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十九体目 記念すべき年が来れば祝えばいいじゃないっ!

 いよいよ。



 いよいよだ。



「いよいよ2018年は“となりのトトロ”の公開から30周年だぜ!!」


「いやここで祝うことじゃねぇだろ!!しかしながらおめでとうございます!!」


 不安だったがジョンのツッコミは健在。センナの部下だから腕利きに違いなかったはずなのに、なかなかやるじゃないかこのモブキャラモドキ。再登場した時に慌てて名前考えられたくせに。


「ったく……もう最後だっていうのに、緊張感も何もあったもんじゃないわね」


 新しく仲間になったセンナが深々と溜め息をつく。


「まぁまぁ、緊張でガッチガチになられても使い物になんねぇだろ。さてと……この奥か、センナ?」


 六階。四人の前にそびえ立つ、金と赤の扉。まさにボス戦に相応しいプレッシャーを与えてくる。


「間違いないわ。あんたが探しているものは、全てこの中に詰まっている」


 それを確認したあと、俺はジョンとジャックの方を見た。


「お前ら、マジでこんなところまで付き合ってくれなくて大丈夫なんだぞ?アケボノにケンカ売ったことが知れたら、お前らだってタダじゃ……いでっ!」


 ジョンに思いきり頭を叩かれる。


「気ぃ遣ってんじゃねぇよ、気色悪ぃ。俺たちは俺たちがそうしたいからここにいるんだ。他のこたぁ気にすんな。テメエはテメエの大事なモンを取り戻すために、前だけ見て突っ走れ」


「右」


 お前ら……ジャック手抜きすぎ……!


「暑苦しい友情が確認できた所で……乗り込むわよ。最終確認だけど……作戦名は」



「「「力づくで正面突破ァッ!」」」



「ホント、男ってバカばっかり……ふふっ」


 センナが扉を勢いよく押し、俺たちは一斉に最後の部屋に入る。



「アッケボッノくん!あっそびっましょ!!」



「おや、ようやく来たか。ずいぶん遅かったな」


 タテヨコで三十メートル程あるだだっ広い部屋の一番奥……レッドカーペットが敷かれた階段を上がった先の荘厳なイスに、アケボノは一人、足を組んで座っていた。


 出たよ典型的な悪役のポーズ。


「お前だけか……!?ヒカヤとつけ坊はどうした!?」


「エンジェルちゃんたちか……いいだろう、お見せしよう。どうせ彼女らの前で君たちを斬り捨てるのだからね」


 アケボノがスカした顔で指パッチンをする。ミスれば良かったのに。


 すると袖の方から鎧をつけた大男二人が、気絶した少女たちを運んできた。


「テメエ、二人に何を……!!」


「いちいち騒がないでくれ。薬を嗅がせて寝かせているだけさ。“まだ”何もしちゃいないよ………それより」


 アケボノの視線は当然のことながらセンナの方に移った。


「これはいったいどういうことかな、センナ?なぜ君がそのような野蛮な男たちの隣で僕を睨んでいる?」


 アケボノの冷たい声に一歩あとずさるセンナ。その顔には汗が滲んでいる。


「……申し訳ありません、シルマ様。あなたの第一の部下として今日まで生きてきましたが……センナ=リフルソフィアは、このカタカゲ アマネと共に、あなたを倒すことを選びました」


「とうの昔に飼い慣らしたはずの野良犬に今さら牙を向けられる……それが飼い主にとってどのくらい不愉快なことか、賢い君なら分かるだろう?」


「あなたのしていることは間違っています、シルマ様。あなたから教えていただいたこの剣技で……あなたの目を覚まします」


「…………それがお前の答えか、役立たずなメス犬が」


 乾いた銃声。


 アケボノがいつの間にやら構えていた銃口は、センナに向けられていた。



 センナは、静かに崩れ落ちた。



「センナッ!!」


 だらんとしたセンナを抱き起こすと、腹からドクドクと血が流れてくる。


「アマネ!早く薬を!!」


「いや……お前らに渡したので最後だ……」


 気が動転した俺は、呟くようにそう言った。


「くそっ、ざけんなよ……シルマァァ!!」


「よせジョン!今突っ込んでも風穴開けられるだけだ!!」


 走り出したジョンを、ジャックが必死に止める。


「所詮その女も、牢に入れられている醜き性奴隷どもと同じだったということさ。女なんてものは、僕に弄ばれて捨てられるだけの使い捨てのゴミでしかない。その中でも害悪なゴミは早めに捨てるに限るだろう?」


「離せジャック!!アイツを殺す!!」


「やかましいぞ愚民が。残ったのは男だけか。僕が手をくだすまでもないな」


 アケボノがパンパンと手を叩くと、いま俺たちが入ってきた扉から、大量の兵士が押し寄せてきた。


 数十人程度ではなかった。百人、二百人、いやそれ以上……!


 あっという間に囲まれてしまった。


「参ったね……むさ苦しいったらありゃしない」


「はははははは!!いい顔だ!城の中をほぼカラッポにしていたのは、ここで総動員させて君のその顔を見たかったからだよ!ゴールあと一歩の所で散っていく、絶望した君の顔がね!さあ終わりだよ、カタカゲアマネ!ほらほら、君の妹君はここにいるぞぉぉ!?」


「兄さん!!」


 意識を取り戻したヒカヤが俺のことを潤んだ目で見てくる。


「くそっ!ヒカヤ……つけ坊……!」


「もはや勝利は不可能だ!諦めて首を差し出せ!!」


 隣を見る。ジョンもジャックも、絶望したような顔で下を向いている。


 腕の中ではセンナが苦しそうに顔を歪めている。


 ここまで来たってのに、手が届かねぇのか。


 俺はまた、ヒカヤに情けない姿を見せちまうのか。


「クハハハハハハ!あれほど威勢のいい言葉を放っておきながら、崩れるときは脆いものだなぁ、カタカゲ アマネ!君たち三人でこの状況を覆すことなど……」




「だぁれが三人だってぇ!?」




 上から窓が豪快に割れる音がした。ここ六階なんですけど。


 左右の窓から入ってきた二つの影は、そのまま天井にぶら下がるシャンデリアの上に俊敏に飛び乗った。


「おいテメエらぁぁ!!なにをシケたツラしてやがんだ!!まだ勝負はついてねぇぞ!!今回は出血大サービスだ!このミャーリタス=リグレット様の入魂ソング、スペシャルバージョンに聴き惚れやがれぇ!!がんばれがんばれ三人とも!がんばれがんばれ三人とも!うおおおおおおおおお!!」


「いやうるさいウザい。自分に向けての入魂ソングでも暑苦しいってのに、今回のミャーちゃんはやかましすぎて耳がバカになりそうっちょ。あーっと、ご来賓の皆さま、こんにちはございますっちょ。二人のきゅーてぃーながーるずが、そちらの三人の頼れる助っ人として、びゅーてぃふぉーに参上しましたっちょ~。ドンドンドンパフパフパフ~」




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