居場所を飛び出したギャル
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新連載二話目!
「ありがと……って、ゲッ!?」
俺の顔を見た瞬間、露骨に顔を歪めた女子生徒……“萩月しゆの”は、学校では俺とは別の意味で有名人だった。
そんな彼女は、明るめの茶色に染めたふんわりパーマの髪をポニーテールにまとめ、猫のように大きい瞳に整った鼻筋と薄い唇、そんな端正な顔に薄く化粧を施していた。
スタイルも良く、背は平均より低いものの、出るところは人一倍出て引っ込むところは人並みに引っ込んでいる。
服装も、学校指定の制服を崩して着ており、ボタンをはずして前をはだけさせたブラウスの上からベージュのカーディガン、ブレザー、そしてグレーのトレンチ風のコートを羽織っていた。
さらに、これでもかというほど、チョーカーを両手首につけて。
……まあ、所謂ギャルというやつだ。
ただし、その容姿から、うちの学校ではあの“須藤花凛”と一、二を争う程の美少女だったりする。
まあ、学校の誰ともかかわらないような俺でも知っている程の有名人、ということだ。
それより。
「……大丈夫だったか?」
俺は彼女にそう尋ねると。
「はあ!? アンタみたいな奴が、気安く話しかけてくんなし!」
……まあ、予想通りの反応だった。
当然だ。うちの学校で、俺の悪行を知らない奴はほとんどいないからな。
学校の有名人である彼女が知らない筈がない。
「……悪かった」
俺はその一言だけ告げると、その場から離れ……られなかった。
「何だよ~、やっぱりキミが書き込みの女の子なんじゃん!」
「はあ!? 違うし!」
さっきのオッサンがまた彼女に絡んできやがった。
「ホラホラ、恥ずかしがらないで……って、痛っ!?」
「気安く触んな!」
彼女の手をつかもうとしたオッサンが、彼女に叩かれたらしい。
「ふざけんなよ! このビッチが!」
「キャ!?」
激高したオッサンが彼女につかみかかろうと手を挙げる。
だが。
「つ……っ!」
どうやら俺は存外お人好しらしい。
放っておけばいいのに、気がついたら俺はまた間に割り込んで、普通にオッサンに殴られていた。
「な、何だよ……」
「何だよ、じゃないだろ……大体オッサン、女子高生に手を出してる時点で人生終了だぞ?」
俺は脅しをかけるようにあえてそう言うと。
「チッ!」
盛大に舌打ちをして逃げるようにこの場から離れて行った。
オイオイ、せめて俺に謝れよ。
俺は振り返り、彼女を見ると……まあ、怪我とかはないか。
それだけ確認すると、俺はその場から離れ……られないんだが。
何故なら……彼女が俺の服の袖をつまんでいるから。
「……えーと?」
「あ、いや、その……」
俺が頭を掻きながら尋ねると、彼女がしどろもどろになる。
だけど、つまんだその指は袖を離さないままだ。
それに……その指が少し震えていた。
はあ……腹、減ったなあ……。
モジモジしたままの彼女を見つめながら、俺はそんなことを考えていた。
いい加減、俺を解放して欲しい。
というか、彼女も神待ちなんてしていないで、サッサと家に帰ればいいのに……って、そんなことを俺が言う資格はない、か……。
「あ、あの……!」
ようやく意を決したのか、俯いていた顔を上げて俺を見つめる。
「その……あ、ありがと……」
「どういたしまして」
俺はそう返すと、今度こそ家に……って。
「……そろそろ離してくれると助かるんだけど」
「あう……」
そう告げても、彼女は口ごもるばかりで俺を解放する気はないらしい。
「……君も知ってるんだろう? 俺の“噂”」
「っ!?」
さすがにこう言えば、彼女も解放してくれる……そう思った時もありました。
「…………………………」
……どうしたものか。
その時。
——ぐう。
…………………………ん?
見ると、彼女は顔を赤くして恥ずかしそうに俯いた。
「な、なあ……金ぐらい持っているんだろう? ご飯、食べたほうがいいぞ?」
俺はそんな余計なアドバイスをしてみると、予想外の答えが返ってきた。
「お金……持ってないし……」
「マジですか……」
はあ……本当に仕方ない……。
「……ワックでよければ、奢ろうか?」
「っ! ホ、ホント?」
俺の言葉に、彼女がガバッと顔を上げた。
どれだけ飢えてるんだよ……。
「じゃ、じゃあ……行くか……」
「うん!」
ものすごく瞳をキラキラさせている彼女を連れ、俺は駅前のワックへと向かった。
◇
「んふふー! ウマウマ!」
俺の目の前では、既に三つ目のハンバーガーを食べている彼女がいる。
もちろん、ポテトとナゲットも既に平らげている。
うう……出費が……。
ま、まあ、それはこの際置いといて……少し、聞いてみるか。
「な、なあ、聞きたいんだが……なんで、あんなことしたんだ……?」
俺は回答を拒否されることも覚悟の上で、おずおずと尋ねてみる。
だって、普通に考えればお小遣いは貰っているだろうし、ハンバーガーの一つや二つ、いくらでも食べられるだろう。
なのに彼女は、こんなハンバーガーすらままならない状態で、しかも、あんな呟きまでして……。
「あー、うん……奢ってもらって悪いけど、それはちょっと言えない、かなあ……」
「そ、そうか……」
申し訳なさそうに俯きながらハンバーガーをかじる彼女に、俺はそれ以上聞けなくなってしまった。
誰だって、言いたくないことの一つや二つはある。
……もちろん、俺にも
「そ、それよりも、だ。今晩はどうするんだ?」
元々泊めてくれる人を探していた彼女だ。
このままそんな奇特な人が見つからなければ野宿だし、かといって、いたとしてもさっきのオッサンみたいな奴しかいないだろうし……。
「ど、どうしよう……」
見ると、彼女は瞳に涙を溜め、今にも泣きそうだ。
「……今までこうやって誰かに泊めてもらったりしていたのか?」
「……初めて」
「そ、そうか……じゃ、じゃあ今まではどうしていたんだ?」
「……ネカフェに泊まってた」
ああ、だから金が尽きて、あんな呟きをしたんだな。
そうなると……いよいよ、俺が提案できることは二つだけだ。
このまま家に帰らせるか……俺の部屋に泊めるか。
前者については、彼女は絶対受け入れないだろう。
家に帰るくらいだったら、こんなに腹を空かせて、知らないオッサンに頼ろうとはしない。
俺には……彼女の気持ちがよく分かる。
じゃあ後者だが……彼女はこれも絶対に受け入れない。
だって、俺にはあの“噂”があるから。
とはいえ、ここまで面倒見てしまった以上、今さら彼女を捨て置く訳にもいかない。
俺は意を決し、すう、と息を吸う。
そして。
「……君が嫌じゃなければ、俺の部屋にその……と、泊まるか……?」
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