悪女
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今回は例の女視点!
■須藤花凛視点
「おはよ! 花凛!」
朝の通学途中、友人の橋田瑞希が声を掛けてきた。
「おはよ! 瑞希! ところで……もう大丈夫?」
私は心配そうに瑞希に尋ねる。
というのも、瑞希の父親が経営している喫茶店にあの男……“池田塔也”がアルバイトとしてやってきたから。
しかも、あの男を追い出した瑞希が、どういう訳かあの“萩月しゆの”が絡んできたから。
さらにはあの女子バレー部のエース、“古賀葵”まで……。
「うん! 私は大丈夫だけど……ホントに、あの萩月さんがあのクズに騙されてるかと思うと……」
そう言うと、瑞希は少し落ち込んだ表情を見せる。
本当に、正義感だけは無駄に高いんだから。
「そっか……」
「あ、ゴ、ゴメン! 花凛からしたら、あんなクズのこと、思い出したくもないよね……」
「ううん、私はもう平気だし。それより、私は瑞希のほうが心配だよ……そもそも、萩月さんも古賀さんも、一体どうしたのかな……」
萩月しゆのは、最近あの男といつも一緒にいる。
あの目立つ彼女が、あの男と一緒にいるんだから、学校中で話題にならない訳がない。
もちろん、生徒全員の思いは『なんであのクズに萩月さんが』ってものだけど。
むしろ驚きなのが、なんで古賀葵まであの男のことを……。
しかも、瑞希に詰め寄ってまで、あの“噂”のこと嗅ぎまわってるだなんて。
萩月しゆのか、古賀葵か……少なくとも、あの“噂”に疑いを持っている奴が現れたってことは間違いない。
幸い、今日は“秀人”も学校に来るから、今後のことについて相談しないと……。
「……花凛?」
「え? ……あ、ゴ、ゴメン、ボーっとしちゃった」
「ああ、いいんだけど……」
心配そうに見つめる瑞希。
そうだ、そんなことより。
「それより瑞希、古賀さんには……」
「うん! ちゃんと言ってやったよ! そもそも花凛にはあんなに心配してくれる彼氏がいるのに、あんな真似したあのクズはこの私が立ち直れないくらいにしたって!」
「そ、そんなこと言ったの!?」
「え、あ、う、うん……」
私が詰め寄ると、瑞希は視線を泳がせながら俯いた。
はあ……本当にこのクソバカは……!
正義感はあっても結局は小心者な瑞希だから、どうせ詰め寄られて全部話しただろう。
本当に、なんとかしないと……!
「そう……アリガト」
「あ……う、うん!」
「それより、早く行かないと学校に遅れるね。急ご?」
「うん!」
私は一抹の不安を覚えつつも、平静を装って瑞希と学校へ向かう。
そして、学校に到着した私達は下駄箱で上靴に履き替え……って、手紙?
私の下駄箱の中に、宛名の書いていない、白色の封筒が入っていた。
今どきラブレターだなんて、ダサ。
とはいっても、週に二、三回は入ってるんだけど。
もらったことがないような女の子なら、トイレの個室にでもこもってドキドキしながら開けるんだろうけど、私にとっては、ねえ?
いつものように私はつまらなそうに封筒を開けると。
「どれどれ……っ!?」
『放課後、体育館裏で待ってる。 “萩月しゆの”』
差出人は、萩月しゆの。
やっぱり……あの噂のこと!
「アイツ……!」
私はグシャ、と手紙を握りつぶす。
「あ……花凛……ヒッ!?」
私を見た瑞希が怯えた表情で後ずさりする。
だけど……そもそもこんなことになったのは、このバカが余計な真似をしたから。
だから、その程度は我慢してもらわないと。
……早く秀人と会って、なんとか対策を考えないと!
◇
「……それで、あの萩月しゆのがその手紙を」
昼休み、私は秀人を中庭に呼び出して作戦会議をしている。
萩月しゆのの追求を躱すために。
もし、あの噂の真実を知られたら、私達はこの学校にはいられない。
それどころか、この街にすらいられないかも……。
「まあ……あの橋田の言ったこと程度で何か分かるとも思えないけどな」
「そ、それはそうだけど……」
それでも、どうしても不安がよぎる。
「なあに、俺と花凛の仲を追求されたら、ちょうどその時はお互い喧嘩別れしてた時期で、新しい恋を探してたとでも言い訳すればいいじゃないか」
「でも、私が誰に襲われたのか説明を求められたら?」
「それこそ、相手が覆面を被ってたとか言って誤魔化せば……」
はあ……そんな程度で誤魔化せる訳ないじゃない……。
大体、覆面被ってたのに私はアイツを犯人に仕立て上げたんだよ?
それこそ、追及されてオシマイでしょうが。
「ホント、秀人ってダメよね……あの時も、たかだか後ろから殴って気絶させたくらいでビビっちゃってたし。度胸はないわ浅はかだわ……」
私は呆れながら秀人を見る。
基本スペックがいいから付き合ってるけど、この性格だけはイマイチね……。
「……そもそも、お前がこんな下らないことを企むからいけなかったんだろうが! お前が、あの男がバイトばっかりしていていいカモになりそうだからって近づいて!」
「はあ? 秀人だって乗り気だったじゃない! あのバカにお金使わせて、搾り取るだけ搾り取ろうって!」
私達は中庭だっていうことを忘れていがみ合っていたせいで、周りにいる生徒がヒソヒソと話している様子が見えた。
「チッ……とにかく、秀人も放課後一緒について来てよ」
「はあ!? お、俺は関係……「あるよね? アイツ殴ったの、秀人なんだし」」
嫌がる秀人。
だけど、私は有無を言わせるつもりはない。
それに、萩月しゆの一人なら、秀人がいればどうとでもなる。
いざとなれば秀人にあの女を襲わせて、恥ずかしい写真の一枚でも撮れば、何も言えなくなるだろうし。
彼女も私と同じ学校の有名人だから、人の目を特に気にするだろうし、ね。
「とにかく……放課後、体育館裏だから」
「……分かったよ」
そう言うと、私は秀人と別れて教室に戻るため中庭を離れた。
……そもそも、あの池田塔也が悪いんだ。
この私がわざわざ陰キャなアイツに声を掛けてやったのに、まるで私に興味を示さないわ、形式上付き合っても全くデートにすら誘ってこないわ……。
だから今、アイツがこんな目に遭うのも当然の報いで、私が責められるのもお門違いだ。
萩月しゆの……彼女が何の目的で池田塔也の肩を持つのか分からない。
だけど……これはこれでチャンスかもしれない。
だって、今まで目障りだったあの女が堕ちれば、この学校で特別なのは私だけだから。
「あは……今回のコレをしのいだら、今度はアンタをあの男と同じようにしてあげる」
教室へと戻る中、気づけば私の口の端が吊り上がっていた。
お読みいただき、ありがとうございました!
今日も三話更新でお届け!
しかも、いよいよ萩月さんが須藤花凛と対峙します!
次回は今日の昼頃投稿予定!
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