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想い続けた異国の少女と二人の約束  作者: 久野真一
第4章 本当の恋人
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第15話 空き教室で二人きり……

二人きりの空き教室での色々です。

 お昼休みに二人きり。空き教室で。

 あれこれ考えてしまい、授業に身が入らない。

 隣のミアはというと、真面目な顔で世界史の授業を受けている。

 切り替えがきっちりしてるんだよな、ほんと。


「1488年、ポルトガル人のバルトロメウ・ディアスが到達したとされているのがアフリカ南端に近い喜望峰きぼうほうだが、この歴史的意義はどのようなものか。答えられる者はいるか?」


 厳しい顔付きの世界史教師が教室を見渡して尋ねてくる。

 こういう記述式に似た問いは答えたがらないので、教室はしーんとするのだが、

 一人だけ「はい!」と答えた奴が居た。ミアだ。


「喜望峰は、ポルトガルからインド洋への途中となる道ですが、ディアスの喜望峰発見をきっかけに、ポルトガルによるインド洋航路の開拓が始まりました。言い換えれば、ポルトガルによるインド進出の先駆けになったとも言えるでしょう」


 淀みなく、すらすらと答えを述べるミア。単なる模範回答ではなく、ミア自身の言葉で答えているのが舌を巻くところだ。


「確かにその通り。他の意義もあるが、ポルトガルのインド、ひいてはアジア進出の先駆けになったという意義は非常に大きなものだろう」


 満足そうに答えた教師に、相変わらず畏敬の目で見ているクラスメイトだった。

 恋に全力で、でも、他のことにも勝負にも全力。

 昔からそうだったけど、改めてこいつの凄さを実感したのだった。


(それに比べて……)


 俺は切り替えがうまくない、と少し自己嫌悪。


◇◇◇◇

 

 お昼になった俺達は4階にあるという空き教室に移動する。

 しかし、記憶が確かなら、あそこは……って、やっぱり。


「ここ、自習室だろ。申請要るんじゃないのか?」


 もちろん、空き教室といえば空き教室だ。

 しかし、事前の申請が要るはず。


「大丈夫。休み時間の間に、秋ちゃんに提出してきたわよ」


 事もなさげに担任教師の(あき)ちゃんに申請済みだと宣うミア。

 いや、うん、許可を取る必要があるのは、全くその通り。

 と一人考えていると、自習室に鍵をかちゃりとかける音が聞こえた。


「お、おい。ミア。鍵かけたってことは……」

「二人きりになりたかったんだもの。当然でしょ?」


 赤い顔をして、なんとも健気で嬉しいことを言ってくれる。

 俺も、恥ずかしがってばかりじゃ居られないな。

 トコトコと近づいて、背中から手を回して抱きしめる。


「さ、咲太?」


 ミアの声は少し慌てていた様子だった。

 俺とミアの背丈は同じくらい。

 だから、胸元に抱き寄せられないのが少し残念。

 でも、これだけでも十分彼女を感じられる。


「お前にばっかり愛情表現させてるだろ。不公平だと思ったんだよ」

 

 不公平とは、我ながら表現がうまくない。

 でも、こうまでしてくれる可愛い彼女に応えない道はないだろう。


「そうなのね。じゃあ、私も。大好きよ咲太(さくた)


 抱き合っているから表情は見えない。でも、とても嬉しそうな声。

 しかし、大好きって、ミアからは初めて聞いた言葉だな。


「ああ、俺も大好きだぞ、ミア。ずっと、こうなりたかった」


 俺も同じような言葉を返す。

 いつか再会出来て、恋人になれれば。それはずっと思っていたこと。


「うん。知ってる。お母様からいっぱい聞いたもの」


 その言葉に、少し俺は渋い表情になってしまう。

 そういうのは、俺から直接言いたかったんだけどなあ。

 まあいいか。気にせず、背中を優しく撫でる。


「ん……それ、気持ちいい♪」


 言いながら、同じようにミアも背中を撫でてくる。


「ああ……俺も」


 こうして抱き合っていると、どんどん愛しい気持ちが強くなっていく。

 ふと、少し身体を離したかと思えば、今度は胸元に頭を押し付けてきた。


「こっちだと、なんか、ミアが年下みたいだな」

「ん……」


 すんすん、と音がする。


「また、俺の匂いを嗅いでるのか?」

「うん。好きな匂いだから」


 すんすんと鼻を鳴らしながら、甘い声で囁かれる。


「別に普通だと思うんだけどなあ」

「じゃあ、今度は咲太が私の匂い嗅いでみて?」

「あ、ああ……」


 戸惑いつつも、首元の匂いをすんすんと嗅いでみる。

 

「すっごいいい匂いがするけど、シャンプー?」

「香水。ちょっとつけてみたの」

「ああ。似合ってると思うぞ」


 ラベンダーだったっけ。種類はわからないけど、花の香りがする。

 嗅いでいると、どこか色っぽい感じがして、ミアによく似合っている。


 ふと、彼女に銀髪を優しく撫でてみる。


「ん……それ、気持ちいい」


 胸元にいるミアを見ると、日向ぼっこをしている猫のよう。

 この流れなら、してもいいだろうか。

 今朝の「今度は、俺からのキスを」というのを思い出す。


 再度、身体を離して、ええと、この先は。

 ぎこちなく、頬に手を伸ばす。

 察したのか、なにかを待つようにミアはじっと目を閉じてくれた。

 シミ一つ無い色白の肌に、子どもぽい顔つき。自慢の銀髪。瑞々しい唇。


 ちゅ。と、まずはゆっくりとキス。やっぱり気持ちいい。

 もう少し楽しもうと、お互いに唇を啄みあう。

 あ、呼吸も忘れないようにしないと、と、鼻から空気も取り入れる。

 そんな風にして、キスし合うこと数分。


「……」


 ミアは完全に恍惚とした表情になっていた。


「で、俺からキスしてみたけど、どうだった?」

「言わなくてもわかるでしょ?」

「俺だって時には言って欲しい」

「すっごく良かった。もっとしたい!」


 その言葉で、俺達はキスを再開。


「あ、でも。キスの先はまだ準備が出来てないから……」

「いや、俺もそこまでがっつかないから」


 何より、俺自身の心の準備が出来ていないのだ。

 キスの先とかまだまだ考えられない。


 こうして、二人きりの教室でイチャイチャを楽しんだ俺たち。

 あ、昼ごはん食べるの忘れてた……。

付き合って初日かと言える程のイチャイチャは止まりません。

次もまたイチャイチャしてそうな二人です。


というわけで、初々しいような、そうでないような二人を応援してくださる方は

感想などいただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] さすがに、これは教室ではできない… しかし、お弁当食べ忘れるとは、どれだけ長い時間いちゃいちゃしていたんだよ、って。 そういう時間は過ぎるのが速いのか。
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