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ボッチな俺の理解者は、神待ちギャルのアイツだけ  作者: サンボン
第二章 救われたアイツがギャルを救う
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世界一幸せな女の子

ご覧いただき、ありがとうございます!

■萩月しゆの視点


「俺は……萩月さんがいないとダメな人間だから」


 肉じゃがをがっついてむせた池っちが不意に放った一言。

 アタシは、その一言が脳裏に張りついて離れない。


 こんな嬉しい言葉があるだろうか。

 こんな幸せな言葉があるだろうか。


 池っちは、今もアタシを求めてくれている。

 アタシを受け入れてくれている。


 それだけで……アタシは全てを満たされる。


 ——ザアア……。


「池っち……好き……大好き……」


 シャワーを浴びながら、アタシは何度も同じ言葉を呟く。

 でも、これは池っちが悪い。

 池っちがあんなこと言うからだ。


 アタシはもう、池っちから離れられない。


 ◇


「あは! 上がったし!」


 アタシは池っちが好きって感情を悟られまいと、わざと明るく振舞って必死で誤魔化す。

 だって、アタシの想いを池っちが知っても、ただ彼の負担になるだけだし、それに、彼にはきっと迷惑だし……。


 でも。


「あ、ああ……うん……じゃあ俺も入ってくる」


 池っちは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしながら、脱衣所まで走って行った。

 どうやら池っちはアタシのお風呂上りの姿にドキドキしてるみたい。


 そしてアタシは、そんな池っちがたまらなく可愛くて、いつも同じような姿でいるんだけど。

 あは……アタシも大概卑怯だし……。


 ——ブブブ。


 あ、お母さんからの定期のRINEかな。


 アタシはスマホを手に取り、画面を見る。


『しゆの、あなたは騙されているの。お母さんが何とかしてあげるから、あなたが言う“世界一大好きな人”とかいう男に会わせなさい』


「はあ!?」


 言うに事欠いて、アタシが池っちに騙されてる、だって!?


「ふざけんなし!」


 アタシは思わず声を出して叫んだ。


 池っちのこと、何も知らないくせに!

 池っちは……池っちは、アンタのせいで失くした居場所をくれた、アンタの“代わり”だって言ったこんなアタシを包み込んでくれた、最高の……世界一の男の子なんだし!


 それを……!


 アタシは勢いよくメッセージを打ち込む。


『フザケルナ! 池っちのこと、そんな風に言うお母さんなんて大キライ! もう連絡してくんな!』


 アタシはメッセージを送ると、すかさずRINEを操作してお母さんのIDをブロックした。

 もちろん、スマホの電話も着信拒否に、メールだって拒否だ。


 そしてスマホを放り投げ、アタシは膝を抱えた。

 池っちにあんなこと言うお母さんが許せなくて。


 すると。


「ふう、気持ちよかった……って、どうしたの!?」


 お風呂から上がってきた池っちが、アタシを見るなり心配そうに駆け寄ってきた。


「あは……別にどうもしないし」


 アタシはさっきのお母さんとのやり取りを悟られないようにと、そっぽを向いてわざとそっけなくした。


 でも。


「嘘だ。ひょっとして……お母さんから何か?」


 ……なんで、そんな簡単に分かっちゃうの?

 なんで、池っちにはアタシのことが全部分かってしまうの?


 実のお母さんでも、アタシのこと分かってくれないのに。


「あは……大丈夫、大丈夫だし……」


 そう言うと、アタシは池っちの腕にしがみついた。

 まるで、縋るように。


「萩月さん……」


 そんなアタシの身体に、池っちは優しく手を添えてくれた。


「萩月さん……何があったのか、ちゃんと俺に話して欲しい。それとも、君にとって俺は、そんなに頼りない、かな……?」


 池っちが柔らかい瞳でアタシを見つめながら、そう言った。


 アタシは……。


「あは……お母さんが、アタシが『池っちに騙されてる』、『お母さんに会わせろ』ってメッセージ送ってきて……」

「…………………………」

「それでね? アタシ、お母さんに送り返してやったんだ。キライだって、もう連絡してくんな、って」


 そう言うと、アタシは池っちの瞳をみつめた。

 池っちの瞳は、変わらず優しさを湛えていた。


 でも。


「萩月さん……お母さんの言う通り、だと思う」

「っ!? 池っち!」


 池っちの口からは、とても信じられない言葉が返ってきた。


「違うし! 池っちはアタシを騙してなんかないし! 池っちは……池っちは……!」


 アタシは世界一の男の子と言いかけ、思わず口をつぐむ。


「いや、もちろん俺は萩月さんを騙すなんてことはしてないけど……それでも、お母さんからしたら、大切な一人娘の萩月さんを心配してるんだから、そう思うのも当然だってことだよ」

「…………………………だけど」

「……萩月さん、一度……お母さんと会ってみたら、どうかな?」


 どうして!? 池っちはどうしてそんなこと言うの!?


 やっぱり……アタシと一緒はイヤ……なの……?


「……その時は、俺も一緒に会うよ」

「……え?」


 池っち……?


「俺としては、やっぱり萩月さんはお母さんと仲直りすべきだと思う。だけど、もしお母さんが萩月さんの気持ちを分かってあげられないんだったら、その時は俺が萩月さんを護らないと……」

「…………………………」

「萩月さん、俺はね? 萩月さんに、俺みたいになって欲しくないんだ。だって、萩月さんもお母さんも、間違いなくお互いがお互いのこと、大切な筈なんだ……俺の家と違って」

「あ……」


 そうだった……池っちは、家族から見捨てられたんだ……。


「その上で、俺……君のお母さんにお願いしてみようと思う」

「お願い……?」

「うん……これからも、萩月さんと一緒にいていいですか? ……って」

「っ!」


 池っち……池っち!


「池っち!」

「わ!?」


 アタシは思わず池っちに勢いよく抱きついた。


 池っちの言葉が嬉しくて。

 池っちの想いが嬉しくて。


「アタシも、これからもずっと池っちと一緒にいたい! ずっと……ずっとずっと一緒に!」

「うん……だから一緒に、お母さんと話、しよ?」

「うん……うん……!」


 やっぱり、池っちだ!

 アタシには池っちだけだ!


 アタシは嬉し過ぎて、池っちの胸に何度も頬ずりする。


 アタシは……世界一幸せな女の子だ。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回は今日の夜更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] お、おぉ? 相手の親に会うって相当な勇気だぞ!? 偉いぞ池っち!!漢を見せろ〜(笑) にしても、騙されてるかぁ……お母さん拗らせちゃってるな〜
[一言] 母親からしたら17歳の女子高生を囲って養える経済的余裕のある相手と言えば間違いなくおっさんですからねぇ。 シンママでやってきた彼女からすれば、自身もそういう対象に見られた事も多々あるでしょう…
[一言] ママン間違えたね。 いきなりあなたは騙されてるの、とか会ってもいないのに悪人扱いは…。 せめて会わせてくれだけならよかったのにね。 なんか色々足りてない母親だなぁ。
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