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想い続けた異国の少女と二人の約束  作者: 久野真一
第2章 学園生活の始まり
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第8話 いわゆるデーティング期間

部活の話から始まって、話が急展開していきます。

「うーーーーーーーーーーーーーーん……」


 デートの翌日の事。

 あっという間にクラスに馴染んだミアは、うんうん唸っていた。


咲太(さくた)。ミアさん、一体どうしたの?」


 さっきから唸っているので気になったらしい。

 絵里(えり)の奴が尋ねてくる。

 しかし、何故俺を経由するんだ。


「どの部活に入るかで悩んでるんだよ」

「ということは、あっち(スイス)は部活がなかったの?」

「らしい。だから、アニメで見るような部活に憧れてたんだと」

「意外ね。ミアさんなら、てっきり咲太の部活に入ると思ってた」


 その答えに俺は渋い顔になる。

 俺の所属している部活は海外同好会。

 なんだそりゃと言われそうな部活だ。

 日本以外の国とか食べ物とか色々について、語ったり食べたりするだけの部活。

 俺の場合は、ミアの事がきっかけで入ったのだけど。


「ミアは、どっちかというと、いかにも日本、て部活に入りたいんだと」


 正直、うちの部活に誘えば来てくれるんじゃないかという期待はある。

 しかし、ミアの希望を遮ってまでというのも違う気がする。

 だから、その事は言えていない。


「いかにも日本な部活ね……茶道部とか、華道部辺り?」

「定番っちゃ定番だな。俺は、あの辺近づきたくないんだけどな」


 特に、華道部の女子率は異様に高い。

 そして、クラス女子とは違う妙な独自文化があるので近寄りがたいのだ。


「華道部の子に刺されるから大きな声で言わない方がいいわよ」

「わかってるって。他は何があるだろうな」


 少し、思考を巡らせてみる。

 漫画研究会なんかも日本ぽいかもしれない。

 あとは……。


「ゲーム部もなんか日本ぽくないか?」


 会話に割り込んで来たのは隼人(はやと)

 まさにゲーム部所属の当人である。

 

「悪い意味でなんか日本ぽいけどな」

「おいおい、なんだよその視線は。ゲームだって立派な部活だろうよ」

「いやいや、部費でテレビゲーム買えるとか絶対間違ってるつうの」


 ゲーム部は読んで字の如く、ゲームをする部活だ。

 ゲームについて語りあう部活ではない。

 ちゃんと部費を使ってゲームを購入してるのはおかしい。


「そこは、eスポーツって言い訳があるからな」


 不敵な笑みを浮かべる隼人。


「eスポーツ真剣にやってる奴、お前んとこほとんど居ないだろーに」


 ゲーム部が部費を獲得できる理由は単純。

 先代部長が、eスポーツで有名な選手だったのだ。

 そして、弁舌でもってeスポーツも立派な競技なのだから、テレビゲームも部費で買えるべきだと詭弁を押し通したと聞いている。

 置いてあるゲームのほとんどがソロゲーなので、eスポーツ関係ないのだが。


「ゲーム部?」


 その声に振り向くと、ミアが興味ありげに俺たちを見ていた。


「ひょっとして、興味あるのか?ゲーム部」

「アリアリだよ!対戦型のもいっぱいあるわよね?」


 あ、そうか。勝負事が好きなこいつの性格を忘れていた。 


「あ、ああ。そりゃあるけど」

「え、ええと。ミアちゃんはひょっとして……」


 しかし、あまりにも食い気味なミアに、俺も隼人も戸惑い気味だ。


「私、決めた!ゲーム部にする!」


 即決即断もいいところだ。


「あ、あのさ、ミア。ゲーム部じゃなくて、うち……」


 と言いそうになって、はっとした。

 今、俺は何を言おうとした。ゲーム部じゃなくて、こっちに来てくれ?

 そんな、一緒に居たいから、みたいなアピールを……?

 少し頭を冷やそう。


「せっかくだから、咲太も一緒にゲーム部に入りましょ?」


 ん?何か話が変な方向に流れてるような。


「隼人君。確か、ここって兼部がOKなのよね?」

「あ、ああ。そうだけど」


 話をどんどん進めていくミア。

 俺も隼人も戸惑うしかない。


「だったら、今の部活と兼部すればOKじゃない。どう?」


 いや、どうと言われても。

 一緒の部活で活動したいと思ってもらえるのは嬉しい。

 だけど、唐突過ぎて、意図が掴めなかった。


「別に駄目ってわけじゃないけど、急にどうしたんだ?」


 ミアは悪戯好きではあっても、強引な事はあまりしない。

 だからこそ、戸惑ってしまう。


「だって、さっき、咲太は、言いかけたでしょ?」

「いや、その、あれは……」


 途中で慌てて引っ込めたが、聞こえてたのか。

 そして、ふふふ、と不気味な笑い。


「咲太、やっぱり可愛いところあるわよね♪」


 妙にご機嫌になったミアが、飛びつくように抱きついて来た。

 さらに、ほっぺに冷たい感触が……って、キス?

 空港と違って、クラスメイトが眺めているところで。

 顔から火が出そうに恥ずかしい。


「なーんだ。やっぱり、咲太君とミアちゃんデキてたんじゃない」

「ミアちゃんはフリーだとか言ってた癖にな」

「親友だってのも、照れ隠しだったんだねー」


 などと、皆、何やら微笑ましげに俺たちを見ている。


「おい、ミア。離れろって。日本だと軽々しくハグはしないし、ほっぺにキスもしないんだ」


 自覚なくやったんだろう、と俺はミアに言い聞かせようとする。


「咲太、私の事バカにしてる?そんな事はわかってるよ」


 え?どういうことだ?


「じゃ、じゃあ。やっぱり、ミアは俺の事が……」

「昨日、言ったでしょ?少しはって」


 照れくさそうな声に、昨日のやり取りを思い出す。

 確かに、少し好きとは言っていたけど。


「でも、周りの奴らは勘違いするだろ」

「私は別に勘違いされても気にしないよ?」


 何やらまた悪さを思いついた時の顔のミア。


 どういうことだ?男として意識してるし、少しは好きな気持ちもある。

 付き合ってると誤解されてもいいとも思ってる。

 でも、昨日の回答からするに、すぐにお付き合いしたいわけじゃないみたいだし。

 そうか。告白してお付き合いしましょう、という前提が間違いなのだ。

 思い出した。

 でも、この状態は一体どういうことなんだ?

 ほんとに、さっぱりわからん。


「なあ、俺たちは付き合ってる、のか?」

「どうなのかな?デーティング、だと思う、よ?」


 ミアの口からまさにその単語が出た時、俺は大きな衝撃を受けていた。

 やっぱり、ヨーロッパでは告白してお付き合いではないのだと。


「でも、なんで疑問形?」

「だって、私も、こんなの初めてだもの」

 

 顔を赤らめて、なんとも可愛らしい事を言ってくれる。

 ウルウルと俺を見つめる瞳がとても綺麗に思えてくる。 


「その、さ。デーティングっていつまでなんだ?」

 

 ミアが候補としてでも俺を選んでくれたのは嬉しい。 

 でも、俺自身が、曖昧な関係はひどく落ち着かない。


「……お互いが、恋人として正式にやっていけそうと思うまで、かな」


 その言葉に、俺は胸をグサっと刺された気がした。

 つまり、そこまでは()()わからないということなのだ。


「正直、凄く落ち着かないんだが」

「じゃあ、私を安心させて欲しい♪」


 その笑みは、俺には悪魔の笑みのように思えた。


「安心ってなんだよ、安心って」

「じゃあ、クイズ」

「おまえな……」

「ヒント。私はスイス人だけど、日本生まれ、日本育ちだよ」

「んん?どういうことだ?」

「これ以上はヒントはあげないよ」

「生まれて初めて、ミアが性悪女に見えて来たよ……」

「咲太も失礼なこと言うよね」


 不機嫌そうな表情を向けてくるミア。

 ただ、もう一つだけ聞いておきたいことがあった。


「デーティング期間って他の人とも付き合いありなんだよな」

「そういう人もいるわね」

「俺は色々な意味で嫌なんだけど」


 俺とデートしてる横で他の奴とも……なんて耐えられそうにない。


「私も同じよ。初めて好きになったのに、他の人ともなんてイヤ」


 その言葉に少しホッとする。なら、前に進める。


「じゃあ、これから。改めてよろしく、ミア」

「うん、よろしく。咲太♪」


 こうして、俺達はカップル(仮)という間柄になったのだった。

ここからがある意味で本当の始まりです。

彼女の約束、とは?そして、不可解なデーティング期間の真意は?

てな感じのお話が展開していきます。


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― 新着の感想 ―
[一言] そこは、判ってやれ、と。下手に外国の知識があるからいけないんだなあ。 彼を部活に引っ張り込んだのもGJかな。そうでなかったらオタサーの姫一直線。 でも、そも日本での告白文化っていつからある…
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