ギャルとクズ①
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■萩月しゆの視点
——キーンコーン。
一日の授業が終わり、クラスのみんなが一斉に帰り支度を始める。
もちろんアタシも、教科書やノートをカバンにしまうと。
「じゃね、バイバーイ」
クラスメイト達に手を振って教室を出て行く。
「あ、萩月さんバイバイ!」
「しゆのっち、おつ~!」
「また明日ねー!」
アタシが挨拶をすれば、クラスの全員がアタシに注目して挨拶を返してくれる。
これが、アタシの日常。
だけど……アタシは知っている。
この連中の全員が、大切なアタシの池っちをクズ扱いしてることを。
反吐がでる。
でも、それも今日でオシマイだ。
そのためにも、せいぜいこのクズ達には上手く踊ってもらわないと。
あは……アレを知ればコイツ等、どうなるかな?
といっても、みんなクズだし、標的が変わるだけだろうけど、ね。
まあいいや。
アタシが興味あるのは池っちだけ。
アタシが大切なのも池っちだけ。
アタシには……池っちただ一人だけ。
今からアタシは教室まで池っちを迎えに行く。
だって、池っちは今日もバイトだし。
アタシと幸せに暮らすために頑張ってくれる池っちを、ちゃんと送り出すのはアタシの役目。アタシだけの特権。
だから。
「池っち! 迎えに来たし!」
「ああ、今行く」
ああ……池っちがアタシを見つけた途端、あんなに嬉しそうな笑顔を浮かべた。
あんな笑顔をくれるのも、このアタシだけ。
それだけで、アタシの心は全部満たされる。
「さあ、行こう」
「あは! うん!」
池っちの隣に並び、アタシ達は下駄箱へと向かう。
ホントはここで池っちの手を繋ぎたいところだけど、さすがにまだ早いよね。
まあ……池っちってば絶対に奥手だから、まだまだ時間が掛かりそうだけど……って、それはアタシも同じか。
アタシだって、池っちがアタシを見つめるだけで、触れるだけで、アタシはいつもドキドキしてる。池っちには絶対に内緒だけど。
下駄箱で靴に履き替え、校門へと一緒に歩く。
クズ共がアタシ達に奇異な視線を向けてくるのもすっかり慣れっこ。
それに、こんな視線ももう終わるし。
それよりも、あとちょっとでしばらく池っちとお別れなことのほうが、アタシには何よりつらい。
でも……頑張ってる池っちのために美味しいご飯を作って、笑顔で出迎えないとね。
これも、アタシだけの特権。
「じゃあ萩月さん、行ってくるよ!」
「あは! 頑張れ!」
アタシは池っちの背中をバシン、と叩くと、嬉しそうに微笑む池っちがバイト先に駆け足で向かって行った。
そんな池っちを、アタシは微笑みながら、その背中が見えなくなるまで手を振り続ける。
「…………………………さ、行くか」
アタシはクルリ、と踵を返すと、また校門をくぐる。
あの最低の、クズオブクズにトドメを刺すために。
◇
「あは、ちゃんと来てるじゃん」
約束場所の体育館裏には、既に須藤花凛が男子生徒一人……多分、アイツの彼氏のえーっと……まあいいや、クズ彼氏と一緒に来ていた。
フン、一人じゃ怖いからクズ彼氏と同伴って、ダサ。
まあ、姑息な真似する奴にはお似合いかも。
「ええと……萩月さん、私をこんなとこに呼び出して、どうしたのかな?」
「ちょっと話があってさ。ところで、そこの男、誰?」
知ってるくせに、アタシはわざとバカにするように、ヘラヘラしながらクズ彼氏に指差してやった。
「あ、うん。彼は“黒川秀人”っていって、私の幼馴染なんだ」
「黒川秀人だ。よろ……「へ? 彼氏じゃないの?」」
アタシが自己紹介を遮ってそう告げると、クズ彼氏は一瞬表情を変えた。
ま、ピクリとも表情が変わらなかった須藤花凛は、さすが……なのかな?
まあいいや、どうせ二人とも終わりなんだし。
「私達はただの幼馴染だよ? といっても、私はそんな関係になってもいいかな、なんて……」
「お、おいおい……」
はあ!? コイツ等、アタシに何見せてくれちゃってんの!?
マジでキモチワルイんだけど!
「……んなことどーでもいいんだけど。つーかさ、アンタの元カレの池っち……池田塔也に襲われたくせに、随分余裕じゃん? 普通、トラウマになったりしてムリなんじゃないの?」
アタシは半目で睨みながら突っ込むと。
「……私も、前に進まないといけないから……」
「花凛……」
はあ!? どの口が言ってんの!?
オマエのせいで……オマエ等のせいで、一歩も動けないままでいる池っちがいるのに!
「フン! 何が前に進まないと、だ! 池っちを犯人にでっち上げて、池っちを嵌めて! なのにのうのうとそんな態度とって!」
「酷い! この一年間……ずっとあの時のことが頭に浮かんで、必死で耐えて……やっと……やっと、前に進もうと思ったのに……!」
「おい! ちょっとそれはないだろ!」
……ここまで来ると、呆れてものも言えないし。
もう、いいや。
まどろっこしいことはやめよう。
こんなクソみたいなキモチワルイ演技見せられるくらいなら、さっさと本題に入ってしまおう。
「あの日」
「「……?」」
「アンタが池っちに襲われたっていうあの日……アンタ等、駅前にいたよね?」
「「っ!?」」
二人が息を飲んだのが分かった。
フン、バカ。
「アレー? おかしいなあ……その日はアンタ、池っちとデートじゃなかったっけ?」
「…………………………」
アタシは煽るようにそう尋ねると、須藤花凛は眉根を寄せた。
クズ彼氏はといえば、気まずいのか視線を地面に落とす。
「で、池っちにいつ襲われたんだっけ? 教えなよ?」
「それは……そう、夜! 夜に彼に公園に呼び出されて、それで!」
「夜? つーか、夜の公園だったら真っ暗じゃん。池っちが落としたスマホ、どうやって見つけたの?」
「え!? ス、スマホ……?」
「忘れた? 池っちに襲われた時の証拠品として、アンタが学校に出したんだろ?」
そう言うと、コイツは本気で忘れてたのか、必死になってあの時のことを思い出している。
いや……どう切り抜けようか、考えてんのかも、ね。
じゃあ、また追い打ちかけよっか。
「あ、一生懸命考えてるとこ悪いけど、池っちは夜に交番へスマホの紛失届と被害届出してるから、夜に襲われたってのは当てはまんないし」
「「…………………………」」
アタシの言葉に、二人が無言で俯く。
だけど、須藤花凛は俯きながらも、鋭い視線でアタシを睨んでいるのが分かった。
ホント、いい根性してるし。
「で? もう一回聞くけど、どうやって池っちに襲われたんだっけ?」
「…………………………」
「早く言えし!」
アタシが二人に詰め寄る。
すると。
——ドン!
「クッ!?」
突然、須藤花凛に突き押され、アタシの身体がよろめく。
「黙って聞いてたら……調子に乗ってんじゃないよ! このカス! ビッチ!」
豹変した須藤花凛が、とうとう本性を現し、醜悪に顔を歪ませて汚い言葉で叫んだ。
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次回は今日の夜投稿予定!
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