表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボッチな俺の理解者は、神待ちギャルのアイツだけ  作者: サンボン
第一章 噂のアイツと神待ちギャル
5/96

ギャルと同棲決定

ご覧いただき、ありがとうございます!

 三十分程泣き続けただろうか……。

 俺は、これまでの想いの全てを、萩月さんの胸の中で吐き出した。


 そして、萩月さんはそんな俺を、ただ抱き締め続けてくれた。


「……萩月さん、すまない……もう、大丈夫だから……」


 落ち着きを取り戻した俺は、萩月さんに声を掛ける。


「ホント? 池っち、我慢してない?」


 抱き締める腕を外し、萩月さんが俺の顔を覗き見る。

 うう……号泣した後だから、まじまじと見られると恥ずかしいな……。


「んー……うん、大丈夫みたいだね」


 そう言うと、彼女はニコリ、と微笑む。

 その吸い込まれそうな笑顔が眩しくて、恥ずかしさも相まって俺は直視できない。


「あはは、池っち照れてるー!」


 そんな俺の様子に、萩月さんがウリウリと肘で突きながら絡んできた。

 俺はといえば、彼女のそんな行為が嬉しくて、苦笑しながらもされるがままでいる。


「さーて、あんまり夜更かしは身体に悪いし、そろそろ寝よっか!」


 萩月さんがンーッ、と伸びをすると、そう宣言した。


 今日は色々あり過ぎてさすがに疲れたかな。

 なので、俺も彼女の提案に乗ることに……って、そ、そういえば!?


「は、萩月さんはこの布団を使ってくれ!」


 俺は既に敷いてある布団を指差す。


「え、ええ!? アタシが泊めてもらってるんだから、池っちが布団使いなよ!」


 萩月さんが両手をバタバタさせて遠慮する。


「い、いや、俺は床で全然問題ないから、萩月さんが!」

「ダメ! 池っちが布団使うの!」

「いいや! 萩月さんが!」

「池っちが!」


 そんな応酬を繰り返していると。


「ぷ」

「ぷぷ」

「あはははははははは!」


 俺達は大声で笑ってしまった。


「ま、まあまあ、やっぱり女の子に床で寝てもらう訳にはいかないから、今日のところは萩月さんが寝てくれないか?」

「えー、池っちがどうしてもって言うなら、アタシも渋々受け入れるけど?」


 俺の提案に、萩月さんが苦笑する。


「よし、じゃあそれで」


 俺は萩月さんにサムズアップすると、彼女も同じように返してくれた。


 俺は押し入れに放り込んであった毛布を取り出すけど……埃っぽい。

 ま、まあ今日は仕方ない、これで我慢しよう。


「そ、それじゃ、電気を消すから」

「うん」


 電気が消え、部屋の中が真っ暗になる。


 俺はごろん、と横になり、その埃っぽい毛布を被ると。


「萩月さん……ありがとう……」

「あは……泊めてもらってるのはアタシなのに、変なの」

「いいんだ……ありがとう……」

「ん……」


 俺は泣き疲れたこともあってか、すぐ眠りに落ちた。


 だけど、こんなに幸せな気持ちで眠ったのは、初めてだった。


 ◇


 翌朝、いつもの時間に目覚めた俺はむくり、と起き上がると、萩月さんのほうを見やった。


「すう、すう……」


 ウーン、気持ちよさそうに眠っているが、そろそろ起こさないと学校が……。


「萩月さん、萩月さん」


 俺が萩月さんに声を掛けると。


「んみゅ……ふあ……………………あ」


 可愛い声でもにょもにょと言ったかと思うと、パチ、とその目が開き、俺の顔をまじまじと見つめる。


「お、おはよう」


 彼女の綺麗な瞳に見つめられ、恥ずかしくなった俺は思わず俯きながら挨拶した。


「あああああ!? 池っち! アッチ向いて!」

「は、はいいい!」


 萩月さんに叫ばれ、俺は慌てて身体ごと後ろを向いた。

 くう、やっぱり女の子の寝起きの顔を見るのはいけなかったか。


「と、とりあえず、アタシがいいって言うまでコッチ向いちゃダメだからね!」

「わ、分かった!」


 俺は特に指示もされていないのに、何故か壁に向かいながら正座して萩月さんの許可を待った。


 しばらくして。


「も、もういいよ」


 やっとお許しが出たので俺は振り返ると……そこには、支度もメイクも終わって少し恥ずかしそうにしている萩月さんがいた。


「あ、そ、それじゃ、朝ご飯にする?」

「あ、う、うん……って、朝ご飯って何があるの?」

「い、一応、昨日買ったカップラーメンが……「はあ!?」」


 俺の提案はお気に召さなかったらしく、萩月さんがあり得ないといった表情で俺をジト目で睨んだ。


「ていうか、朝からカップラって、池っちの食生活ってどうなってんの!?」

「い、いや、その……カップラーメンなら簡単だし安いし……」


 そう答えると、萩月さんは呆れた表情を浮かべる。


「あのね! ちゃんと栄養考えなよ! それに、カップラなんかより自炊したほうが、はるかに安上がりなんだからね!」

「あ、あう……」


 うう、正論過ぎてぐうの音も出ない。


「じゃ、じゃあ朝ご飯はその、コ、コンビニでも寄って……」

「はあ……」


 溜息は吐かれたものの、反対もされていないので、い、いいよな……?


「だったら、早く行くから支度……って、ア、アタシは向こうを向いてるからその……は、早くしなよ……」

「あ、ああ……!」


 顔を赤くした萩月さんが向こうを向いていてくれている間に、俺は速攻で着替える。


「も、もう終わった」

「早っ!」


 まあ、男の支度なんてすぐだからな。

 取りたてて早いって訳じゃない。


「じゃあ行こ!」


 そう言うと、萩月さんはキャスター付きのスーツケースを……って。


「そ、それ持って学校に行くのか!?」

「え? そりゃだって、ねえ……」

「あ……」


 そういえば俺、勝手に萩月さんがこのまま俺の部屋に居続けるものだと思っていた。


 だけど。


「は、萩月さんは、今晩はどうするんだ?」

「あ……ま、まあ、とりあえず他の友達にでも当たってみよっかなって……」


 そう言うと、萩月さんは少しだけ寂しそうに俯いた。

 多分、そんな当てもないんだろう。


 だったら。


「て、提案なんだけど、その……萩月さんさえ良ければ、こ、このまま俺の部屋にいてくれても構わないんだが……」

「え! そ、そんな……池っちに悪いよ……」

「悪くない!」


 申し訳なさそうに断る萩月さんの言葉に、俺は勢いよく否定した。


 何故なら、俺はまだ、萩月さんに何も返せていないから。

 そして、俺を救ってくれた萩月さんの力になりたいから。


「萩月さん、お願いだからそれくらいは頼ってくれ。俺にはそれくらいしかできないから」

「あう……い、いいの……?」


 萩月さんが少し頬を赤くしながら、上目遣いでおずおずと尋ねる。


「もちろん!」


 俺は胸を張ってドン、と叩いた。


「あは……じゃ、じゃあ、お願いしよっかな……」

「よし! そうと決まれば、今日の放課後にでも必要な物を買い揃えないとな!」


 俺は拳を握って気合いを入れると。


「あはは! なんで池っちが張り切ってんの!」

「べ、別にいいだろ」


 俺は大笑いする萩月さんのツッコミに恥ずかしくなり、頭を掻いて誤魔化した。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回は今日の夜投稿予定!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] さり気無く同棲する流れに……!? 池っちやるやん!!笑
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ