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絶無の異端者  作者: 聖 ミツル
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第9話




 ここは、現代の日本の都内、某、有名高校の特進Sクラス……


「お〜〜い!席に着けーー! 帰りのホームルームを始めるぞーー! 」


 成績優秀な男女それぞれ10名の少数クラス2学年A組の生徒達だ。担任の三角(みすみ) 慶太(けいた)は、生徒達を静かにさせる。


「おい! スマホ、取り敢えずしまっとけーー! これから、話す事は、中間試験の件だ。よく聞いておけよ〜〜」


「テストですか……」

「今度こそは……」


「おい、みんな。よく聞けーー。今回のテストは、内申に影響あるテストだ。気を抜くなよ」


 周りの生徒達は、真面目に勉強に取り組んでいる。ここは、そういうクラスだ。


「じゃあ、日程を説明するぞーー! 」


「先生! 」

「何だ。小早川(こばやかわ)

「さっきから、床がたまに光るのですけど……」

「ワックスが太陽光に反射してるのではないか? 」

「いいえ。そういう光り方と違う気がします……」


 すると、また、床が光り出した。今度は、眩しいくらいに強い光だ。誰ものが目を開けていられない。そして、2年A組の生徒20名先生1名は、日本から消えてしまった。




◆◆◆



「……ここは何処だ? 」


 2年A組のみんなが、召喚された場所は、王宮の礼拝堂だった。

 周りには、レイフル国第1王子、第1王女そして第2王女のユリシーナを始め、宮廷魔導師、王家聖騎士団の面々が取り囲んでいた。


「ようこそ、おいで下さりありがとう御座います。勇者様達」


 宮廷魔導師のディオライトがそうみんなに告げる。


「勇者……なんの事だ……? 」

「先生。これ、もしかしたら、勇者召喚されたのではないですか? 」

「なんだ。それは……? 」

「ラノベとかアニメで馴染みのものですよ」

「ドッキリとかじゃないのか? 」

「そこまでは、わかりませんが、セットとか出来過ぎですよ」

「うむ……」


「皆様。急にこのような場所に来られて、戸惑っていらっしゃるのはお分かりします。私は、第2王女のユリシーナです。皆様をこの世界に招く召喚の手助けをしたもので御座います」


「先生、どういう事なの〜〜? 」

「事情はわからないが、君達に何かあったら大問題だ。迂闊な行動はするなよ」


「こちらの都合でお招きしたのには、訳があります。ここは、皆様から見れば異世界になります。あとで詳しくご説明致します。それに、皆様に危害を加える事はありませんのでご安心下さい」


「急な事でさぞ、驚かれておる事でしょう。私は、この国の第1王子、レオナルド=エルワード=レイフルです。皆様を勇者様として召喚させてもらいました。いろいろ知りたい事もお有りでしょう。別室に、簡単では御座いますが、皆様をもてなす用意がしてあります。どうぞ、そちらで、説明させて頂きたい」


 召喚されたクラスのみんなは、何が起きたのかよくわからない様子だが、着飾ったドレスを着た人達の様相を見ると、嘘を付いているようには思えなかったようだ。


 訳の分からぬまま、クラスのみんなは、ここから、応接室へと移動するのだった。




◇◇◇




 応接室には、レイフル国王も同席した。第1王子レオナルドが、詳細を詳しく説明する。


「事情はわかりましたが、これだけは確認しておきたい。元の世界には、戻れるのでしょうね? 」


 担任の三角先生は、大事な生徒を預かる身だ。元の世界の戻れる確約をもらいたかった。


「それは……」

「ユリシーナ。私が説明致しましょう。ここにいる宮廷魔導師ディオライトは、とても優秀な魔法使いです。皆様を元の世界に送り届けることなど容易くできます。それも、召喚された時と同じ時間軸です。こちらで、どれだけ暮らしていても、元に戻る時は、召喚された時と同じ状況になります。しかし、それには、こちらも準備が必要となります。皆様を送り届ける魔力を確保する為には、3ヶ月間はかかります。その間、こちらでお過ごし下さい」


「それは、確約してくれるのですね」

「もちろんです。私、第1王子がお約束致します」


「良かった〜〜戻れるんだって〜〜」


 担任の三角も確約をもらえたので少し安心しているようだ。


「それから、召喚された皆様は、神からギフトを受け取っているはずです。こうして、私達と会話できるのも、そのお陰かと思います。失礼ですが、各々のギフトを確認しておきたいので、これをお付け下さい」


「これは、何ですか? 」


「皆様は、魔法をご存知ですか? 」

「えっ……知ってますが、使えるものは、私達の世界ではいませんでしたけど」

「この世界は、魔法が使えます。もちろん、皆様も使えるようになっているはずです。ですが、初心者は、魔力暴走の心配があります。これは、それを抑えるチョーカーです。使い慣れれば、取り外して結構ですので……」


 第1王子の説明をみんなは、理解できたようだ。

 それより、魔法が使える事が嬉しい様子だ。

 生徒と先生は、ためらいもなくそのチョーカーを騎士達に付けてもらった。


「では、この金色の円球に手を乗せて下さい。そうすれば、皆様のギフトがわかります」


 宮廷魔導師ディオライトは、生徒一人一人にそのバレーボール大の大きさの球を触らせた。触れると、薄く輝き、円球を固定してある下の部分からカードのようなものが出てくる。


「ほぉ〜〜これは、これは……」


 生徒達のカードを見ながら魔導師は、いちいち大袈裟な反応をした。

 日本から来たものには、書いてある文字は読めない。みんなは、それぞれ口頭で説明を受けていた。


「流石、勇者様達です。光属性の魔法所持者が3名。攻撃系のギフトをお持ちの方が10名。後の8名の方は生産系のギフトを持っておられます」


 魔導師の説明に生徒達は、理解できているが、担任の先生は、意味がわからない様子だ。


「すみません。ギフトとは何なのでしょうか? 」

「神から与えられた能力の事です。魔法に特化していたり、剣術が優れていたりする能力の事です」

「そんなものが私達に……」

「はい。神様のお陰で御座います」


 魔導師は、そう説明したが、みんなは実感が無いようだ。


「その件につきましては、後日、指導者の元で発揮してもらいましょう」


 第1王子の言葉に、みんなは嬉しそうだが、1人だけ、違和感を感じている生徒がいた。医者の息子で自分も医者を目指している外内(そとうち) 研一(けんいち)という生徒だった。成績優秀な眼鏡男子だ。


 彼は、第1王子が嘘を付いているのでは無いかと疑っていた。話している時に、頻繁に目を右斜め上を向き、瞬きの回数も多かったからだ。嘘を付いている時の心理状態に近い動作だ。


 チョーカーを付けるのも躊躇(ためら)ったが、魔力暴走とやらに万が一なってしまっては、と思い承諾した。


 でも、彼は、こう思っていた。


「もう、日本には帰れないだろう……」


 と……。




◇◇◇




 イリサス教会本部では、修道騎士団が、異端者にやられてしまった、という報告を受けていた。


 逃げて来た魔法師と、騎士のキャサリンがそう報告する。


「まさか……そんな事があるはず無い。団長は優秀な人間だ。やられるとは、信じられない! 」


「しかし、事実で御座います。その白い異端者は、(ことごと)く、仲間を消し去りました。どのような方法かはわかりませんが、あのような魔法は見た事がありません」


 逃げて来た魔法師の説明にみんなも頷く。キャサリンは、その青年が何で異端者なのかその訳が知りたかった。


 神からの神託は絶対だ。理由に意味などないとわかってはいたが、彼の目を見てしまった時の何とも言えない気持ちをどうしたら良いのか迷っている様子だ。その為に彼が「絶対悪」という理由が欲しかったようだ。


「わかった……各教会に油断してはならぬと報告しよう。それと、王家の聖騎士団にも手を貸してもらえるように頼んでみよう」


……まさか、修道騎士団がこんな事になるとは……


 イリサス教会では、その話題で持ちきりだった。






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