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絶無の異端者  作者: 聖 ミツル
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第38話




 レイフル国の第1王子レオナルドの元に選抜された高校生達は、聖騎士団の一員として、剣術指導役だったシュベルトの指導下に置かれた。


 今は、王宮の謁見室の隣室にある控え室で待機している。


「君達は、選び抜かれたエリートです。この世界で聖騎士団に成れる事は、貴族の面々にとっても名誉な事なのです。これからは、それに相応しい振る舞いが求められます。それに、給金も支払われます。皆さん、決して、聖騎士団の恥になるような行動は控えて下さい」


 シュベルトは、佐伯 優也達の前に立ち、聖騎士団の心構えについて話をしていた。


「では、これから、謁見室に向かいます。レオナルド第1王子から直々にお話があるそうです。他にも聖騎士団の皆が揃っています。くれぐれも失礼のないよう努めて下さい」


 シュベルトに連れられて、高校生達は謁見室に入る。皆もエリート意識があるのだろう。誰も、無駄口をたたくものはいなかった。


「皆の者、よく参った。この世界に不慣れなのは承知している。礼節に関してとやかく言う事は、今は、やめておこう」


 レオナルド王子は、壇上から高校生達をみてそう話す。


「ありがたきご配慮感謝致します。皆の者、敬礼! 」


 シュベルトの合図で高校生達は、習ったばかりの騎士の挨拶である敬礼の姿をとった。


「早速だが、本題に入る。隣国のカラナ国から書簡がきた。北方にあるドメイル国から、魔族討伐の要請が来たようだ。カラナ国とドメイル国は友好国であるので、当然だろう。今回は、カラナ国のコーリア男爵からライゼン= ハーバーを名指しで参加要請が来ておる。師範学校時代の同期であると聞いておる。そこで、君達にもライゼンと共に、カラナ国王都に行き、行動を共にしてもらいたい。ゆくゆくは、ドメイル国に渡る事になるだろう」


『はい』


 高校生達は、返答をする。シュベルトに、何を言われても『はい』と答えるように教えられていたようだ。


「用意もある事であろう。ライゼンと共に数日のうちに旅立って欲しい」


『はい』


「君達は、優秀な人材だ。レイフル国の尊厳にかけて優秀な成績を残してもらいたい。良いな! 」


『はい』


「それから、佐伯 優也 一歩前に出ろ」


「はい」


 優也は、言われた通り、一歩前に出た。


「君は、光魔法の使い手だ。この聖剣を君に託す。この世界にある唯一の剣だ。期待しているぞ」


 優也は、前に出て、その聖剣をレオナルド王子から受け取った。そして、


「ありがたき幸せに存じます」


 そう返答し、すぐに皆の列に加わる。


「魔族達の暴挙を止め、我らレイフル国に栄光を」


『我らレイフル国に栄光を』


 列席している者たちは、そう高らかに声を上げる。


「それから、私も用が済み次第そちらに向かおうと思っている。今、オーリア国とカラナ国と調整中だ。カラナ国に渡るには、オーリア国を経由しなければならぬからな。早ければ、オーリア国王都で貴殿らと一緒になるやもしれん。我が着くまで、決して、魔族達に好き勝手なことをさせてはならない。良いな! 」


『はい』


 少し遅れてレオナルド王子も向かうつもりらしい。高校生達は、不安よりも高揚感でいっぱいだった。




◇◇◇




 イリヤス教会本部では、キャサリンは、最高責任者のミネルト=グラームスから飛び出しがかかり、その執務室に向かった。


「キャサリン、よく来た。どうだ? 異世界人達は? 」

「はい。物分かりもよく、指導に支障はありません」

「そうか、そうか〜〜」


 ミネルトは、光魔法の使い手、三角 慶太と治癒魔法の使い手 井上 澄香が、教会に派遣されたので、すこぶる上機嫌だった。


「オーリア国の王都の教会から、異端者討伐の支援を要請されておるな」


「はい。その通りです御座います」


「実は、別件で、教会の要請で『神託の巫女』たる、ユリシーナ王女を例大祭の貴賓として列席して欲しいと招待を受けておるのじゃ」


「ユリシーナ様をですか? 」


「きっと、教会の資金集めの目玉にしようと考えておるのじゃろう。そこで、例大祭は、2週間先だが、お主達と一緒にユリシーナ様も同行してもらって、オーリア国王都の教会に行って欲しい。こちらも、例大祭を控え、かり出せる騎士が不足しておる。どうだ? 頼まれてくれんか? 」


「それは、構いませんが、我々は、明日には出立の予定。ユリシーナ様の準備が整うか心配です」


「それは、こちらで用意しよう」

「そうですか、わかりました。謹んでお受けいたします」

「そうか、そうか、頼んだぞ」


「はい。それと……」

「他に何か用か? 」

「いいえ。何でもありません」


 キャサリンは、聖剣の事を話そうかと思ったのだが、オーリア国から帰ってからでも遅くないだろうと判断して言いそびれてしまったようだ。


 キャサリンは、ミネルトの執務室から退室し、明日の準備に取りかかった。




◇◇◇




 ハク達は、セリーヌからの情報を頼りに、エルフの里を目指す事になった。元々、送還魔法の手掛かりを掴む為に、エルフの里に行くつもりだったのでちょうど良かった。


 エルフの里は、カラナ国の西方にある森の中らしい。

 その場所を知っているものは、限られていると言う話だ。


「ヒコ様は、エルフの里の場所を知っているのですか? 」

「わかると言えば分かるけど、わからないと言えばわからないわ」


「それって……知らないって事ですよね? 」


「だって、私、森から殆ど出た事ないもの。たまに来る者達の記憶を頼りにしてるだけだし」


「では、私のお父さんかお母さんに聞きましょう。前に、エルフの森に行った事があるって言ってましたから」


「そうゆう事なら、転移するわネ。ササ、今度は逃げないようにハクとルルを捕まえておいてネ」


「ヒコ、ちょっと待ってくれ」


「どうしたの? ハク」

「俺は、今は、行けない」


『えっーー! 何で? 』


「この国にやり残した事がある」

「それって、何なの? 」

「王都に行くつもりだ」

「行ってどうするの? 」

「少し、調べたい事がある」


「ハクさん、それでしたら、みんなで行きましょうよ〜〜」

「ハクの用なら、あたいも行く」


 ササとルルは、ハクがいなくなってしまうのではないかと心配している。


「いや、俺1人で行きたいんだ。お前達は、先にササの里に行っててくれ」


「コミュ障のハクがここまで話すには、きっと何かあるのネ。どうしようかな〜〜、そうだ。ちょっと、待ってて……」


 ヒコ、キリコ、フウコが一斉に出てきて、ヒュドラ会議が始まった。


…………


「アレしようと思うんだけど? 」

「そう、私は別に構わない」

「アレですか〜〜あれするとあんまり食べれなくなるからあまりしたくないです〜〜」


「フウコは、それでも食べ過ぎなのよ」

「太るのは私達。適度な食欲が望ましい」

「わかりました、でも、どうしてアレするのですか〜〜? 」


「もちろん、ハクがらみよ」

「ヒコは、転移しなければならない。私かフウコ」

「私は、嫌です。ハクなんかごめんです〜〜」


「じゃあ、キリコお願いネ」

「わかった」

「キリコは、もの好きです〜〜」


…………


会議が終わったらしい。ヒコだけになったヒュドラは、ハクに


「決まったわ」

「何がだ」

「ハクのの件で話してたのよ。わからないの? 」

「いいや、全く、理解できない」

「仕方ないわネ〜〜見ててネ。エイッ! 」


 ヒコの掛け声とともに、ヒコ自身が光り出した。その光は眩しく直視できない。


 光が消えたようだ……すると


『どう? 』


「わっ、ヒコ様、キリコ様、フウコ様がみんないる〜〜」

「ねっ、すごいでしょう? 」


「…………」


「すごいでしょう? 」


「何でそんな、小さくなったんだ? 」


「ハクはバカなの? 三等分したからでしょう? 」

「ヒコ、少し違う。きっちり三等分なら、もっと小さい」

「これだと、人間1人くらいしか食べられないのです〜〜」


 そこには、分離したヒコ、キリコ、フウコがいる。それぞれ、10歳ぐらいの身長だ。


「私よりも少し小さいです。どうやったのですか? 」


「ただ、分離しただけよ。ハクがわがまま言うから」

「本当、世話がかかる」

「あ〜〜もっと食べておけばよかったです〜〜」


「というわけで、キリコと一緒に行ってネ」

「私が、お目付け役」

「もう〜〜元に戻りましょうよ〜〜」


「キリコを連れて行けと? 」


「反論は認めないわ」

「ハク、私じゃ不満? 」

「ハク、美味しいお土産を要求するのです〜〜」


「わかった……」


 こうして、ハクは、分離したキリコと一緒に行動する事になった。

 ヒコ達は、転移してササの里に向かった。キリコを残したとはいえ、ササとルルは心配そうな顔つきだった。


 残されたハクとキリコは、


「行くか? 」

「歩くの面倒。おんぶ」

「…………」

「おんぶ」

「まぁ、その方が早いか」


 ハクは、仕方なくキリコをおんぶして、オーリア国王都に向かった。






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