第1話
『えっ〜〜と、26歳ですか……子供を助けて、ここに来たのですね』
その女神は、資料を見ながらそう話す。
ここは、天界にある、転生、転移科だ。
生前、ある条件を満たした者だけが、来れる場所でもある。
その室内では、、デスクに資料を積み重ねている女神らしき者が資料を見ながら、その男性を資料と見比べている。椅子に腰掛けているその男性は、項垂れていて、とても苦しそうに胸を押さえていた。
(わぁ〜〜悲惨な生前だわ……本当、死にたくなるレベルよね……)
資料には、その男の生前の事が細かく書き込まれていた。その男は、恵まれた人生を送れなかったようだ……
「何処だ、ここは……うっ……胸が苦しい……嫌だ。もう、嫌だ……」
『では、転生か転移を選んで下さい』
「……転生? 転移? それどころじゃないんだ。苦しい……」
『普通は、転生なのですが、人助けをして犠牲になった場合は、転移も受け付けてます。転生は、異世界で赤ちゃんからやり直す事です。転移は、詳細は後で説明しますが、そのまま異世界に行く事です。どちらが良いですか? 』
「赤ん坊……そんなのごめんだ」
『では、転移ですね。転移の場合は、15歳設定とと18歳設定がありますがどうしますか? 』
「俺は、26だ。ガキに戻るつもりはない」
『では、18歳設定でと……これには、言語、スキルなどが含まれています。今、スキルの受け渡しをしますね』
その女神が、デスクの上に無造作に置かれてあった短めの杖をその男に向ける。すると、その男の身体が光を帯び始めた……
女神のデスクの上にある資料にその男の能力が書き込まれた。
『えっ〜〜と、スキルは【絶無の手】って言うらしいですね。能力は、手を翳し、認知したものを消せる能力だそうです。きっと、消しゴムみたいなものですネ。……マニュアルでは、空間魔法と時限魔法は報告せよって書いてあるし問題なさそうですね』
「何んだよ。ここは、意味がわからない。それに、苦しいんだ。この胸の痛みを消してくれないか? 」
『胸の痛みですか……きっと、死ぬ前に体験した出来事が、まだ、残っているのでしょう。良いですよ。消してあげましょう』
「それと、記憶や感情も頼む……もう、二度とこんな思いしたくない……」
『記憶と感情ですか……わかりました。では、チチンプイプイのプイ! これでどうでしょうか? 』
「あぁ……なんだか楽になった気分がする」
『それは良かったです。今度、貴方が行く世界は、剣と魔法の存在する世界です。魔王の討伐が義務付けられています。スキルを付与したのはその為です。適材適所ってご存知ですよね。魔王討伐を直接出来るスキルを持てなくても、貴方は貴方なりの力で役立ってもらいます。では、行ってらっしゃい』
女神がそう話すと、男は光に包まれ、消えていった。
『全く〜〜感情や、心の痛みなんか消せる訳ないじゃない……そうとう、過去を引きずってる男だわ〜〜。でも、確かったわ。ちょっと、催眠かけただけで、あんなに効くなんて、本当、単純な男。あぁ〜〜もう次かーー! 次の方、どうぞーー! 』
女神ミサリーは、配属されてまだ日が浅かった。この仕事がこんなに激務だとは思わなかったらしい。できれば、1人1人時間をかけて、導いてあげたかったが、ここを訪れる者達の多さに1人にかける時間が短くなってしまった。
でも、この、何でもない男が後で大問題になるとは微塵も考えが及ばなかった。
◇◇◇
その男は、草原にいた。遠くには、大きな街並みが見える。
だが、その男は、その街並みに背を向けて歩き始めた。
そこには、森が広がっていた。遠くには、高い山並みも見える。
男はその森の中に入って行った……