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想い続けた異国の少女と二人の約束  作者: 久野真一
第3章 恋人(仮)
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第9話 恋人(仮)との朝の一幕

「また、寝付けなかった……」


 ミアが来てからというもの、色々心を乱されっぱなしだ。

 何か重要な約束があるというし(しかも、俺が覚えてる中のどれかだとか)。

 それに加えて、デーティング期間と来た。

 そりゃ、俺とだけだと言ってくれたのは嬉しかったけど。

 少し、昨夜のことを思い出す。


◆◆◆◆


「なあ、ちょっとはっきりさせておきたいんだけど」


 我が家での夕食の後、自室で俺たちは二人きり。


「なに?」

「いや、デーティング期間ってのはわかった。でも、何していいか悪いかがわからん」


 ネットの知識に頼るのはやめにした。

 こいつの言うデーティングとやらは、色々違うようだし。

 昔からの付き合いらしく、わからないところは、正面から聞くのだ。


「基本的には何でもオッケーよ?」


 蠱惑的な表情で惑わすような言い方をしてくる。


「なんでも?」


 なんでもと言われると色々想像してしまう。


「ひょっとして、エッチな事考えたでしょ?」


 頬を赤らめて、そんな事を言われると色々想像してしまう。

 

「少しは。付き合うって言ったら、そっちも少しは考えるだろうし」

「そ、そういうのは心の準備が出来てないから。でも、キスまでなら……」


 顔が真っ赤だ。って、


「そっちだと唇同士のキスもそんなに軽いのか?」


 昨日はほっぺにチュッとされてしまったけど。


「そんなわけないでしょ。ほっぺにキスでも下手したらセクハラよ?」


 昨日、同意せずにしてきたのはいいかと言いたくなったが、黙っておく。

 俺も嬉しかったのは事実だし。


「私なりに真剣なのよ?」


 言葉を聞いていれば、冗談の類ではないことはわかる。

 でも、キスまで許す関係だけど、正式な恋人ではないというのが腑に落ちない。


「デーティングってのがさっぱりわからん」

「私もわからないわよ。初めてだもの」


 どこか、戸惑ったような声。

 要はあれか?母国の慣習に従って、まずは……と言ってみたものの、

 そもそも、何すればいいかわからないと。


「でも、普通にデートに誘ったり、イチャついてもいいってことだよな」

「い、いちゃつくって……。もちろん、OKだけど」


 うつむきながら、声がどんどん小さくなっていく。

 聞けば聞くほど、恋人との差がわからないけど、こいつなりに重要なんだろう。


◇◇◇◇


 登校の途中。ふと、隣を歩く彼女の手を握ってみたくなった。


(こういうのはOKだよな?)


 そろり、そろりと手を近づけると、なんだかあちらからも手を近づけてくる。

 そして、手を絡み合わせる。


「うん。なんか、色々幸せだ……」


 デーティングだろうがなんだろうが嬉しいものは嬉しい。


「私もよ、咲太」


 ミアも照れくさそうに言う辺り、悪い気はしてないんだろう。


「これからも、こうしていいか?」

「もちろんよ」


 これからは当然のようにこう出来るのか。

 そう思うと、嬉しくなってくる。


◇◇◇◇


 そして、登校してみたら、予想通り、


「ね、ミアちゃん、結局、いつから咲太(さくた)君と付き合ってたの?」


 恋バナ好きなクラス女子である山吹(やまぶき)さんがミアに話しかけていた。


「え、えっと。実は、スイスに居たときから」

 

 そこで誤魔化すのか。でも、デーティングと言っても意味不明か。


「ふーん。咲太君も隅に置けないねえ。で、遠距離恋愛だったわけかー」

「そ、そういうことよ」


 どんどん設定が作られていくぞ、大丈夫か?


「交際はどうやってたの?電話?メール?SNS?ビデオ通話?」


 恋バナに興味を持った女子は恐ろしい。


「ぜ、全部かしら。月に1回はビデオ通話してたし、ツイッターも」


 実は、ミアも俺もツイッターのアカウントを持っている。

 ミアのアカウント名はmiamiaだ。割とそのまんま。

 俺のアカウントはsakusakuだ。同じく割とそのまんま。


 こいつがスイスに居たときは時差があったから、時々リプを飛ばし合ったりしていた。

 最近までやってたのだけど、むしょうに懐かしいな。


 しかし、恋人でなかった事はおいとけば、まんま真実を話してるな。


「小学校の頃からでしょ。咲太君も情熱的だねー。それとも、ミアちゃん?」

「いやまあ、両方だと、思うぞ?」


 噛み合ってないようで噛み合っている会話だ。

 お互いに交流を続けたいというのは、双方の意思だったと思う。

 

「でも、遠距離恋愛だと辛くない?たまに会いに行ったりは?」


 もうやめてくれ。どんどん俺たちの交流が暴かれていく。


「年に1回は咲太がスイスに来てくれたわ……」


 そして、ミアさんや。顔を赤らめて嬉し恥ずかしな語りはやめてもらいたい。

 恋する乙女みたいじゃないか。いや、間違っていないのか?


「へー。やっぱり、咲太君が積極的だったんだー。そういうの、羨ましいなー」

「ま、まあ、そんな大したことじゃなかったって」

「大したことじゃない?」


 きっと、鋭い目でミアに睨まれた。しまった、失言だ。


「いや、言葉の綾って奴で、もちろん、大切な想い出だ?」


 その事は嘘偽りはない。


「それなら、ほんと他人が出る幕ないわねー。男子どもも、諦めなよー」


 また、山吹さんは吹聴するようなことを。

 変な虫が寄ってこなくて助かるとも言えるか。


 一通り、俺達の恋路を聞いて満足したのか、山吹さんは去って行った。


「スイスに居たときから遠距離恋愛してた事になってるけど、いいのか?」

「べ、別に今、お付き合い、みたいな事をしてるし、誤解されてもいいわよ」


 それもそうか。


「しかし、昨日は開きなおった風なのに、今日はやけにしおらしいな」

「そこは女心をわかってほしいんだけど」

「……わかった」


 あの時は勢いで、って奴なんだろう。

 ほんと、異文化交流は色々やっかいだ。


 こうして、俺達の新たな、恋人(仮)としての一日が始まった。

恋人仮免許に落ち着いた二人。

恋人との差がわからない咲太と、それはそれで嬉しげなミアとの一幕でした。


次は部活の話か、昔の想い出の話でもやろうかと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] こういう文化って、ヨーロッパでも、ラテンと北欧で全然違うんだろうし、ロシアも違いそうですよね。アメリカも似て非なるものだったりしそう。 国の中でも、多分差があるんだろうなあ。同調圧力高いけど…
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