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想い続けた異国の少女と二人の約束  作者: 久野真一
第4章 本当の恋人
16/17

第16話 恋人同士のデートと一日の終わり

短編投下とかで、ちょい遅くなってましたが、更新再開です。

 昼休みが終わった後の午後の授業。

 俺は、昼休みのイチャイチャを思い返していた。


(ミア、可愛かったな……)


 お互い、思う存分抱き合ったりキスしたりして、ご飯を食べ忘れるくらい夢中だった。ふと、隣のミアを見ると、早くも授業に頭を切り替えているのか、真面目な顔になっている。メリハリがきっちりしているのはミアの美点だけど、今は少しだけ寂しくなる。


【なあ、ミア。放課後、デートしないか?】


 授業を聞いている振りをしながら、素早くそんなメッセージを送信。

 ヴー、ヴー。バイブレーションの音に気がついたのか、はっとなるミア。

 見る見る内に、真面目な顔つきがだらーんとした顔付きに変化んする。


【うん。行きたい!放課後、デート行こ?】


 ちらちらと俺の方を見ながらメッセージを打ち込んでいるミア。

 

【よし。じゃあ、約束な。場所、考えておくから】


 それだけを送信して、授業に意識を戻す。

 俺も少しはメリハリをつけないとな。

 と思ったら、今度は俺のスマホからヴー、ヴー、と音が。


【ここ、行きたい】


 送って来たメッセージにあったリンクを開くと、渋谷辺りにあるネカフェだった。

 何故、ネカフェ?と思ったものの、見ると理由はすぐわかった。

 カップル用の個室があるのだ。


【こういう、個室式のネカフェってスイスには無いのか?】

【ネットが使えるところはいっぱいあるけど。こういうのは全然よ?】


 なるほど。それで、日本らしくて、しかも狭い個室でイチャつける場所を、と。

 て、これはかなりいいアイデアじゃないか?

 もちろん、自宅で二人っきりになるのはいつでも可能だ。

 でも、暗いネカフェで二人っきり。なんだか特別感がある。


 こうして、午後の授業にもイマイチ身が入らないまま過ごしたのだった。

 ちなみに、ミアはといえば、珍しく切り替えがうまく行っていないらしい。


 というわけで、放課後になった俺とミアは渋谷に直行。

 『ウェスタンカフェ』というネカフェで、アメリカ西海岸をイメージしたらしい。


「うわぁ。すっごく綺麗ね!」


 入り口から中に入ると、そこは やけにオシャレな受付。

 小物や飾り付けなどを見ても、女性客やカップルを意識しているのは明らかだ。

 移動時間を考えて、2時間だけ部屋を借りて、二人で完全個室の部屋に入る。


 清潔感の溢れる個室に、フラットなシート。やや大きめの液晶ディスプレイ。

 

「なんか、ネカフェのイメージと全然違うな」

「そうなの?」


 どうやら直感で選んだらしく、普通のネカフェと違う事に気づいてないらしい。


「ああ。普通のネカフェってさ、もうちょっと暑苦しかったり、狭苦しかったりするんだよ。でもって、こんなお洒落じゃない」


 何度か使ってみたことがあるけど、こういうお洒落ネカフェは初めてだ。


「でも、ここなら、ゆったりできそう……!映画も見られるのね!?」

「ああ、そういうのは時々あるな。何か見たいのあるか?」


 どうやら、ブルーレイディスクを貸し出しているらしく、PCにあるブルーレイドライブに挿入すれば視聴できるらしい。大きめの液晶ディスプレイもきっとこれを意識したんだろう。


「あ、これ。向こうだと見られなかったのよ!」


 指差したのは、5年以上前に一世を風靡したらしい魔法少女アニメの劇場版。

 俺は後で見た組なのだが、最初、普通のお子様向け魔法少女アニメを装っていただけに、3話以降の衝撃的な展開に話題が沸騰したと聞いている。


「じゃあ、見るか。俺も結局、劇場版は見てないんだよな」


 元々、そこまで熱心なアニメファンでもないのだ。

 でも、劇場版も凄いらしいとは以前聞いていた。


 というわけで、ブルーレイを受付で借りてきて、早速再生する。

 個室の電気も落として、いよいよ雰囲気は劇場といったところだ。


「あれ、綺麗に終わったから、続き、ずっと気になってたのよね」

「まあ、確かに綺麗に終わったよな。一体、何があるんだか」


 そんな会話を交わしていると、頭を肩に預けてくる。

 くっ。なんとも可愛らしい。


「あれ?主人公の女の子……確か、最終話で消えたと思ったのだけど」

「だよな。なんだろ」


 冒頭からいきなり違和感のある開始だ。

 確か、主人公はアニメ最終話でなんやかやあって消えたはず。

 それが、堂々と一家団欒をしている。

 

「でも、絶対、何か仕掛けがあるわよね?」

「だろうな。絶対、意地悪い話だぜ」


 アニメ版はとりわけ、制作側の意地の悪い仕掛けが話題になった作品だ。

 きっと、劇場版でも何かしらの仕掛けをやっているんだろう。


「しかし、さ……」

「どしたの?」

「このアニメって確かに、日本で話題になったけど、そっちでも配信してたのか?」


 少し前のスイスのアニメ事情というのは本人から聞いたことがある。

 向こうでも普通に見られるのは多くが10年以上前の作品。

 この作品みたいな深夜枠の作品は、簡単には見られないと聞いていたが。


「最近は、NETFLIXで普通に配信してるわよ?」

「へえ、そういうもんなのか」

「劇場版だけはまだなんだけどね」

「ミアみたいなアニメ好きにとってはありがたい状況だな」

「今は日本だから、普通に見られるけどね」


 そんな会話を交わしながら、どこか仄暗い雰囲気の漂う話を眺める。

 しかし、アニメ版もそうだったけど、どうにも憂鬱な気分になってくる。

 隣のミアをみると、なんだかうっとりしているけど。


 そして、色々などんでん返しがあった後のラストシーン。

 唖然とする衝撃的なラストで映画は終わったのだった。


「あの、最後のシーンってどう解釈すればいいのかしら」

「どうだろ。後追い自殺、とか?」


 主人公「だった」魔法少女の友人が闇に消えていくラスト。

 見ようによっては投身自殺にも見える。


「まあ、面白かったけど。何度も見たい話じゃないな」

「そうね。後で考察サイト読んでみようかしら」

 

 何かを考え込んだ様子で言うミア。


 そんなこんなで、ネカフェデートを満喫した俺たち。


「あー、もう、すっかり夕方だな」

「今日は時間が過ぎるのがすっごく早かったわ」

「ほんと、色々有り過ぎたよな」


 ミアを起こしに行くところから始まって、どれだけ二人の時間を過ごしただろう。

 平日の、普通に学校がある日だというのに。


「でも、明日も、明後日も、こんな日々が続くのね」

「まあ、少なくとも、高校を卒業するまではな」


 それまで、まだ1年半もある。


「そういえば、「約束」の話なんだけどさ」

「何かわかった?」

「いや、全然。恋人になるとか、そういう系の約束じゃないと思うんだよな」


 俺が覚えている「約束」の風景には、そんなものはない。

 大体、それなら既に叶ってしまっているのだ。


「そうね。ちょっとクイズとしては難しかったかしら」

「もうちょいヒントくれよ」


 少なくとも、大切な約束なのは間違いないはずなんだけど。


「それじゃあ、もう一つヒント。「進路」」

「それが、スイスから日本に戻ってきた理由に関係してると?」

「いくら私でも、咲太に会いたいだけで、衝動的にこっち来たわけじゃないのよ?」

「自分で言ってりゃ世話ないだろ」


 しかし、進路、ねえ。


「まあ、もうちょっと考えてみる」

「そうしてみて?時間はまだまだいっぱいあるのだし」

「ああ」

 

 渋谷の街の中を、肩を寄せ合い、俺達は仲良く家路についたのだった。

 彼女の謎掛けの意味を考えながら。

年末年始は、数話くらいは更新できればと思っています。


引き続き、応援してくださる方はよろしくお願いしますー。

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― 新着の感想 ―
[一言] これが、授業中にラインを使うという、今どきの学生ですか… うちの子供の学校は、登校後回収だったなあ。ずいぶん学校によって違うのでしょうね。化粧やアクセ、なんていうのも理解の範囲外だし(少なく…
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