ギャルの声が聴きたい
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「そういや池っち、今日はバイトの面接終わったら、すぐ帰って来る?」
放課後になり、萩月さんと下駄箱に向かいながら雑談をしていると、彼女がそんなことを聞いてきた。
「ええと、どうだろう。ひょっとしたら、そのまま仕事することになるかもしれないし……」
「そっかー」
「? どうかした?」
「あは、せっかくだしお祝いしようかなーと思って。ホラ、作る料理によっては温める時間とかあるじゃん?」
「え、お、お祝い!?」
そんなの、すごい嬉しいんだが。
「あ、じゃあ、面接が終わった段階でRINE送るよ!」
「あは! そうしてもらえると助かるし!」
でも、そうかー……萩月さんにバイトのお祝いをしてもらえるなんて、最高だな。
本当に、萩月さんがうちに来てくれてから、毎日が楽しくて仕方ない。
俺は少し浮かれた気分で靴を履き替え、萩月さんと校門まで来ると。
——バシン!
「池っち! 頑張んなよ!」
「ああ! 行ってくる!」
萩月さんに思い切り背中を叩いて激励してもらい、気合の入った俺はバイト先となる運送会社へと向かった。
◇
「いやあ! よく来てくれたな!」
「は、はい! よろしくお願いします!」
運送会社に着き、早速事務所のようなところに入ると、少し恰幅のいい豪快なおじさん……支店長が、笑顔で迎えてくれた。
「そ、それで、今から面接……」
「おっと、それだけど、俺は仕事っぷりを見て決めてるんだ! だから、今日はボウズの仕事を見せてもらうよ!」
「は、はい!」
「いい返事だ! こりゃ、期待できるな!」
そう言うと、支店長がニカッと笑った。
「それじゃ、仕事を教えるからついてきな!」
「はい!」
俺は支店長に倉庫の中へと連れられ、仕事内容について簡単に教わった。
といっても、基本的に積み込むトラックごとに仕分け、あとはそのトラックが倉庫に横付けされたら荷台に積み込むだけなんだが。
「……という訳だから。最初のうちはチョットキツイかもしれんが、なあに、すぐ慣れるさ!」
「はい! 頑張ります!」
「んじゃ、頼むよ」
そう言って、支店長はまた事務所の中に戻って行った。
さて……取り急ぎ、萩月さんに連絡だけしておかないと。
俺はスマホを取り出し、素早くメッセージを打ち込む。
『今日は仕事になりました。終わったら連絡します』
送信ボタンをタップすると、スマホをポケットに戻して両頬を叩いた。
さあ、やるぞ!
それから俺は、一心不乱に荷物を整理していく。
重い物や軽い物、大きい物、小さい物、形が特殊な物……色々な荷物をトラックごとに仕分けし、奥に詰めて積んでいくものから順に並べておく。
こうすれば、積み込む際に効率的だし。
「ふう……」
一時間程作業していただろうか。
とりあえず、トラックごとの荷物の仕分けは終わった。
後は、トラックが来た時に積み込むだけだ。
すると。
「お疲れ!」
「あ、支店長、ありがとうございます」
いつの間にか支店長が俺の後ろにいて、お茶のペットボトルを渡してくれた。
俺はそれを受け取ると、蓋を開け、一気に飲む。
「ふう……」
「ハハハ! 張り切るのはいいが、無茶はするなよ! 何といっても、明日以降もあるんだからな!」
「え? そ、それじゃ……」
「おう! 採用だ!」
「あ、ありがとうございます!」
ニカッと微笑む支店長に、俺は深々と頭を下げた。
よし! これで萩月さんに良い報告ができるぞ!
それに、収入だって増えるから、少しは萩月さんにプレゼントか何か、できるかも……!
すると、倉庫の前にトラックが止まる音が聞こえた。
「そ、それじゃ、積み込みに行ってきます!」
「ハハハ! おう!」
俺はトラックの元に駆け出し、張り切って荷物を積み込んだ。
◇
「お疲れ様でした!」
「おう! お疲れ!」
一日の仕事が全て終了し、事務所で挨拶をした。
「いやー! しかし支店長、コイツは掘り出し物だったんじゃないですか?」
「ハハハ! 全くだ! 性格は素直で真面目で、仕事も丁寧だし、何よりちゃんと自分で考えて仕事してくれるしな!」
支店長や従業員の皆さんが俺のことを手放しで褒めてくれるので、俺としてはいたたまれないというか、恥ずかしいというか……。
「ホラホラ! 遅くなるといけないし、早く帰りな! で、明日もよろしく頼むよ!」
「はい! 失礼します!」
俺はもう一度頭を下げると、事務所を出た。
「ふう……おっと、萩月さんに連絡しないと」
俺はスマホを取り出し、画面を見ると。
『了解! 待ってるし☆彡』
『おつ~! 池っち頑張れ!』
『まだ仕事かな? 無理しないでね!』
萩月さんから、励ましのメッセージがたくさん届いていた。
萩月さん……。
俺は居ても立っても居られず、急いで萩月さんに電話を掛ける。
——プルル……。
『池っち! お疲れ様!』
電話の向こうから聞こえてきたのは、俺を労う萩月さんの声。
そんな彼女の優しさがこもった声が、俺の心に沁み渡る。
「うん。今、仕事終わったから、これから帰るよ。それと……無事、採用になりました」
『ホント! やったー!』
ああ……たったこれだけのことで、萩月さんは自分のことのように喜んでくれる。
『じゃあ早く帰ってきなよ! 今日はアタシ特製のハンバーグとプリン作ったんだから!』
「それはすごい! 急いで帰るよ!」
『あは! 待ってるし! ……ところで、どうしてわざわざ電話掛けてきたの……?』
萩月さんが電話越しにおずおずと尋ねるが……そんなの、決まってる。
「俺が、萩月さんと話したかったから。萩月さんの声が、聞きたかったから」
『っ! も、もう! 池っちのバカ!』
怒られてしまった。
だけど、声の感じを聞けば、ただ照れているだけなのは分かっているんだけど。
はは、可愛いな……。
『と、とにかく! 待ってるし!』
「うん……じゃあ」
通話終了のボタンをタップしてスマホをポケットに入れた俺は、萩月さんの待つあの部屋を目指して、大急ぎで帰った。
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次回は明日の朝投稿予定!
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