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想い続けた異国の少女と二人の約束  作者: 久野真一
第4章 本当の恋人
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第14話 いちゃいちゃはどこまでOK?

 

(キス、か……)


 朝の教室で、俺は今朝の記憶を反芻していた。

 思い出すのはキスのこと。今度は俺から、と約束してしまったけど。

 どういうタイミングですればいいんだろう。


「?」


 授業の予習をしていた隣のミアと、ふと目が合う。


「……♪」


 にっこりと笑い返される。


 くそ、かわいいなあ、もう。

 そんな事を思いながら、見つめ返す。

 今度はふにゃっと幸せそうな顔になる。


 ああ、かわいいなあ、もう。

 ふと、机の上に置いた手の甲に、温もりを感じる。

 見ると、ミアが手を重ねていた。

 つられて、もう片方の手をさらに重ねる。

 俺たち、恥ずかしいことしてるなあ、と思う。


(もうちょっと、してもいいか?)


 勇気をだして、ミアを俺の方に少し抱き寄せる。

 すると、こつんと頭を倒してくる。


「こうしてるの、とっても幸せね」

「ああ、幸せだな」


 どこか、呆けた台詞を交わしている俺達。

 なんだか、いい雰囲気だ。いっそのことーそう思った時だった。


「咲太。これ以上は、教室では止めて欲しいんだけど」


 冷たい声が降り注ぐ。声の方向を見ると、絵里(えり)が視線を送っていた。

 って、


「わ、悪い……つい」


 慌てて、ミアと距離を取る。危ない、危ない。雰囲気に流されるところだった。

 周りを見ると、興味深そうに観察してる勢に、目をそらしている勢。

 そして、白けた視線を送っている勢に分かれていた。


「それに、ミアちゃんも。嬉しいのはわかるけど、教室ではもうちょっと、ね?」


 不満そうなミアに対して、絵里は諭すように言う。


「……ごめんなさい。気分が盛り上がっちゃって、つい」


 ミアも分が悪いと思ったのか素直に謝罪。


「分かってくれればいいんだけどね。でも、スイスだと教室でさっきみたいにいちゃつくのも普通なの?」


 そういえば、どうなんだろうか。


「ううん。スイスでも、ここまでしたらちょっとやり過ぎかな」


 いくらか冷静になった声色でミアが言う。


「やっぱり、そうよね。いくら何でも変だと思ったもの」


 うんうん、と納得顔の絵里。


「まあ、俺も悪かった。色々」


 嬉しさの余り冷静じゃなかった事を少し恥じる。


「ほんとにね。普段、シャイな癖にどうしたんだか」

「いや、ほんとに言葉もない」


 雰囲気に流されたと言ってしまえばそれまでだ。

 でも、教室ではもう少しくらい慎みを持つべきだろう。


「俺はいいと思うけどな。昨日だって、愛妻弁当を「あーん」してたしよ」


 割り込んで来た隼人(はやと)はといえば、何やら面白がっている。


「あれも大概だと思うけどね。さっきは止めてなかったらどこまで行ってたか……」


 絵里の言葉が胸にグサっと突き刺さる。


「いや、ほんと悪かった。これからは、教室ではもうちょい控えるから」

「うん。私も。もうちょっと控えるから」


 二人揃って小さくなってペコペコする。


「教室ではもうちょっと控えてってだけだから。あんまり気にしすぎないで?」


 絵里も言い過ぎたと思ったのか、そんな風にして場を締めくくったのだった。


「ねえ、咲太」

「どした、ミア」


 絵里達が去った直後、ミアが話しかけてきた。


「今日のお昼は、その、二人きりになれるところに行かない?」


 どこか気恥ずかしげな、お誘いの言葉。

 俺はといえば胸がドキドキだ。


「あ、ああ、行こう。でも、どこがいいだろな……」


 普段使われていない教室?

 それとも、中庭の隅っこ?

 あるいは、校舎裏?


「4階の端っこに、誰も使ってない部屋があるって聞いたのだけど……」

「あのさ、ミア。嬉しいんだけど、積極的過ぎないか?」


 なんで、早くもそんな所リサーチしてるんだよ。


「咲太はイチャイチャしたくないの?」

「いや、もちろんしたいけど……」


 ミアの大攻勢に、今朝の出来事を思い出す。

 もちろん、俺だってイチャイチャしたい。

 でも、ミアのそれは俺のを遥かに上回っているように見える。


「けど?何か引っかかってるの?」


 何か悩みでもあるの?とばかりの言葉。

 そうじゃなくて……、あれ?別に拒む理由もないな。

 

「悪い。なんか、恥ずかしい気持ちが抜けてないだけみたいだ」


 結局はそれだけの事だと、改めて気がつく。


「そういうシャイなところも好きだけど……別に遠慮しないでいいのよ?」


 遠慮、か。そんなつもりはなかったけど、そういう風にも見えるか。


「わかった。そこら辺は、出来るだけ考えないようにしてみる」


 正直、ゆっくりペースでいいと思っていたけど。

 ミアがそれを望むなら、俺だって。


「期待してるわね?」

 

 と、悪戯っぽく笑うミア。

 さしあたっては、今日のお昼か。

 ほんと、振り回されっぱなしだ。

というわけで、教室で暴走し過ぎて諌められる二人でした。

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