エナジードリンクの歴史
現時点に於いて、エナジードリンクの定義とされているものは
◎カフェインやエネキストラ等の、覚醒効果が認められている成分が配合されているもの
◎ビタミンB群、アミノ酸等の栄養成分が配合されているもの
◎基本的には炭酸飲料
の3点と言って良いでしょう。
従って、日本でエナジードリンクの元祖的な位置付けにある栄養炭酸飲料の代表格である「オロナミンC」や「リアルゴールド」にはカフェインが配合されず、アメリカで覚醒効果の炭酸飲料として世界にその名を轟かせている「コカ・コーラ」、「ドクターペッパー」、「マウンテンデュー」にはビタミンやアミノ酸等の栄養成分が配合されていない点を考慮し、本エッセイに於いてはエナジードリンクとして扱わない事をお詫びさせていただきます。
さて、それでは現代に於けるエナジードリンクの元祖とは何なのかを考えた結果、それは1978年にタイで開発された「グラティン・デーン」となるでしょう。
元来医薬品を開発していた、タイのTCファーマシューティカル・インダストリーが、当時タイでも圧倒的なシェアを誇っていた日本の栄養ドリンク「リポビタンD」をベースに、より飲みやすく、低価格で提供出来る栄養ドリンクとして開発したものです。
この「グラティン・デーン」に炭酸は含まれていないのですが、何故この商品がエナジードリンクの元祖として知られているのか?
それは、この商品に目を付けたのが、オーストリア人のディートリッヒ・マテシッツ。
後のレッドブル社の創業者の1人だったからなのです。
マテシッツは自国で「グラティン・デーン」を世界販売する為に改良を重ね、「レッドブル」が完成しました。
「シャーク」を始めとして、日本のエナジードリンク愛好家の間でも知られているタイのエナジードリンクですが、エナジードリンクの本家としてリスペクトしなくてはいけない国の様ですね。
ありがたやありがたや。
日本にエナジードリンクが参入したのは2005年、「レッドブル」の上陸がきっかけですが、当時は内容量の割に高価な価格と、「オロナミンC」にも劣る栄養成分のせいで国内シェアが不安視されていました。
そのハンデを跳ね返したのは余りにも有名なCM戦略。
「翼をさずける」のキャッチコピーの下、ネガティブな意味での「頑張らなくちゃ……」という利用法では無く、「遊びの前にテンションを上げよう」という意図も窺える優れたセンスで、「オロナミンC」や「リアルゴールド」とは違う、自分達の世代のリフレッシュ飲料を求める若者世代を中心にシェアを確保する事に成功します。
そして、エナジードリンクが日本に完全定着するきっかけとなったのは、アメリカから上陸した「モンスターエナジー」が2012年に販売される様になった事。
「モンスターエナジー」には、「レッドブル」の難点であった内容量の少なさをフォローする大容量と、日本人の炭酸飲料愛好家の密かな願望であった、「身体に悪そうなものが敢えて飲みたい。日本製では無い、アメリカ製のコーラやドクペにある、あのケミカル感……」の渇望を満たすハッキリとした濃い味がありました。
両者の成功を見せ付けられた国内メーカーは、こぞってエナジードリンク開発競争を行いましたが、ある者は討ち死に、またある者は討ち死に……(笑)と、なかなか海外発のエナジードリンクに対抗出来ない時代が続きます。
現在では、「リポビタンD」開発者の意地からも負ける訳には行かない大正製薬の「RIZIN」シリーズや、後発ながらeーsports界とのタイアップによりスタートダッシュに成功した、サントリーの「ZONE」シリーズ等、群雄割拠のエナジードリンク戦国時代を迎えているのですね。
さて次回は、知っている様で知らない、エナジードリンクの栄養成分についてのお勉強です。