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十一体目 味方がいなければ敵の敵と手を組めばいいじゃないっ!

「やべっ、シリカさんにアケボノの家の場所聞くの忘れた。学習能力なさすぎだろ俺。でもあんなクサい会話交わして堂々と出てきた手前、もう一回帰るのは凄ぇ気まずい。“愛情ダクダクで”とか言っちゃったよ。もう手ぶらじゃ帰れねぇよ」


 つまずきのはやさ。


「どうしよ、ヒッチハイクでもしよっかな……いや車ない!!この時代には車ない!!やべぇ。本格的にやべぇ。やべぇっち寿司だわマジで」


 つまずきのはやさ。


「2001年公開の『ウォーターボーイズ』以降、数々の映画で主要な役を演じてきた。また「月9ドラマ」や「大河ドラマ」で主演を務めるなどの実績から現代日本を代表する俳優の一人に数えられる」


 つまぶきのさとし。


「とかふざけてる場合じゃないよ!!どうしよう!スタート地点で詰んでるんだけど!やっぱ恥を承知でシリカさんに聞きに戻るべきか……」


「おい」


 頭を抱えてしゃがみこんでいると、上から野太く汚い声が聞こえた。どっかで聞いたような声だな。足が四本、二人だ。


 なんだ、いい人もいるもんだ。“いるもんだ”と“みのもんた”って似てるけど親戚か何かかな?


「いやぁ!それがし、シルマ王子のご自宅をたずねて三千里でして、よろしければ優しい優しいお兄さんたちに手取り足取り教えていただけると嬉しいんで……」



「よぉ兄ちゃん、昨日はよくもやってくれたなぁ?自分でも完全に使い捨てキャラだと思ってたが……こんばんみ、優しい優しいドロボウさんだよぉ」


「右に同じく!覚悟しろやポンキッキ野郎!!」



「……すけどねぇ!かーっかっかっか、かつお……ぶ…………」




 ピャピャプーーーーーッ!!




「……ある日マグロとサケがケンカしちまった!両者ゆずらぬ大争い!さぁどっちが勝つか!サケかマグロかマグロかサケか!意地と意地との取っ組み合い!(ベンベン)そいつをピタリと止めたのは!通りかかったイカだった!(ベベン)イカは笑って言った!『そりゃあんた、悪いのはマグロだよ!』喜ぶサケに怒るマグロ!『どうしてオイラが悪いんだ!』マグロが尋ねりゃイカは再び笑ってこう答えたそうな!『マグロには……ホネがあるだろ』ってね!チャカチャンチャンチャン……」


「いやなに最後まで落語やりきって自然な流れでハケようとしてんだ。オチてねぇよ。サケにもホネがあるだろちゃんと。つか何でホネあると悪いんだよ。(ベンベン)じゃねぇよ」


 健闘もむなしく、逃亡を試みた俺の首根っこはゴツい手のひらに鷲掴みにされた。ツッコミ凄いしてくるこの人。


「ひゃははは!!やーいやーい!お前の母ちゃんマ・ザ・ア!」


「それは逃げ切った奴が言うことだろ。お前もう捕まってんだろ」


 ポンキッキ野郎ってなに?


 それよりヤバいことになった。まさか使い捨てキャラだと思ったドロボウがまた現れて俺の邪魔をしてくるなんて!使い捨てにされてもおかしくないキャラのくせに!!このロクデナシ使い捨てコンビ!!略して……ああ、あんまりいいの思い付かないや。


「放せよ!はーなーせーよ!渋谷区大型デパート、ハナセヨ!渋谷区大型デパート、ハナセヨ!ジタバタジタバタ!!」


「だあぁぁ!!うっせえジタバタすんな!!口で言うな!!確かに昨日の仕返しをキッチリさせてもらおうと思ってテメエに話し掛けたのは事実だ!だが……テメエ“シルマ王子を探してる”って言ったよな?」


「パオオオオオオオオン!!」


「暴れんなって!人語で喋れよ!!どっちだか分かんねぇよ!!」


 くそっ、このまま意味のない会話のキャッチボールをしていてもジリ貧だ!


「あたぼうよ。だが地図はないから家が分からない。だからヒッチハイクを頼もうと思ってた次第で候」


「だと思ったぜ……ってお前、一人か?あの金髪のガキはどうした?」


「連れていかれたんだよ!そのシルマ王子改めアケボノに!あのあと合流した俺の妹と一緒にな!!だからこれから助けに行くところなんだ!てなわけで邪魔すんな!ヒゲ抜いてそこらに散らすぞ!さしたる目的もなく!」


「なるほどな、事情は分かった」


 え、突っ込んでくれないの?なんか寂しいわ。俺だけ一人ぼっちみたいなの嫌だわ。孤独のグルメだわ。


「おい兄ちゃん……俺たちも連れてけ」


「へぅぇぇぇぇぇ?」


 急なドロボウたちからの気持ち悪い申し出に、碑文谷教授のような顔と声をして聞き返す。


「お前みたいなモヤシっ子だけじゃ、あのキザ王子はおろか、その部下にもなます切りにされて終ぇだろ。俺たちはアイツの家も知ってる。悪い話じゃねぇはずだ」


「そのモヤシっ子に負けた二人組を連れてっても、戦力はさほど増さないと思うが。まぁ来るものは拒まず去るものにはへばりつくのが俺の信条だ。仕方ないから地図として使ってやる。カタカゲ アマネだ。栗きんとんが好きだ。あの食感がクセになるんだ。いややっぱ嫌いだ。あの食感が苦手だ。趣味は趣味のない自分を客観的に見つめることだ。じゃ、ついてこい……ポッツォ、ミネルヴァ」


「よく一言でそんなにツッコミ所満載のこと言えるよなお前!!カンで当てる気ならもっとありがちな名前にしろよ!俺はジョン!コイツはジャックだ!」


「いや中学校の英語の教科書によく出てくる海外からの留学生か!もうええわ、どうもありがとうございました!」


 俺はなんかよく分かんないけど新しく味方になったドロボウ……ジョンとジャックの頭をひっぱたいて全力疾走した。


 んですぐに捕まってぶん殴られた。ちょっと気にしてたらしい。



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