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彼女が作れなければ造ればいいじゃないっ!  作者: 箒星 影
二章 リゾート地ミーナリア
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四十一体目 巨乳になりたければ貧乳を五人集めればいいじゃないっ!


 どうしよう、男ならここは追い掛けるべきなのかな。


 でも、今はソッとしておいてほしいよなぁ、多分。


 でもでも、泣かしたのは俺だし……。


「あ、あのぉ……兄さん……?」


 センナを呼び戻すか放っておくか、大きな選択に迫られていた俺の腫れ物に触れるような音量で、ヒカヤが俺の名を呼ぶ。


「ん?あぁ、いたの?」


「少なくとも血を分けた妹へのリプライとは感じられない!!結構喋ってたじゃん私!!えと……久々に私の女のカンが働いたんだけど、センナさんはしばらく一人にしてあげたほうが良さそうだよ?いま兄さんが何を言っても物事が改善するとは思えないし」


 ヒカヤがこういう真面目な提案をしてくるときは、素直に従った方がいい。経験則で分かる。


「やっぱそうか……ちょっと言い過ぎちまったもんな……」



 全員が無言。



 俺は今のセンナイベントで女の敵になってしまったのだろうか。


 いやしかし、ヒカヤたちからは不思議と殺伐としたオーラは感じない。


 上手く言えないけど、今の空気はこう…………女の子の匂いがする。



「それでね、兄さん……私たちを見て、何か感想とか、ないのかな?」


 

 ヒカヤが顔を僅かに赤らめながら、言いにくそうに言葉をこぼす。



 もしかして……褒めてほしいのか?



 そう考えると、さっきからミャーちゃんとサバシルが素っ気ないのも、自分の水着への評価を待っているから、とか?


「……ミャーちゃ~ん?」


「なっ、何だよアマ公!!気持ち悪ぃからこっち見んな!!あっ、いや、ちょっとは見てほしい……ケド……」


 試しに一番揺さぶりやすそうなミャーちゃんから仕掛けてみたが、こりゃ間違いなさそうだ。髪色に負けず劣らずの赤面をお披露目してくれている。



 しかしながら。



 センナの後だからさぞかしえげつない物を着せられているのかと思ったが、三人の水着はどこにでもありそうな普通の代物。


 事実、こうしてマジマジと見ていても、俺もザダルダさんも、鼻血どころか鼻息すら出ない。


 それに、センナの事が気がかりで集中できない。手短に行こう。


「ヒカヤはアニメで貧乳のキャラがよく着てそうな黄色と白のフリフリワンピース型水着。ミャーちゃんも同じような感じだけど色はピンクか。んでアクラッチさんはオーソドックスな青色三角ビキニ。うん、三人ともかわいいかわいい。めでたしめでたし」


「残飯処理みたいな紹介!!なんかセンナさんと比べて私たちの扱いが雑すぎない!?」


「んなこたぁない!三人とも魅力的だよ。ほし、みっつでぇ~す」


「堺正章さんはそんな干からびたヒトデみたいな星をゲストにあげたりしない!!お世辞もそこまで来ると最早チューショー(中傷)ですよ!」


 他のメンツを眺めてみると、どうやら納得がいかないのはヒカヤだけではないらしく。その中でも特に不機嫌そうにしている者が。


「アマネ……何でアテクシだけガン無視っちょ……?」


「いや、ごめんなサバシル、お前はなんつうか……中途半端にイイんだよ」


 センナのように破壊力があるわけではない。かといって今挙げた三人と違って奇妙な色気がある。


 水着は黒のオフショルダー。肩が露出した新しいタイプだ。黒色ってのは奴の童顔とミスマッチな大人の配色なわけだが、逆にそのアンバランスさが新種の、ミステリアスな妖艶さを醸し出している。


 更にコイツ、ガンガンに着やせするタイプだ。ただでさえ生地の少ないオフショルダーで、そのうえ隠れ巨乳と来た。“中途半端”と言ったが、コレは見方によってはセンナよりも……。



「ブプルバッ!!!」



「あ……アンちゃん!!まだ鼻血出やがんのか!!貯水量ハンパねぇな!!いや、でも……オレもこの青髪の嬢ちゃん見てたらなんか分からんが興奮しグプルバッ!!!」


 限界を迎え鼻から吐血する俺に、腹をダルンダルンと揺らしながら駆け寄るザダルダさんも、すかさずもらい出し。ええいああである。


「もうゲームは終わったらネタバラシするが……アタシはセンナを先鋒にして、サバシルを大将にしてたんだ。勝負は一太刀目が大事……たァ言ったが、精神が限界まで()り減った時に繰り出される最後の一太刀に命を賭けるのも、また勝負。真ん中の三人に普通のものを着せて油断させ、最後にブチかます所まで計算ずくさ。例えセンナを切り抜けられたとしても、アンタらに勝ちの目なんざ、ハナからなかったんだよ、ボンクラ共」


 ミラ姐さんの高らかな勝利宣言。こんな隠し球もあったってのかよ、ちくしょう……!


「ちょっと待ってくださいミラさん!それじゃあまるで私やミャーちゃんは最初からムダ死に前提みたいじゃないですか!兄さんもなんとか言ってよ!可愛い妹が捨てゴマにさせられたんだよ!?」


「仕方ないだろ。貧乳だし、色気もないし、貧乳だし。確かにそういう、貧乳が好きな人もいるかもだけど、俺は貧乳好きじゃないから貧乳はハマらないかな。貧乳だし、貧乳の幼児体型だし、貧乳だし、貧乳だし」


「“貧乳”のシフトが店長並み!!ああもう、分かったよ!こうなったらセンナさんに対抗するために、貧乳を五人集めて、最強の爆乳……“Z(ゼット)カップちゃん”を、作ってやるんだから!絶対に……!!」



……ずっと何言ってるんですかねぇ!?



 まぁ、でも……Zカップちゃん……なぁんか見てみたいかも!!


 ペチャパイが五人集まったらセンナみたいなデカメロンになるんですよ!?早く作って作って!!



「それでは、貧乳が五人……登場だぁぁぁ!!」



 あっ、貧乳が一人ずつ、登場するワケですね!



「ヒカヤです!ミャーリタスです!アクラッチです!ザダルダです!ミラです!合体!!」



「ザダルダ!?おまえっ、貧乳の中に、ブヨブヨの汚いオッサンが一人、入っちゃってるぞ!?これは……どうなっちゃうんだぁぁぁ!?」



「“ぶへへへへ!おいアンちゃん!パフパフしてやるよ!!”」



「ダメーーーーー!!!」



 俺はヒカヤの頭をマッハで鷲掴みにした。


「お前……ザダルダさん、わりとキャラ強いから、トラウマになりそうなモンスター出来ちゃったよ!しかもよく考えたら貧乳じゃなくてただシワ枯れてるだけのババアも入っちゃってゴバラッ!!!」


 ミラさんのハイキックがアマネくんのアゴに炸裂し、カコーン……という景気よい音が、いつまでも頭の中にコダマし続けた。


 もう何も恐くない。



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