ギャルの幸せを護るために
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「ただいまー」
「あは! おかえり!」
バイトから帰って部屋のドアを開けると、シンクの前で料理をしていた萩月さんが笑顔で駆け寄ってきた。
ああ……大切な人がいるって、こんなに幸せなんだな……。
「ホラホラ! 池っちも疲れてるんだし、座って座って!」
「あ、ああ」
萩月さんに背中を押されながら部屋の中に入ると、テーブルの前に半ば強制的に座らされる。
「すぐに晩ご飯の用意するからねー!」
「あ、手伝う「いいから! 池っちは座ってるの!」……あ、はい」
手伝おうとしたけど、止められてしまった……。
仕方ない、萩月さんが準備している間、俺は彼女の後姿を眺めていよう。
「じー」
「な、何? そんな見られると恥ずかしいし……」
ふふ、最近気づいたが、萩月さんは実はかなりの恥ずかしがり屋だったりする。
だからこうやって俺が眺めていると、彼女はいつも顔を赤くしてしまうのだ。
ただ。
「……あんまり見てると、池っちの晩ご飯だけ思いっ切りトウガラシかけてやるし」
「すいませんでした」
やり過ぎると、こうやって反撃を受けてしまうので程々にしないと。
「もう……ほいっと、今日はオムライスとオニオンコンソメスープ!」
萩月さんができあがった料理をテーブルへと運んでくれた。
「おお! ……って、こ、これは……」
「? どうかした?」
「あ、ああいや……」
ま、まさかオムライスに、その……ハ、ハートマークが……。
こ、これって、そういう……って、そんな訳ないか。
いつもの彼女の冗談だろう、そうに違いない。
「ま、いっか。さてさて、それじゃ……」
「「いただきます!」」
そして、いつものように萩月さんが号令をかけると、一緒に手を合わせた。
で、俺は早速オムライスを切り崩し、スプーンで少し多めに掬って一気に口の中に放り込む。
「モグ……うん! 美味い!」
「んふふー、でしょ? 何と言っても、アタシの愛情がこもってるし」
満面の笑みを浮かべながら俺の食べる姿をジッと眺める萩月さん。
うう……見られてることも照れるが、萩月さんの可愛い笑顔にも照れる。
「さ、さて次はスープを……これも美味い!」
「あは! やった!」
萩月さんが胸の前で小さくガッツポーズをする。
くそう、最高に可愛い。
いつも思うけど、本当に萩月さんは最高の女の子だよなあ……。
すごく優しくて、すごく可愛くて、家事だってなんでもこなせて……まさに完璧な女の子だ。
なのに、こんな俺なんかのためにここまでしてくれて……。
……一生かかってでも、彼女が俺にくれたものを返していかないと、な。
「あれ? 池っち、その食べ方……」
「……え?」
萩月さんを見つめていたところで、何かに気づいた萩月さんが急に頬を赤く染めた。
え? 一体何が……って、あああああ!?
どうやら俺は、無意識のうちにオムライスに描かれたハートマークを潰してしまわないように、綺麗に残して食べていたみたいだ。
「あうう……い、池っちは、もお……」
顔を真っ赤にして俯きながら、両手の指をこちょこちょさせる萩月さん。
うう……恥ずかしいこともさることながら、これで変な風に取られたりしてなかったらいいけど……。
「こ、こうなったら! えい!」
「ああ!」
なんと萩月さんは、俺のオムライスを囲うようにハートマークを皿に書き込んだ!?
「こ、これなら遠慮なく食べられるし!」
「あ、う、うん! そ、そうだな!」
俺と萩月さんは、恥ずかしさからお互い目を合わすこともできないまま、無言で晩ご飯を食べ終えた。
だけど……今度は皿、洗いたくないなあ。
◇
「んふふー、それじゃ寝よっか!」
「ああ、おやすみ」
「おやすみー」
夜の十一時になり、俺達は布団の中に入る。
俺は静かに目を瞑る。
すると。
「……ねえ、池っち」
「ん?」
萩月さんが声をかけてきたので、俺は返事をした。
「……アタシね? 今、幸せだし……」
「はは、俺も萩月さんのお陰で、こんなに幸せになれたよ」
「ホント? アタシがここにいて、嬉しい?」
「もちろん。ずっとこの部屋にいて欲しいって思ってる」
「そっか……ねえ」
「ん?」
「アタシが池っちを、もっともっと幸せにしてあげるからね」
「俺も……萩月さんを幸せにしたい……いや、幸せにしてみせるよ」
「あは……ありがと……」
もぞもぞと布団を鼻までかぶると、萩月さんは今度こそ本格的に寝る体勢に入ったようだ。
萩月さん。
俺が、気づかないと思ったのかな。
君が、何かを考えていて、何かをしようとしていることを。
……優しい君のことだから、多分俺のためにって色々と頑張ってくれてるのかもしれないな。
だけど……俺の一番の幸せは、君が幸せでいることなんだ。
だから。
俺が絶対君のこと、護ってみせるから。
お読みいただき、ありがとうございました!
次回は明日の朝投稿予定!
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