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コント 伝説の武器

作者: 春成 源貴

 上手からツッコミ(以下ツ)が現れる。


ツ「やっと辿り着いた。森の中を三日も歩くなんて聞いてなかったなぁ」


 上手からボケ(以下ボ)が現れる。

 ボは背中に懐中電灯を背負って足許を照らしたまま歩いている。


ツ「遅いよ。案内役のお前が遅いってどういうことだよ」

ボ「ごめん。足元が気になってさ」

ツ「そんなに道悪くないだろ……で、ここが例の場所か?」

ボ「そう、伝説の武器が神の樹に刺さっている場所さ」

ツ「ここがかぁ……なんでお前がこの場所を知ってるんだ?」

ボ「向こうにあるのが代々うちが管理する遊園地なんだ」

ツ「え?こんな所に遊園地なんかあっても誰も来ないだろう」

ボ「廃屋マニアが来るよ?」

ツ「それ、管理できてないじゃん」

ボ「まあ、とにかく、ここに刺さっている武器を抜くことが出来るのは勇者だけ」

ツ「そうだな。これを抜けば俺は真の勇者として世界征服を狙う魔王と戦うことが出来るんだ」

ボ「ああ我が家の言い伝えではな」

ツ「……前から気になってるんだけど、その背中の懐中電灯は何?」

ボ「え、お前知らないのか?……魔王は影の中に潜ることが出来るんだぜ。だから、影を消しておくんだよ」

ツ「あ、ああ……お前みたいな村人の影に潜むわけないと思うけど?」

ボ「でも、影が俺の動きをまねるように動くんだぜ」

ツ「当たり前だろ……足元ってこのことか」

ボ「おまけに時間が経つと前にいた影が少しずつ短くなって右側へ移るんだ」

ツ「それただの影だよ、もういいよ、で、武器はどこなんだ?」

ボ「言い伝えではこっちだ」

ツ「おお、あった。木の幹から柄の部分がでてるけど……なんかたくさんあるな?」

ボ「黒ひげ危機一発みたいだな」

ツ「いや、抜くんだけどな」

ボ「言い伝えではいくつかの種類の武器が埋まっているらしい。どれにする?」

ツ「そうだな、これにする」


 ツおもむろに柄に手を掛けてゆっくりと引き抜く


ツ「抜けたぞ……って……なんだこれ?」

ボ「おお、伝説の武器【勇者の棍棒】だ」

ツ「いや、これ金属バットじゃないの?」

ボ「勇者の棍棒だ」

ツ「どう見ても金属バットだよねこれ。しかもボコボコの……」

ボ「伝説の選手が使った、一流の証。一振りで打ち抜く最強の鈍器」

ツ「選手って言っちゃったよ。あと鈍器って言うな。うわっなんか少し滑るなぁ」

ボ「(スプレー缶を取り出し吹きかける)大丈夫だ」

ツ「それ野球の中継で見たことあるよ。なんだよ。バットで戦うのかよ」

ボ「文句が多いやつだな」

ツ「なんか違うんだよ。こう、剣とかさ。イメージ違うだろ」

ボ「ああ、刃物ね」

ツ「刃物言うな」

ボ「だったら他の武器にすればいいだろう。他の抜いてみろよ」

ツ「ああ、なるほど。でもいいのかな?」

ボ「いいんじゃねえの?」

ツ「軽いな。お前、少しどうでもよくなってるだろう」

ボ「べっつに~」

ツ「なんかむかつくな」


 ツ、バットをおいて別の柄に手を掛ける。


ツ「よし、抜けろ……なんだこれ?」

ボ「おお、伝説の剣じゃないか。やったな」

ツ「いや、これ短いよ」

ボ「伝説のナイフだな」

ツ「……包丁じゃね?」

ボ「ナイフ」

ツ「いや、しかも中華包丁……」

ボ「伝説の家政婦が使ったと言われる……」

ツ「せめて料理人じゃねえのかよ」

ボ「何でも細かく切れるという……」

ツ「食材ならな。ああもう……こんなんで戦えるわけないだろう。こんなの振り回したって勝てねえよ」

ボ「魔王の胸をめがけてえぐり込むように刺すべし」

ツ「届かねえよ。っていうか中華包丁だから刺さんねえよ」


 ツ、包丁を投げ捨てる。


ツ「本当に伝説の武器が眠ってるのか?」

ボ「弓とか?」

ツ「おお、いいな。あるのか?」

ボ「命中率30%の伝説の弓とか」

ツ「命中率低いな。ふつう100%とかだろ」

ボ「100%だと景品表示法にひっかかる……」

ツ「射的かよ。魔王が露店でもやってんのか?」

ボ「影の中でやってんのかな?」

ツ「いや、影の話はもういいよ」

ボ「文句が多いなあ。もう好きに抜けよ」

ツ「抜くよ、もう。……もっと攻撃力のある武器はないのか?」

ボ「これなんかどうだ?」

ツ「うん?えらくちっちゃいな。なんかの蓋みたいだな?」


 ツ引き抜く。


ツ「なんだ、これ。なんか液体が入った瓶か」

ボ「伝説の猛毒。伝説の主婦が使ったと言われる……」

ツ「暗殺者じゃねえのかよ。主婦って旦那にでも飲ましたのか」

ボ「お前怖いこと言うな。鼠だよ」

ツ「鼠かよ。なんだよ、伝説の主婦って。大体どうやって魔王に飲ませるんだよ」

ボ「攻撃力が高いから振りかけるだけでも効くぜ」

ツ「かけて使うのかよ。っていうか、ほんとに鼠に使ったのか?周りも溶けるんじゃねえの?」

ボ「だから大惨事だったらしいぜ」

ツ「それで伝説になったのかよ。ああ、もうろくな武器がねえな」

ボ「一番の攻撃力なんだぜ、それ」

ツ「(叫ぶように)ああ、もう、他にまともな武器はねえのかよ」


 ツ自分の影に向かって瓶を投げる。

 瓶の割れる音。

 影アナから魔王の声。


影「ギャーーーーー!」


 暗転。


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