表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
想い続けた異国の少女と二人の約束  作者: 久野真一
第4章 本当の恋人
13/17

第13話 恋人(真)との朝の一幕

「あー、いい寝覚めだ」


 昨夜、改めて正式な恋人になった俺とミア。

 胸のつっかえが取れた気分で、すっきり眠ることが出来た。

 起きて歯を磨いて、顔を洗って、鏡を見る。

 って、凄い俺がにやけてる。

 顔をキリっとした感じにしようとするけど、どうしても緩んでしまう。

 

(彼女に、なったんだよなあ。ミアが)


 昨夜はまだ実感が湧かなかったけど、ようやく気持ちが追いついて来た。

 また、キスをしたいとか、色々煩悩が浮かんでしまう。


(駄目だ、駄目だ)


 浮かれすぎだろう、俺。

 しかし、ミアの気配がしないな。

 この時間には、起きてる事が多いのに。


(まだ、寝てるのか?)


 少し、不審に思いながら、1階に降りる。


「あら、おはよう、咲太(さくた)。なんだか嬉しそうね?」

 

 ダイニングでは、母さんが朝食の支度をしているところだった。


「おはよう、母さん。まあ、な」


 内心、嬉しくてしょうがない。でも、平静を装う。


「無理に真面目な顔しないでもいいのよ?」


 愉快そうな顔で母さんが言う。


「浮かれすぎるのも引くだろ。ミアが」


 昨夜の様子を見ると俺以上に浮かれてるかもだが。


「ミアちゃんがそういう娘じゃないの、咲太はよく知ってるでしょ?」


 途端、顔を優しげなものに変えて、諭すように言う母さん。


「そりゃな。すっごい嬉しそうだったし。ところで、母さん」

「どうしたのよ?」

「昨夜、ミアに俺がその、片想いしてたこと伝えただろ」

「ああ、ミアちゃんから聞いたのね?それくらいいいでしょ」

「ま、きっかけになったからいいんだけど。何話したんだ?」


 食事の最中に何気なくこぼした一言だろうか。

 グリーティングカードを送った時の話だろうか。

 覚えが有り過ぎるのも困りものだ。


「内緒。ミアちゃんとの約束だもの」

「母さんまでか……。恥ずかしすぎるんだけど」


 色々、もにょもにょする。


「ところで、ミアちゃんはまだなのね」


 何か含みがありそうな言い方だ。


「母さん。何がいいたい?」


 また、変な事でも考えてるんじゃないだろうな。


「せっかくだから、起こして来てあげたらどう?」


 は?何を言ってるんだ、この人は。


「いくら何でも、それはちょっと」


 朝から異性の部屋に突撃は……。


「大丈夫よ。ミアちゃんもきっと待ってるから。行っておあげなさいって」


 なおも起こしに行く方向で推す我が母親。


「なーんか怪しいんだよな、今朝の母さん」


 どうにも、色々芝居がかった仕草が目につく。


「怪しくても何でも。私から頼まれたって言えば大丈夫だから」


 そこまで推すか。でも、そういう言い訳があるなら。


「わかった、起こしてくるよ」


 何を企んているのやらと思いつつ、2階に戻る。

 ピンクのネームプレートに「Mia」と書いてある。


 コンコン。まずはノックをしてみる。返事がない。

 コンコンコン。再びノックしてみる。返事がない。


「入るぞ」


 意を決して、ミアの部屋の扉を開ける。

 そこに居たのはなんとも可愛らしい寝姿の彼女。

 身体に似合わない、子どもっぽい寝顔がとても可愛い。

 それでいて、ネグリジェから覗く肌は色香十分だ。


「おーい、朝だぞー。ミア、朝」


 控えめに言って、揺さぶるが起きる気配はない。


「うーん……。あと、5分……」


 なんともお約束な台詞だ。よっぽど好きなシチュなのか?


「朝だって。そろそろ朝食出来るぞ?」


 再びグラグラと揺さぶるも起きる気配なし。なんか変だな?


「キス、してくれたら、起きる、よー」


 確信した。こいつ、狸寝入りだ。

 しかも、目覚めのキスを所望と。

 恋人初心者の俺にはちょいと荷が重い。


「……」


 今はちゃんとした恋人同士。

 それに、ミアから求めてきてくれる。

 だから、戸惑う理由はないのだけど。


「なにか癪だ」


 だいたい、ミアに振り回されっぱなしじゃないか?

 こう、上手いこと意趣返し出来るような何かは……。

 と考えていて、いいアイデアを思いついた。


「じゃ、じゃあ。キス、するからな」


 あえて聞こえるようにして言う。

 瞼がピクピク動いているのを見て笑ってしまう。

 

 ぴと。


 と、人差し指をミアの唇に当てた。

 俺が思いついたのは、こういうことだった。

 たまには、俺から悪戯してもバチは当たらないだろう。


「んー」


 と思っていたら。何やら背筋がぞくっとする。

 舌が人差し指を這い回る感触が。

 しかも、なんだか吸い付くような感じもするし。

 

「ちょ、ストップ、ストップ」


 妙な感触に耐えきれずに俺はあっさりギブアップ。

 気がつくと、不満そうな視線でミアが俺を睨んでいた。


「いや、悪かった。ちょっとした出来心だったんだよ」


 俺は平謝りだ。


「私は、本当にキス、したかったのに」


 そう言われるとこっちも罪悪感が湧いてくる。


「ど、どうすればいい?」


 恋人になった次の日にぎこちないのは避けたい。

 だから、許しを求めて言ったのだけど。


「じゃあ、やり直し」


 再び、目を閉じてミアは布団をかぶってしまう。

 そこまでして、フィクションのシチュを……。

 でも、まあ。俺が相手だからこそなんだよな。

 そう思うと、このくらい可愛いものに思えてくる。


 ちゅ。


 と、今度は本当に唇をゆっくりと重ねた。

 昨日はミアからだったけど、今朝は俺からだ。

 朝から恥ずかしいことしてるなあ、俺たち。

 キスをしながらぼーっとそんな事を考えてしまう。

 そして。


「おはよう、咲太」

 

 愛しい俺の彼女は、とても幸せそうな「おはよう」をくれたのだった。


◇◇◇◇


「で、結局、母さんとグルだったってわけか」


 今は登校中で、朝の真相をミアから聞いている。

 「咲太はシャイだから」

 ということで、母さんと共謀して一芝居打ったらしい。


「だって、咲太、こうでもしないと、キス、してくれないでしょ?」


 なんだかんだで、ミアもそれなりに恥ずかしかったらしい。

 顔を赤くしながら言う姿は可愛らしい。


「いやいや、そんな芝居しなくても、俺だって……」


 と言いつつも、少し反論しきれない。

 だって、恋人になったばかりなんだ。

 いつキスしていいかだってよくわからないものだろ?


「本当に?」


 疑わしげな瞳で見つめてくるミア。


「本当だって」


 内心、自信がない俺はつい言葉が弱くなってしまう。


「じゃあ、待ってるからね?」


 悪戯を思いついた時の顔だ。


「待ってるって……そのキスを、か?」


 それしか考えられないけど、戸惑ってしまう。


「そう。だったら、次はちゃんと、咲太の方からしてくれるよね?」

「わかった。約束だ」


 俺だって、もっと先に進みたいという気持ちはあるのだ。

 だから、「約束」をする。


「うん。約束。でも、楽しみ。いつ、してくれるのかなー」


 なんて、楽しそうな顔で言うミアはほんと憎たらしいやら何やら。

 そして、男らしく主導権を握りたいのが、翻弄されっぱなしで悔しい。

 でも、


(そんなのも俺たちらしいのかもな)

 

 なんて少しだけ思いながら、二人で手を繋いで登校したのだった。

咲太の母親とグルになって、襲おうとした(違)ミアと咲太の朝の一幕でした。

しかも、さらなる約束までさせられる始末。

咲太が男を見せられる日は来るのか?みたいな続きです。


感想など、お待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 学校でもさらにイチャイチャが… イチャイチャの許容範囲っていうのも、国柄があるのかしら
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ