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彼女が作れなければ造ればいいじゃないっ!  作者: 箒星 影
二章 リゾート地ミーナリア
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二十九体目 客を呼びたければ店名にインパクトを持たせればいいじゃないっ!

 なんとかミャーちゃんを探し出し、俺たち五人は朝食を摂ることに。


 しっかし本当に異世界か?そりゃ水着は俺たちの世界のやつほど現代風じゃないけどさ、完全にバカンスやないの。


「ていうか、簡単にご飯とか宿とか言っているけど……お金はあるの?」


 用意周到なセンナは眉をひそめて確認した。


「ああ、それなら大丈夫だ。アケボノの魔物を倒した時に、大量のお金を手に入れたからな。ドロップ回収はRPGの基本さね」


 思い出したかのようなファンタジー設定。


「おぉ……あの数ならだいぶ稼げたんじゃないっちょか?」


 さすがにがま口には収まらなかったので、あの戦いのあとでシリカさんに袋を作ってもらったのだよ。


 それをアタック25の“コロンビア”並みのドヤ顔で皆にお披露目する。中からジャラリジャラリと心地よい音。


「ジョンたちやシリカさんたちと山分けしたけど、それを差し引いても大金だろ?この世界の貨幣事情は分からないが……センナ、こりゃどれぐらいの金額なんだ?」


 袋の中身を見たセンナはアタック25の“メロン器官”のような顔をした。いい顔。


「このモピル……五人でも少なくとも一週間は満足に暮らせる額じゃない!まさかここまで……!」


「本当、センナさんっ!?やったぁ!!これで一生遊んで暮らせるねっ!!キャッホー!ウレシイナー!」


 ヒカヤ、気でも狂ったんじゃないのか!?


 一生とか言ってないのに……あいつは話を聞かないからな。


 ヒカヤが喜びのあまりアタック25の“スマイルプリキュア!”のような顔で微笑んだ。いい顔。もっと“スミソニアン協定”ぐらいダイナミックでいいのに。


 とりあえずこの世界での通貨単位は“モピル”というらしい。なんか弱そう。


「んじゃ、とりあえずご飯食べにいきまちょー。ミャーちゃんもこれ以上の恥さらしは可哀想っちょ」


「てめえサバ公っ………うぐっ……!」


 サバシルに何か言いそうになったが、またしてもお腹が鳴ってしまい悔しそうに口をつぐむミャーちゃん。鳴りすぎだろ、カバおくんかよ。



 ふむ、飲食店は色々あるみたいだねぇ……。


【喫茶バハムート】に【麺料理リヴァイアサン】と、それに【海鮮料理ユグドラシル】に【豚肉料理シニタクナイブヒー】か。まだまだたくさんあるなぁ……。



 いや中二病だらけの学園祭か!!


 どいつもこいつも店名に気合い入れすぎだろ!!バハムートとかリヴァイアサンとか……料理と関係ないじゃん!!



 豚肉料理シニタクナイブヒー!?



 豚肉料理シニタクナイブヒーってなに!?食材の命乞いが店名とか残酷すぎるだろ!食ってないのに胸焼け起こしたわ!!


「あーっと……お前らは何が食いたいの?」



「そりゃ食い物と言ったら肉だろ!!」


「あたしお腹すいてないから軽いものがいいわ。焼き鳥とか」


「カレー!!カレー食べたぁぁい!」


「この地域ならではのグロい魚とか食べてみたいっちょね」



 心理テストか!



 一人ひとり個性出しすぎだろおい!協調性も何もあったもんじゃねぇ!


 困るわー、大家族のお母さん気分だわー。あなたは誰タイプ?


 俺は麺類の気分だったんだが……およ?



 しばらく歩いていると、他の店からポツンと離れたところに【何でも屋ZADA】という看板が見えた。



 外から様子見をば。ほほう、結構広いな。


 飲食店……だよな?カウンター席とテーブル席あるし。レストランというよりかは下町の定食屋みたいな?


 誰もお客さんいないんだけど、まぁキレイに掃除されてはいるみたいだな。


「うし、ここにするかね」


「えぇ……なんか怪しくない?ガラガラじゃないの」


「どうせこのまま話し合っても答えは絞れねぇだろ?店側が“何でも屋”で銘打ってるんだし、どんな料理でも作れる自信があるなら、ここが一番手っ取り早い。入るぞー」


 俺もそこそこ腹ペコだったので、全員の意見も聞かずにズカズカと店の中に入った。


 チリンチリンと鈴が鳴る。



「あ……」



 数秒後に奥から出てきたのは、飲食店員らしく清楚な格好をした女の子。


 艶やかな黒髪をポニーテールにした、平均的な身長と体格であり、それでいてこの環境で暮らしているにしては不気味なほどに白肌の美少女。身に付けているチリ一つない白いフリルのエプロンとさして変わらない。大丈夫か?白化個体か?


 なんか教室の隅っこで本とか読んでそうだなぁ。地味子とか呼ばれてそう。ミステリアスな秘密持ってそう。地味子の秘密やな。はい、これが言いたかっただけでしゅ。


 とまあ、こういった俺の失礼きわまりない偏見は真っ向から否定されることになった。


 俺たちの顔を見るなり、その店員さんはてててっと近付いてきた。そしてしばらく俺の顔を見た後で、ニパッと八重歯を見せて笑った。



「へいらっしゃいやせー!!コホホホホホホホホホ!!」



「…………え、あ、ども」


カオスの予感。




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