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絶無の異端者  作者: 聖 ミツル
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第26話




 イリサス教会本部で『神託の巫女』と言われるレイフル国第2王女ユリシーナの付き人として、いつも側に控えているキャサリンは、教会トップのミネルトに呼び出された。


「キャサリン、異端者の顔をはっきり見たのはお主だけだ。今、国の絵描きを呼んである。協力して、異端者の似顔絵の作成を手伝ってくれ」


「はい。かしこまりました」


「それとな……今度、修道騎士団に、新たな人員が配備される予定だ。お主が、その者達を、指導してくれ」


「私ですか? 私は、まだ、未熟者です。他に適任はいると思いますが……」


「いや、お主が丁度良いのじゃ。その者達は、異世界人じゃ。剣も魔法も使いこなせておらん。だが、神からギフトを授かっておる。それを使いこなせるようにしてもらいたい。そして、異端者討伐のメンバーとして、異世界人と共に君も活躍してもらいたい」


「私が……」


「何か問題でも? 」

「いいえ。そうではありません。ただ、ユルシーナ様の事が気がかりで……」

「討伐遠征に出かけるまでは、いつもどおりで良い。そこに、異世界人が加わるだけだ」

「わかりました。お引き受け致します」


 キャサリンは、その後、絵描きのもとに行き、異端者の似顔絵描きを手伝わされた。


 今までは、異端者、つまりハクの事は、白髪の青年とだけしか通知されていなかったが、今度は、似顔絵付きの手配書になる。


 キャサリンは、脳裏に焼き付いて消したくても消せない、ハクの淋しそうな目が気になっていた。




◇◇◇




 ハク達は、銀狼族のルルをオーリア国にある里に送る為に、南に向かって歩いていた。はじめは、フウコの雲で行こうとしたのだが、ヒコが「旅は、ノンビリ行くのが基本でしょう」と言い出し、結局、歩いて行く事になってしまった。


 白狐族の里からだと、歩きで3週間は、かかる距離だ。


 ハクは、気乗りしてなさそうだが……


「こうして、ノンビリ歩いて旅するのっていいわネ〜〜」

「あの〜〜街道を堂々と通って行って大丈夫でしょうか? 僕達やハクさんも見られたらマズイと思うのですが……」


「メガネ君。大丈夫よ。何かあれば、フウコが食べるから」


 ヒコになっているヒュドラは、呑気なものだ。己自身が強いと周りの状況を考慮に入れないようだ。


「でも、私達はきっと死んでる事になってるし大丈夫じゃない? 」


「そうとも限らないよ。僕達が仕組んだ細工など、見る人が見れば容易にわかってしまうだろうしね」


「そうかなぁ? 」


「そういえば、東條さんは、静かだね。何時もは煩いくらい絡んでくるのに」


「何を言ってるの? 外内君。私は、何時もこんな感じでしょう」


「怖っ! 」


「怖って何よ! あんた! じゃなくって、外内君」


 手毬は、研一にそっと、耳打ちをする。


「凛は、ハクさんに女性らしいとこを見せたいのよ。わかってあげて……」

「そうなのか? まぁ、ハクさんに好意を抱くのは仕方ないけど……」


『ギャッーー! ! 虫、虫よ〜〜取って、取ってよ〜〜! 』


 凛の髪に、羽根の生えてるイモムシのような虫が張り付いた。凛は、大慌てて騒ぎまくっている。


「ほらよっ」

「あ、ありがとう……」


 ハクの方に駆け出した凛は、ハクに虫を捕ってもらい、顔を赤くしている。その光景を見ていた研一は、


「もう、遅いと思うけど……」

「もう、凛ったら〜〜」


 ハク達が通っている街道は、カリナ国のコーリア男爵領からオーリア国を繋ぐ、割と整備された街道だが、運良く、未だ、誰とも会っていない。ハク達も追われる身だが、ルルも逃げ出した事が、もう、わかっているだろうし、巡回兵士にでも見つかったら、厄介な事になりそうだ。


 周囲は、田舎風景は広がっている。街道の左側には、森が広がり、あの山脈が連なっていた。


「私達、あんな高いところにいたんだね」

「アルプス並みの高さだ。遠くから見ている分には、壮大な景色で気持ち良いけどね」

「本当だね」


 研一と手毬も、呑気に景色を見て、話している。だが、凛はそれでころではないらしい。さっきから、顔が赤くなりっぱなしだ。


「どうしたの? 凛ちゃん。顔赤いよ〜〜」


 ヒコになっているヒュドラが、凛に話しかける。凛は、自分の感情を悟られまいと必死だ。


「な、なんでもないです。本当です」

「それなら、いいけど、しかし、凛ちゃんは、大きな荷物背負ってるネ。何がその中に入ってるの? 」

「これは、卵です。山で拾ったんです。食料に困った時にでも、食べようと思って……」


「卵! 」


 いきなり、フウコに変わったヒュドラは、目の色が変わった。


「卵ですか〜〜あれは、美味しいのですよね〜〜。食べても良いでしょうか? 」


「ダメです。これは、非常食なんですから! それに、模様も可愛いし、今、私のお気に入りなんです」


「もう〜〜ケチね〜〜」


『ボカッ! 』


「痛っ』


 凛に絡んでるフウコの頭をハクが殴りつけた。


「節操なさすぎだ。人の物まで取るな! 」

「暴力反対です〜〜。ヒコやキリコが邪魔しなければ、ハクなんか一飲みで食べちゃうのに〜〜ベーーです」


 その時、『ギュルルルル』と、大きな腹の鳴く音はした。恥ずかしそうに、ルルがお腹を押さえている。


「お腹も空いたし、休憩にして、お昼ご飯を食べましょう。ちょうど、あそこに、小川が流れてますから、そこで休憩しましょう」


 フウコは、食べ物の事になると、大張り切りだ。みんなも、疲れが出てきたようで、ちょうど良いタイミングだった。


 街道から脇にそれようとすると、前から、騎馬が一騎物凄いスピードで、駆け抜けて行った。ハク達は、その土ほこりを被ってしまった。


『ゴホッ! ゴホッ! 』


「何なの? あれーー! 」

「頭にくるわネ〜〜。食べちゃおうかしら」


 凛とヒコが思わず、悪態を吐く。


「見たところ、兵士といったところですか? 火急の用でもあったのかもしれませんね」


 研一は、冷静に分析する。


「あの、甲冑は見たことがある。教会の兵士だ」


 以前、ハクを襲った修道騎士団が付けてた甲冑に似ていた。それに、太陽と剣と盾をモチーフにした、マークが同じだった。


「ハクさんの言うことが本当なら、教会の伝令かもしれませんね」


「ハクさんを捕まえにきたのかしら? 」

「内容までは、わからないけど、僕達にとって良い知らせではないだろうね」


「みなさん、そんな事よりお昼にしましょう」


 ササが、母親のネネが作ってくれた昼食を取り出す。もう、さっきの騎馬の事は、どうでもよくなっていた。




◇◇◇



 ここは、魔族に占領されたユーリア国、王城。


 ユーリア国王と王妃は、別棟にある塔に幽閉されているが、その他の王家の人々や、王城にいた人々は、首に拘束具をつけられてはいるが普通に暮らしていた。


 ここの占領を魔王から任された、10使徒の1人、ギルメスは、魔族と魔獣を率いて、ユーリア国を支配下に治めている。


 王城の貴賓室でギルメスは、配下の魔族と話をしていると、この国の王女が面会したいと申し入れがあった。ギリメスは、それを許可した。


「あの〜〜ギルメス様。少し、お話があります」


 そう話仕掛けたのは、前第1王女、フレリー=マシュー=ユーリアだった。


「何だ。人間。これ以上の、譲歩は出来んぞ」


「皆の命を、お助け頂いただけでも、感謝しております。お話は、民の事です。街の皆は、不安にかられている事でしょう。せめて、魔獣だけでも、王都から引き払ってもらえないでしょうか? 」


「その必要は、無い。我が魔獣は、我の支配下にある。命令に背いて、人間を襲う事は無い」


「ですが、人間は、魔獣に怯えております。何卒、ご配慮頂けませんでしょうか? 」


「人間どもは、外見で判断するからな。私のこの角も人間にとっては、恐ろしく見えるのだろう? 」


「それは……」


「言わずとも良い。だが、そなたの意見は聞き入れられない。以上だ。下がれ」


「はい、失礼しました……」


 フレリーは、うつむきながら部屋を出ていった。

 この部屋からは、街が一望できる。

 その光景を見ながら、ギルメスは、


「魔王様は、何をお考えなのだ……人間など、皆殺しにしてしまえば良いものを……」


 ギルメスは、眼下に見える人々を見ながら、そう呟く。


 そんなギリメスの所に、珍客が訪れた。


「ギルギル、久し振り〜〜」

「何だ。グリスか」

「どう? 人間の真似事頑張ってる? 」


 そこに現れたのは、邪龍の住処でハクとあった、魔王10使徒の1人、グリスだった。


「お前に言われなくとも、魔王様の言いつけどおり、きちんとこなしている。それより、お前は、邪龍を連れて来ると言って張り切っていたが、邪龍はどうした? 」


「それがさぁーー、邪龍いないんだよ。巣はもちろん、あちこち探したんだけどね〜〜」


「はは〜〜ん。手懐ける事が出来ず、そんな言い訳を考えたか? 始めから、邪龍を手懐けるなど無理な話。殺されずにいるのが不思議なくらいだ」


「だって、魔王様、強い魔獣を連れて来いって言うからさ〜〜強いって言えば、邪龍でしょう? 」


「邪龍じゃなくとも、強いものはおる。キメラやクラーケン。それに、ヒュドラとかな」


「魔王様からヒュドラには手を出すなって言われてるよ。手を出した時点で殺されるからって〜〜」


「まぁ、魔王様の元に帰りづらくて、ここに来たのはわかる。ドメイル国とリカド国の間の山にキメラが住んでる。そいつでも手懐けて、連れて帰れば良い」


「キメラか〜〜邪龍に比べたら、格が下がるよね〜〜。でも、仕方ないか〜〜、わかった。ありがとう、ギルギル。そうするよ。じゃあ、またね〜〜。あっ! それから、邪龍の住処で面白そうな人間に会ったんだ。あんな所にいるなんて、おかしいと思わない? 」


「人間が、邪龍の棲家の場所にいたのか? 」

「うん。白髪のイケメンだったよ〜〜」

「そいつは、面白そうだな……」

「でしょう? 今度、会ったら、絶対、戦うんだ。あの時は、邪龍探しで、そんな暇、無かったし」

「まぁ、些細な事だが、魔王様の耳には入れておいた方が良いな」


「そうするよ。じゃあね〜〜」


「相変わらず、落ち着きのない奴だ……」


 ギルメスは、グリスが消えた空間を見ていた。そして、


「今度は、ドメイル国か……ルカサは、人間嫌いの暴走女だからな。魔王様の言いつけどおり、この私みたいに、人を殺さず国を支配下に治める事など出来まい……白髪のイケメンか……」







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