ギャルをお部屋へご案内
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新連載三話目!
「……君が嫌じゃなければ、俺の部屋にその……と、泊まるか……?」
俺は断られることを前提で、念のためそんな提案をしてみる。
「は、はあああ!? ア、アンタの部屋あ!?」
まあ、まずはそんな反応するよな。
「……あくまで君次第だ。君も、俺の“噂”を知ってるだろうし……」
そう言うと、彼女がピシリ、と固まる。
はは……やっぱり……。
「……別に、無理する必要はない……じゃ、俺はここで……」
俺はいたたまれなくなり、席を立った。
そして、彼女の顔を見ないように俯いたまま、店を出ようとして。
「ま、待って!」
彼女に腕をつかまれ、それを阻止された。
「……アンタの部屋に、泊まってもいい」
「…………………………は?」
彼女、今何て言った?
「す、すまない……もう一度……」
「だから! アンタの部屋に泊まってやるって言ってんの!」
彼女は真っ赤な顔で顔半ばやけくそになりながら、もう一度そう告げた。
「な、なあ! 俺が怖くないのか!? 嫌じゃないのか!?」
「ちょっとちょっと!?」
俺はその言葉が信じられず、思わず彼女に詰め寄る。
だって……そんなこと、言ってもらえるなんて思わなかったから。
「と、とにかく落ち着いて!」
「あ、ああ……すまない……」
彼女に窘められ、俺はすぐに離れた。
「た、確かにさ、噂どおりだったら、その、アタシも危ないワケだけど……何というか……アンタは、噂とは違うと思うんだよね……」
気恥ずかしそうに頬を掻きながら苦笑する彼女。
俺は、そんな彼女を見て……。
「ま、まあそんな訳で、アンタの部屋に泊まっても……って、ど、どうしたの!?」
「え……あ……」
彼女の慌てた表情を見て気づいた。
俺……泣いてた……。
「あ、ああ、すまない……」
俺は必死で涙を拭うが、どうしても涙が止まらない。
拭いても拭いても、次から次へと溢れてくる。
だけど、それも仕方がない。
だって……俺は初めて、俺という存在を認めてもらえたような気がしたから。
もちろん、これは彼女がご飯を奢ってもらったことによる罪悪感や、部屋に泊まりたいことからの打算なのかもしれない。
でも……それでも……俺は、嬉しかったんだ……。
◇
「はあ……もう落ち着いた?」
「あ、ああ……」
しばらくして、ようやく俺は落ち着きを取り戻した。
で、そんな俺を、彼女は呆れた表情で眺めている。
でも……俺を見つめる瞳は柔らかかった。
「さーて! それじゃ、アタシをアンタの家まで案内してよ!」
「そ、そうだな」
腹も膨れてすっかり元気になった彼女に促され、俺達はワックを出て駅の改札に向かう。
おっと、彼女は金がないんだった。
俺は自動券売機で切符を買うと彼女に手渡す。
「ふうん……言われる前に買ってくれるなんて、気が利くじゃん」
「そ、そうか?」
「そうそう! 結構ポイント高いよ~!」
そう言うと、彼女がウリウリと肘で俺の腹を突いた。
な、なんだか急に距離が近づいたような気が……。
改札をくぐり、電車に乗って関町駅に着くと、そのまま俺の部屋に……っと。
「そういえば、歯ブラシとか必要な物はあるのか?」
「あ、うーん……ないかも」
あらかじめ聞いてよかった。
「じゃあ、コンビニで揃えるから寄り道するぞ」
「りょうかーい!」
ビシッと敬礼ポーズをする彼女を見て、不覚にも可愛いと思ってしまった。
というか、最初の時と本当に態度が……。
で、早速近所のコンビニに立ち寄ると。
「ねーねー! おやつ買ってもいいー?」
猫なで声で彼女がねだる。
「悪いが、俺にはおやつなんて贅沢品を買う余裕はない!」
「ちぇー!」
残念そうに口を尖らせる彼女は、仕方なく必要なアメニティグッズを一通りかごに入れた。
で、いざ会計になると……なんでシレッとグミが入っているんだ!?
「ああ、ちょっと待……いえ、何でもないです……」
店員さんがバーコードを読み取ってしまったのと、彼女に瞳をウルウルさせて見つめられ、仕方なく俺は会計から抜くことを諦めた。
「んふふー、“池っち”サンキュー!」
「何だ、その“池っち”というのは」
「えー、アンタの名前、“池田塔也”で合ってるよね?」
「そ、そうだが」
「だったら、“池っち”で問題ないじゃん」
「そ、そうか……」
俺は彼女にいきなり愛称を付けられ、つい恥ずかしくなってしまった。
そんな彼女はといえば、俺の様子が面白いのか、ニシシ、と笑っている。
そんな風なやり取りをしていると。
「ここの二階の端が俺の部屋だ」
「えー! 池っちって、一人暮らししてんの!?」
「? ああ、そうだが」
彼女はホヘー、と呟きながら、二階の俺の部屋を見上げている。
「いいなー! アタシも一人暮らししたかった!」
「そ、そうか……」
神待ちするくらいだったら、一人暮らしのほうがハードル低いとは思うんだが……。
ま、まあいいか。
階段を上がり、ドアのカギを開けて中に入ると、彼女は開口一番。
「な、何これ!? 超キタナイじゃん!」
「う……すまん……」
そうだった……今まで一人だったから気にしていなかったが、彼女が来るんなら先に片づけておくべきだった……。
「はあ……」
腰に手を当て、呆れた表情で溜息を吐く彼女。
「あ、す、すぐ片づけるから、君は空いている布団の上ででも……「もういいから! アタシが片づける!」」
見かねた彼女は、そんなことを高らかに宣言する。
「それと!」
「は、はい!?」
「池っち! アタシの名前は“萩月しゆの”! “君”じゃなくて、ちゃんと名前で呼ばないと、返事してやんないから!」
「は、はい……」
お、怒られてしまった……。
だ、だが、名前呼び……お、俺も愛称で呼んだほうがいいのだろうか……。
ん、無理だな。
などと頭を抱えている間にも、萩月さん(無難にこう呼ぶことにした)はテキパキと部屋の中を片づけていく。
「ああもう! 服が裏返しじゃん! 脱いだらちゃんと表向けなよ!」
「う、す、すまん」
「このゴミも! ゴミ袋に入れるまではいいけど、口を縛っとかないと意味ないでしょーが!」
「ご、ごもっとも……」
「あーっ! 醤油の蓋、開いたまんまじゃん!」
「申し訳ない……」
そんな感じで片づけること一時間。
元々、物が少なかったこともあってか、意外と早く片づいてしまった。
というか、ほとんど萩月さんがしたんだが……。
「ふう……キモチイイ……」
萩月さんはといえば、やり切ったと言わんばかりにさわやかな笑顔で汗を拭った。
「さーてと! それじゃ、アタシはシャワー浴びさせてもらうから」
そう言うと、キャスター付きのスーツケースを転がしながら脱衣所へと向かう。
「……覗くなよ?」
「(コクコク)」
俺は萩月さんにギロリ、と睨まれ、無言で思い切り首を縦に振った。
——シャアアア……。
シャワーの音が部屋の中に響く。
というか、健全な男子ならこのシチュエーション、興奮せずにはいられないが、あいにく俺は命の危険があるので大人しく正座するのみだ。
だけど。
「萩月さんは、どうして家出なんかしているんだ……?」
俺は彼女が入っている風呂場を眺めながら、首を傾げた。
お読みいただき、ありがとうございました!
本日は四話投稿!四話目もこの後投稿いたしますのでどうぞよろしくお願いします!
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