ギャルと仲間
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いよいよ今回の話から、主人公の噂の解決に向けて動き出します!
「あは……もう、昼休みも終わり、だし……」
「そう、だな……」
結局、俺と萩月さんはずっと抱き合ったまま、昼休みを終えた。
でも……俺は今日、また一つ萩月さんのおかげで救われた。
この、世界一素敵な女の子のおかげで。
もう、俺の瞳にも、そして心にも涙はない。
あるのは、太陽より眩しい萩月さんだけ。
「さ、戻ろっか」
「ああ」
俺と萩月さんは、もう普段の様子に戻っていて、急いで教室に向かった。
◇
五時間目の授業が終わり、俺は軽く伸びをしていると。
「“池田塔也”、いる?」
教室の入口で、険しい表情をした少し背の高い女子生徒が俺の名前を呼んだ。
この女子は知っている。
女子バレー部を全国大会へと導いたエース、“古賀葵”。
そんな彼女の呼び声に、クラスメイト達が反応して一斉に俺の席へと視線を向けた。
絶対碌なことにならない予感がしたので、できれば無視したかったが……ここまで注目を浴びてしまったら、もうどうしようもない、か……。
「……俺なんかに、一体何の用だ?」
俺は彼女の元へ行き、用件を尋ねる。
「ちょっと、話があるんだけど。コッチよ」
クイ、と顎で指図すると、彼女はスタスタと先に歩いて行く。
「お、おい!?」
俺は彼女を慌てて呼び止める。
というか、俺の意志は無視か!?
「早く。何してるの」
こちらへ振り返り、呆れた表情でそんなことをのたまう彼女。
はあ……やれやれ。
俺は溜息を吐いてかぶりを振ると、仕方なく彼女の後を追いかけた。
で、連れてこられた場所は、屋上につながる階段の踊り場。
俺と萩月さんが昼ご飯を食べている場所、だ。
そこには、ヘラヘラした茶髪……いや、金髪に近いな。そんなチャラそうな男子生徒が座っていた。
「あ、コイツは無視してくれていいから」
「いいのか!?」
でも、話あるんじゃないのか!? 部外者がいてもいいの!?
「それで、早速だけど……アンタ、“しーちゃん”のこと、どう考えてるの?」
「“しーちゃん”?」
“しーちゃん”って……誰だ?
「ハハハ! アレだよ、“萩月しゆの”ちゃんだよ」
「ウルサイ。“蓮”は黙ってて」
なぜかチャラい男子が説明すると、彼女がそれを窘めた。
だけど、“しーちゃん”って、萩月さんのことか。
愛称で呼んでいるということは、萩月さんと仲がいいのかな。
「それで、どう考えてるの?」
「どう、って言われても……」
「ハッキリしなさい! 私は、アンタが“噂”通りしーちゃんに酷いことしようと企んでるのかって聞いてるの!」
質問の意図が分からず困惑している俺に、彼女はたたみかけるように俺に問い詰めた。
というか、俺が萩月さんに酷いことを、だって?
「……萩月さんみたいな素敵な女の子にそんな真似する訳がないし、萩月さんが悲しむようなこと、できる訳がない」
俺は彼女の瞳を見据え、キッパリと断言する。
信じてもらえるとは思ってないが、それでも、俺は萩月さんが悲しむようなこと、絶対にしないし、絶対にさせたくない。
「フン、どうだか? 大体しーちゃんもしーちゃんで、こんな男に騙されるほどバカだなんて……」
「俺のことはどう言おうが構わないが、萩月さんの悪口を言うな!」
俺は萩月さんを引き合いに出されたせいで頭がかあ、と熱くなり、逆に彼女に詰め寄った。
すると。
「マアマア、二人共落ち着いて。つーかキミ、自分がバカにされても怒らないくせに、萩月ちゃんのことになるとブチギレるのな」
ケラケラ笑いながら、チャラい男子が俺達の間に割って入った。
そのおかげで冷静さが取り戻せたから、まあいいか。
「……フン、まあいいわ。とにかく、しーちゃんにちょっとでも変な真似したらただじゃ済まさないから、覚悟しておくのね」
彼女は用件は終わりとばかりに、プイ、とそっぽを向いた。
「はは、悪いね」
そして何故かチャラい男子が俺に謝って手をヒラヒラさせた。
つまり、もう俺に用はないらしい。
「…………………………」
俺は踵を返すと、無言のまま教室へと戻って行った。
◇
■萩月しゆの視点
六時間目。
アタシは授業をサボり、廊下の壁に腕組みしてもたれながら、二人が戻って来るのを待っていた。
すると。
「しーちゃん!」
“幼馴染”の葵が、廊下の端から全速力でダッシュしてきた。
ていうか、廊下走るなし。
「しーちゃん! 待った?」
「そ、そんな待ってないし! 抱きつくなし!」
そう、この葵はどういう訳か子どもの頃からアタシにべったりで、高校生になった今もこうやってまとわりついてくる。
何というか……池っちとはまた違った懐きかたなんだよねー……。
「ハハハ! 相変わらず仲良いな!」
「ウッサイ! いいからアンタの彼女、いい加減回収しろし!」
遅れてフラフラとやってきたこの男は“後藤蓮”。
一応、葵の彼氏だ。
あの葵が男と付き合うだなんて想像もしなかったけど、意外とウマは合ってるみたいで、いつも文句言いながらも、なんだかんだ仲睦まじい。
「それよりしーちゃん! アイツに会ってきたけど……ホントに大丈夫なの? アイツに酷いことされたりしてない?」
葵が心配そうにアタシを見る。
ていうか。
「昼休みに池っちの姿をちゃんと見て、ちゃんと話聞いたじゃん! まだ分かんないの!?」
「そ、そうだけど……」
アタシはいまだに池っちに疑いを持つ葵に詰め寄ると、葵はシュン、となった。
「ハハ。まあまあ、葵は萩月ちゃんが大好き過ぎて嫉妬してるだけだから許してよ。それより、俺もアイツに会ってみたけど、確かに噂のような奴じゃねーな」
「で、でしょ! 池っちはすごく優しいし! アタシのこと大事にしてくれるし!」
アタシは後藤の言葉が嬉しくなって、つい興奮して池っちの素晴らしさを熱弁すると。
「……しーちゃんのバカ」
「ハハハ! なんだよ萩月ちゃん! 完全にアイツにベタ惚れじゃん!」
「ち、違うし! アタシは池っちの、そ、そう! 保護者みたいなモンだし!」
口を尖らせながらジト目で見る葵とニヤニヤしながら見る後藤に、アタシは必死に反論した。
「ハイハイ、もうそれでいーや。それより、俺達はあの女……“須藤花凛”の裏を取ればいいんだろ?」
「そう。絶対アイツ、池っちを嵌めるために何かしたんだ!」
アタシは昼休みの池っちを思い出し、拳を思いっ切り強く握り締めた。
「はあ……しーちゃんをたぶらかすあんな奴のために動くのはヤだけど、他ならぬしーちゃんの頼みだし……あうう……」
「あーもう! この件が終わったら、アンタにパフェ奢るから!」
「ホント! ホントだからね! ……よーし! こうなったらうちのバレー部総動員させて、速攻であの女の尻尾つかんでやるんだから! そして、しーちゃんと……ぐふふ」
「……後藤、あんな笑い方する彼女でホントにいいの?」
「ハハハ、カワイイじゃん」
「……アンタがいいならいいけど」
ちょっと変態入った幼馴染だけど、全国大会に導いたバレー部のカリスマエースだから、この学校でもかなりの権力持ってるんだよね。
しかも、今回はガチで気合い入ってるっぽいし、ホントにすぐ尻尾つかみそう。
「ま、俺もツレに当たってみるわ。少なくとも、アイツを後ろから殴った奴いるみたいだし」
「お願い」
後藤も後藤で、この学校だけじゃなくて外にも顔がきいたりするから、ソッチ方面もすぐに見つかる筈。
さあ……“須藤花凛”。
アタシが絶対、池っちと同じ目に遭わせてやるし!
「あ、そうそう」
アタシが気合いを入れてると、後藤が急に声を掛けてきた。
「アイツ……池田だっけ? 悪くねーじゃん。といっても、萩月ちゃんだけに懐く野良犬って感じだけど」
「っ! ウッサイし!」
後藤が余計な一言だけ言い残して、葵と一緒にシレッと自分達の教室に戻って行った。
だけど。
「い、池っちがアタシだけに懐くのなんか、当然だし……」
アタシは後藤から聞いた池っちの評価が嬉しくて、どうしても口元が緩んでしまった。
お読みいただき、ありがとうございました!
今日は三話更新します!
次回は今日の昼投稿予定!
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