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ボッチな俺の理解者は、神待ちギャルのアイツだけ  作者: サンボン
第一章 噂のアイツと神待ちギャル
19/96

ギャルと噂の真相①

ご覧いただき、ありがとうございます!


■萩月しゆの視点


「それじゃ、行ってくるよ」

「あは! 頑張れ!」


 池っちのバイトが決まって、もう一週間。

 今日も池っちは、元気にバイトに向かって行った。


 アタシもバイトを探してはいるんだけど、家出してる関係でなかなかいいバイト先が見つからず、頭を抱えていたりする。

 池っちは、気にしなくていいって言ってくれてるけど……アタシはもっともっと、池っちを支えたいんだ。


 はあ……どこかにいいバイトは……って。


「しーちゃあああああん!」


 ああもう! ゆっくり悩む時間もないし!

 ……と言っても、葵達とは会う予定ではあったけど。


「まったく! 少し落ち着けし!」

「えー……でも……」


 アタシが叱ると、葵は子犬みたいにシュン、となった。

 ホントに……アタシが庇護欲をそそられるのは、池っちだけだっての。


「ハハ、それより場所移動しねー? ワックとか?」

「ワック! 行く行く!」


 後藤の提案に、葵が嬉しそうに飛びつく。


 だけど。


「何言ってんの? アンタ、部活あるじゃん。しかも、春高バレー近いし」

「うぐ!?」


 ホントに……「うぐ!?」じゃないっての。

 それに、アタシも無駄遣いできる立場じゃないし。そんな余裕あったら、池っちにいつもより豪華なご飯作ってあげるっての。


「つーわけで、いつもみたいに踊り場か体育館の裏の二択で」

「……はーい」


 アタシがそう言うと、葵は渋々といった様子で返事した。


「んじゃ、体育館裏にでも早速行こーぜ」


 後藤に促される感じになったのは(しゃく)だけど、アタシと葵は後藤の後について……っ!


「……(ペコリ)」


 あの、“須藤花凛”とすれ違う。

 しかもアイツ、どういう訳かアタシ達に会釈してきやがった。


「……しーちゃん、行こ」


 足を止めてアイツを睨んでいたアタシの腕を、葵が引っ張る。

 アタシは視線だけアイツを睨みつけたまま、引きずられるように体育館裏に向かった。


 ◇


「それで、どうだった?」


 体育館からボールが床で弾む音が聞こえる中、アタシは壁にもたれながら二人に尋ねる。


「じゃあまず、私からあの“須藤花凛”のことについて話すね」


 そう言うと、珍しく葵が真剣な表情で話し始めた。


 まず、例の噂の真偽について。

 池っちやアイツと同じクラスだった奴に聞いた話だと、あの日の朝、クラス全員のスマホに『うちのクラスの池田塔也が、クラスの女子を襲って警察に逮捕された』というメッセージが一斉に届いたらしい。


 その時は、メッセージを見たクラス全員がデマだろうと思い、さして気にもしなかったとのことだ。


 だけど、いざ池田塔也が登校してくると、あのメッセージのことが頭をよぎり、クラスメイト達は一斉に池田塔也に注目した。


 すると。


「池田。今すぐ職員室に来い」


 池田塔也が先生に呼び出しを受け、そのまま教室を出て行く。

 もちろん、それを見ていたクラスメイト達は、あのメッセージの件じゃないか? と勘繰り始めた。


 そして、教室に戻ってきた池田塔也は、出て行くまでの様子とは打って変わり、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。

 だから、あのメッセージは本当なんじゃないかと考えるようになった。


 さらにその日以降、あの須藤花凛が学校を休んだのだ。

 みんなはこう考えた。


 須藤花凛は、池田塔也に襲われたんだと。


 だけど、別に証拠がある訳ではないし、池田塔也も普通に登校しているし、確証はない。

 とにかく、そんな微妙な空気がクラスに流れたまま、一週間が過ぎた。


 そして……須藤花凛が登校してきた。


 そんな彼女をクラスメイト達は遠巻きに眺めていると、池田塔也が彼女に近づいていった。


 その時。


「イヤッ!」


 彼女が池田塔也を拒絶し、頭を抱えて震え出したのだ。

 これで、あのメッセージの内容が全部つながった。


 クラスメイト達の反応は様々で、彼女を慰める者や池田塔也を罵倒する者、侮蔑の視線を向ける者……とにかく、クラスの中で池田塔也は最低な奴、ということになった。


 当然、この話はクラスの外にもあっという間に広がり、全校生徒が池田塔也という悪人の存在を知ることになった。


「……後は、私達も知っているあの噂、って訳ね」

「…………………………」


 葵の説明を聞き終え、アタシは唇を噛んだ。


 そもそも、池っちのクラスメイトだった連中、バカなの?

 なんでそんな怪しいメッセージ信じて、オマケに本当かどうかも確認しないで、池っちを犯人だって決めつけて……!


「し、しーちゃん、そんな睨まないで……」

「え……? あ、ゴ、ゴメン」


 少し泣きそうになった葵に言われ、アタシは我に返った。

 だけど……こんなの、絶対に池っちを()めるためにやったとしか思えない。


「……それで、そのメッセージを送った奴は分かるの?」

「あ、うん。池田塔也や須藤花凛とは別のクラスの、彼女の友達……“橋田(はしだ)瑞希”って子が送ったみたい。だからソイツにも、なんでそんなメッセージを送ったのか、なんでそんなこと知ってるのか、バレー部全員で囲んで問い詰めてみたんだけど」


 うん、こういうところはさすがアタシの幼馴染だ。やるとなったら容赦ない。

 とはいえ、そんなことするんだったらアタシも呼んで欲しかった。

 そしたら、アタシもソイツに一発くらいお見舞いしてやったのに。


「そしたらソイツ、須藤花凛の彼氏に頼まれたって言ったの」

「はあ!? 彼氏に頼まれたあ!?」


 アタシは葵の言っている意味が分からず、思わず詰め寄った。

 だって、あの女は池っちと付き合ってたんじゃないの!?


「ちょ、ちょっと落ち着いて! 説明するから!」

「あ、ゴ、ゴメン……」


 葵が軽く溜息を吐くと、また説明してくれた。


 池っちが公園で後ろから殴られた日の夜、その彼氏からソイツに連絡があったらしい。


『俺の彼女が、未遂だったものの、あの池田塔也っていう勘違いヤローに襲われた。花凛が傷ついているから、事を(おおやけ)にしたくないけど、どうしてもあの男が許せない。だから、花凛の名前は伏せて、この事実を花凛のクラスのみんなに伝えて欲しい』


 って。

 しかも、ご丁寧にクラス全員の連絡先まで送ってきて。


 それを聞いたソイツは、須藤花凛に電話してみるけど、全然出てくれない。

 これは本当だと感じたソイツは、須藤花凛のクラス全員に一斉にメッセージを送った。


 そして、やっと須藤花凛が登校してきて、ソイツも須藤花凛本人から事情を聞いて……。


「……で、変な正義感(こじ)らせて、学校中にその噂広めて、池田塔也を学校から追い出そうと考えたらしいよ」

「分かった。ソイツ、今からシメてくる」

「ちょ!? ダメだって!」

「何で? ソイツのせいで池っちが苦しんでるんだ。アタシに何されたって、文句言わせないし」


 アタシに抱きついて必死で止め葵を引きずりながら、アタシは校舎の中に入って行こうとする。


「マアマア、そもそもソイツがどのクラスかとか、萩月ちゃん知らねーじゃん?」

「そうだね。葵、ソイツってどこのクラス?」

「コラ! 蓮! しーちゃんを煽るな! それに、一番悪いのはソイツにそんなこと吹き込んだ、彼氏って奴でしょ!」


 そうだった。

 そもそも、池っちを嵌めようとしたその男をシメないと。


「で、その彼氏って奴、誰?」

「……今すぐ殴りに行ったりしない?」


 ジト目で尋ねる葵に、アタシはそっぽを向いた。


「マアマア、ここまで調べた葵の顔も立ててやってよ。それに、そんなことして萩月ちゃんに何かあったら、その池っちも悲しむんじゃないかなー」

「っ! 池っちのこと、“池っち”って呼んでいいのはアタシだけだし!」


 クソ、嫌な言い方して……。

 そんな風に言われると、何にもできなくなっちゃうじゃん……。


「……殴りに行ったりしないから、早く教えろし」

「はあ……じゃあ言うよ。彼氏の名前は“黒川(くろかわ)秀人(ひでと)”。うちの学校の三年で、須藤花凛の幼馴染らしいよ」

お読みいただき、ありがとうございました!


今日も三話更新!

次回は今日の昼投稿予定!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ふーむ。 黒川の陰謀・暗躍、橋田瑞希の勇み足ってとこか… ただ花凛の状況がわからんな
[一言] 高頻度の更新、お疲れ様です。 早速の調査結果。早い。凄い調査能力(運動会系の圧力?) 絵を描いたのは「彼氏」らしいけれど、そもそもなんで向こうの彼女から告白してきたか、が問題ですね。 もう…
[一言] 主人公は例のアレとは友達からって事だったし付き合ってはいなかったですね。でもまぁ嘘告から笑うつもりがなかなか引っかからずに焦れて犯行に及んだ感じですかね。被害届けまで出してるんだからもうちょ…
感想一覧
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