、逢いたかった」
「はう!」
俺の答えに、萩月さんが顔を真っ赤にして仰け反った。
「そ、その……萩月さんは、違う……のか……?」
俺はあえてそんな尋ね方をしてみる。
というか、いつもの意趣返しだったりする。
「あうう……そ、そんな訳ないし……アタシだって……その……池っちに逢いたかった、し……」
そう言うと、萩月さんが俯きながら、立派な胸の前で指をコチョコチョさせている。
い、意趣返しのつもりが、まさかの俺にクリティカルヒットするなんて……。
お、思わず抱き締めそうになった……。
「くうううう……二人共、何だか雰囲気違い過ぎない!?」
半ベソ掻きながら、何故か瑞希さんが抗議している。
いや、そんなことは……ある、かな……?
「あ、あは……まあ、ねえ……」
そう言うと、萩月さんがチラリ、とこちらを見る。
俺も、そんな萩月さんに返事をするかのように頷いた。
「あああああ! もおおおお! コレ、絶対付き合ってるじゃん!」
瑞希さんはカウンターをバンバンと叩きながら、悔しそうに唇を噛む。
そして、キッ、と萩月さんに鋭い視線を向けたかと思うと。
「ねえ萩月さん! 私にも……私にも誰か紹介して!」
「ちょ、コッチ来んなし!」
涙を流しながら萩月さんに縋りつく瑞希さん。
うん、自分で何とかしてください。
「はあ……我が娘ながら、なんて残念なんだ……」
そう言ってかぶりを振るマスター……いや、もう少し娘に優しくしてあげても……。
「はは……とにかく、萩月さんがバイト終わるまで待たせてもらってもいいかな?」
「! あは! モチロン! だ、だったらコッチだし!」
萩月さんはトレイを持って嬉しそうに俺の腕を引っ張り、窓際の席へと案内してくれた。
もちろんこの席は、萩月さんのことを教えてもらった、あの時の席だ。
「それじゃ、レモンティー持ってくるね!」
「あ、う、うん」
萩月さんはスキップしそうな程ご機嫌になりながらカウンターの向こうに行った。
◇
「「マスター、お疲れ様でした!」」
「はは、お疲れ様」
今日の仕事が終わった萩月さんと一緒に挨拶をすると、俺達は喫茶店を出た。
……涙を流しながら嫉妬深く睨みつけていた瑞希さんの視線は無視しながら。
「あは! それじゃ、スーパーで買い物しよ!」
「あ、うん……そ、それで、少し聞きたいことがあるんだけど……」
「? 何?」
キョトンとしながら尋ねる萩月さんに向き直り、俺は意を決すると。
「その……萩月さんは、これからは自分の家、で……生活する、んだよね……?」
そう……尋ねた。
いや、分かっている。
せっかく絆を取り戻したのに、俺と一緒に暮らす必要もないし。
それに、俺ももう今じゃ萩月さんと、その……こ、恋人同士になって、繋がりができたから、昨日の夜みたいな寂しさも苦しさもない。
そ、それでも……やっぱり萩月さんと一緒にいたい。
そんなの、俺のワガママだってことは分かってる。
でも……。
「あー……そのことなんだけど、ねー……」
萩月さんは気まずそうに、指で頬を掻きながら視線を逸らした。
「は、はは……そ、そうだよな! せっかくご両親と仲直りしたんだ! 両親と一緒に「ち、違うし!」……って、へ?」
萩月さんに全力で否定され、思わずマヌケな声を出してしまった。
「あ、そ、そういえば言ってなかったし……」
「な、何を?」
「その……このまま池っちとあの部屋で、い、一緒に住みたいし!」
そう言うと、萩月さんが深々と頭を下げた。
「あ……ど、どうして……?」
萩月さんがそう言ってくれたのに、俺は聞き返してしまう。
だって、どう考えてもここはご両親と一緒に住むことになる筈なのに……。
「あ、あは……そりゃもちろん、一番は池っちとずっと一緒にいたいからだけど……お、お母さんとお父さんからも、“頑張れ”って応援してもらってるし……」
え、ええと……お母さんもお父さんも、本当にそれでいいのかな……。
「……何? 池っちはアタシと一緒に暮らすの、ひょっとしてイヤなの?」
そう言いながらジト目で見る萩月さん。
そんなの……そんなの、決まってる!
「へ? ……って、キャッ!?」
「やったあああああ!」
俺は萩月さんを抱きかかえ、その場でクルクルと回った。
萩月さんと暮らせるのが嬉しくて!
萩月さんと、これからも一緒にいられるのが嬉しくて!
「あ、あはははは! 池っち! 池っち!」
「萩月さん!」
そして、萩月さんを地面に下ろすと、萩月さんはもじもじしながら上目遣いで。
「だ、だから、その……これからも、“ずっと”よろしくね!」
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次回は明日の朝更新!
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