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Ruin  作者: 結城
3/3

班員

藍が転入して1週間が経った。その間に学校について知らなかった彼は多くの事を学んだ。


まず、日本防共学校は大きく分けて3つの科がある。


1つはRuin研究から派生して作られた、異粒子間交換装置を使用・整備する人たちのための学科(装備科)だ。


この異粒子間交換装置は様々なタイプがあり、拳銃のように小型のものや、防御シールドを構築するもの、大砲のように超大型な物などがある。


現在の戦争ではこういった武器も勝敗を決める重要な要因となっている。


2つめに、普通のH粒子を持つ者のための学科(普通科)だ。


彼らもRuinを操作できるが、威力や汎用性など様々な点において特殊H粒子には劣っている。


しかし数が多いため先の戦争でも活躍しており、また数種類のタイプがあるが人に装備するRuinは従来の火器よりも扱いやすいために重宝されている。


そして3つめが僕のいる特殊H粒子を持つ者のための学科(特殊科)だ。


その内容などに関しては国家機密であるため極秘とされており、寮暮らしを余儀なくされている。普通科の中にも寮に入っている者もおり、制限が厳しすぎるわけでもない。


だが、特殊科のほぼ全員が問題点を抱えている問題児のためか距離が少し出来つつあった。


その中でも最も普通なのは青谷あおや そうだ。蒼はかなり天然でドジをすることが多いが、レライエと呼ばれる自分のRuinをとても気に入っている。


また家事全般が得意であり寮では頼られる存在で、普通科の人と唯一、普通に接している。


一方で金色の髪をしているのが、小金井こがねい 黄也おうやだ。


黄也の問題点は、常に手を抜いていることだ。適当にこなしており、戦闘に向いているとは思えない。しかも、女子をすぐにナンパしようとする。


とはいえ、まだ会話が出来るだけ残る2人よりはマシなのかもしれない。


黒瀬くろせ まとい赤司あかし こうは会話が成り立たない。紅は何故か自分を偉いと思っているらしく、協調性がない。


一方の纏は運動神経がいいが、喋ろうとはしない。同じ部屋の蒼によると、たまに話すこともあるが必要最低限のことだけらしい。


しかも、この2人はとても仲が悪く、いつもいがみ合っている。(といっても、紅が一方的に絡んでいるだけなのだが)


そしてさらに2週間が過ぎたある日、特殊科による実践練習が行われることになった。敵は同じ班員のメンバーだ。藍にとっては彼らの実力を知る良い機会であり、胸を躍らせていた。


当日、広い闘技場と思われる場所に特殊科の生徒は集められた。暇な教師陣や校長、さらには外部からの招待客が観客席から彼らの動向を見守る。


この場所は学校での模擬戦闘に用いられる練習場の1つで、今回の訓練には最適な場所ともいえる。そしてその闘技場の中央には1人の女性が立っていた。


「全員、準備は整ったか?」

中央にいる女性、特殊科の担任で檜山という名前の人物が問いかける。


「はい、檜山教官!」と一応全員が答えると、それを確認してから檜山は観客席の方を向いた。


「では始めてくれ、檜山大佐」と、校長が合図するのと同時に場内が緊迫した雰囲気に包まれた。


今回はトーナメントによる1対1の決闘という形式での練習となっている。初戦は黄也VS紅、蒼VS纏だ。このうち勝者が準決勝へと進む。藍は決勝までのシード枠になっている。


檜山と他の3人が闘技場から離れると、さらに重い空気が会場を覆う。そんな中、


「黄也、お前なんかには負けないからな」


「メンドクサイな・・・ 早く帰りてぇー」


と、緊張感のない会話をしながら2人はRuinを起動させる。


紅のRuinはフェニックスと名付けられている。炎を絶えず燃やし続けることで鎧を形成し防御に使用するとともに、永遠に消えることのない超高熱の幅広剣によって敵を攻撃する。


一方の黄也はヴアルと名付けられたRuinを操る。全ての攻撃を受け止める大楯を扱う、防御型のRuinとなっている。


やがて2人が起動し終わったのを確認すると、開始の合図が鳴った。


と、その瞬間、紅は一気に距離を詰めて切りかかる。無論、黄也はそれを楯で防ぐ。


「序盤から全力攻撃かよ」そう言いつつ、紅の連続攻撃を防ぎきる。それでも紅の剣速は落ちることはなくどんどんと押し込んでいく。


場内の温度は急激に上がっていき観客達の額には汗が流れ始め疲労が蓄積していっている。だがそれよりも遥かに速く、黄也の体力は消耗されていく。


このまま行けば先に倒れるのは黄也だろう。だがもちろん、そのまま負けるわけにはいかない。


「悪いがお前には勝たせてもらう」そう言うと、大楯が光り始めた・・・と、次の瞬間、大楯は烈火の如く

勢いよく燃え始めた。


ヴアルの特性、愛染放光だ。「これで俺の勝ちだ」と、黄也が言い放つ。


だが紅は諦めない。いや、さらに剣の熱量は増していく。「まさか、防御に使っている炎を剣に集めているのか・・・」と、校長がつぶやく。


激しい炎と炎のぶつかり合いは熾烈さを増し続け、彼らの周りは水蒸気が立ち込めて姿すらも見えなくなっていた。


と、闘技場に燃える炎が遂に消えた。それに合わせて水蒸気の霧もどんどん晴れていく・・・。その中に立っていたのは、紅の方だった。


「勝者、赤司 紅」と檜山が声をだした。急いで医療班が駆けつけると両者ともあちこちに火傷をしていた。一応、致命傷を防ぐ防御措置を取っていたため大きな傷は残っていなかった。


紅は、「俺がお前なんかに負けるわけないって言っただろ」と黄也に向かって言い放つと、そのまま医務室へ運ばれていった。黄也もまたそれに続いた。


一方、熱がまだ残っている闘技場にはすでに2人の少年が対峙していた。いよいよ、2組目の対戦がはじまるのだ。

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