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拝啓、お姉さまへ  作者: 一華
4月
9/52

お姉さまに聞きたいことがあります! 4

薫さんはなんてことないように、顔をそらして、先輩方に向き合った。

「あの、先輩方にお伺いしたいんですけど」

「何かしら?」

薫さんが手を上げると、どうぞと促される。

「常葉学園の助言者(メンター)制度なんですけど。今日陸上部の二年生の先輩からペアになるように申し込まれたんですが、あれは断れないんですか?」  

「お断りしたいの?」

「はい」

きっぱりとした薫さんの言葉に、二人の先輩は顔を一度見合わせてから、凛子先輩の方が質問を重ねた。

「どうしてか聞いてもいい?」

「自分より記録の出ない人に、教わることがあるように思えないからです」

薫さんが、あっさりと言い切った言葉に思わず固まってしまう。

幸さんも目を丸くして、驚きを表現していた。

薫さんの言葉は、あまりにはっきりとしていた。


「なるほど」

遥先輩は驚かなかったのか、クスクスと笑って凛子先輩を見つめた。凛子先輩は気まずそうに遥先輩を見返してから、一度肩を竦めた。

「薫さんは有望な一年生と聞いてるわ。陸上部は代々、部長が次期部長にバッチを渡しているみたいだから、その二年生は次期部長なのかもしれないわね」

「決まり、なんですか?」

「伝統、みたいなものかしら?でも助言者(メンター)制度は上級生が助言する立場だから、後輩の方が優れてるなら、お断りも可能なはずよ。元々お互いの意思も必要だし」

そこで一度区切って、生徒会長は言い淀んだ。何かを考えるように思案してから顔を上げる。

「私から、陸上部の部長か顧問の先生に話してみましょうか?」

「あ、いえ。大丈夫です」

薫さんははっきりとしている。

「断れるのが分かればそれで。後は自分でなんとかします」

だ、大丈夫なんだろうか?

あまりにもさっぱりしている薫さんの態度に、心配になってしまう。

それは多分、凛子先輩もだろうが、あっさりと頷いた。

「そう。じゃあ何かあったら相談してね」

「分かりました」

薫さんがニッと笑って了承する。

どこか男性的な仕草が、目を引く人だ。

顔だちも整っているし、薫さんは女性にモテそうだなと思う。

言ったら嫌がられそうな気もするから言わないけど。


「この際だから、何か疑問があったら聞いたら?」

空気を変えるように遥先輩がにっこり笑って促すと、幸さんが手をあげた。

「どうぞ」

「凛子先輩のされてるバッチが、生徒会長のバッチなんですか?」

いわれて生徒会長の襟元を見ると、両翼の絵の金のバッチが見えた。

「ええ、そうよ」

「そうなんですね!うわあ」

感動するような幸さんの声に、柚鈴は首を傾げた。

この金バッチが生徒会長のバッチ?

色の違いに意味があるということ?

「あの」

決心して手を上げる。

「メンター制度のバッチは、何色なんですか?」

「色は、銀、かしら」

「銀色、ですか?」

色にこだわる柚鈴の様子に、遥先輩がきょとんとした表情をしてから、口を挟んだ。

「もしかして、凛子のバッチが金だから?それで色を気にしたなら、だけど、そもそもバッチのデザインも違うのよ」

「え?そうなんですか?」

聞き返すと幸さんもうなづいた。


助言者(メンター)制度のバッチのデザインは片翼なんだよ。左翼を先輩が、右翼を後輩がつけるんだよ。2年生がもし上級生と下級生にそれぞれペアを持つと、襟元で翼が両翼になるの」

よく知っているわね、と、遥先輩に褒められて嬉しそうな顔をしている幸さんの横で、柚鈴は慌てて質問を重ねた。

「じゃあ、両翼の絵って生徒会長だけなんですか?」

「いいえ。両翼のバッチは、生徒会役員の証なのよ」

「えぇ!?生徒会?」

思わず立ち上がり、大きな声で聞き返してしまい、びっくりした4人が一瞬黙る。

「何か、そんなに驚くようなこと言ったかしら」

遥先輩にキョトンとした様子で聞き返され、慌てて座り直すと、凛子先輩が落ち着かせるように柔らかく微笑んだ。

「生徒会長は金、役員は銀、そして一年生二年生の役員見習い、もしくは手伝いとなる人に与えられるのはブロンズ」

「一年生の見習いは、基本的に学年首席ですよね」

「基本はね。まれに例外もあるけど」

ちらりと、意味ありげに凛子先輩が柚鈴を見るので、わけもなく焦ってしまう。

生徒会役員見習い?!

学年首席?

予想外の言葉が並んでしまった。


「一年生の学年首席は強制なんですか?」

薫が聞くと、これは肯定された。

「常葉学園は学校行事もだけど、OG接待なんかも多いのよ。学園内に大きな同窓会館があるでしょう?あそこで頻繁に集まりがあるから、生徒会はそれのお手伝いがあるの。とても役職だけでは足りなくて、お手伝いも募るの。細かい仕事は、引き継ぎも兼ねて一年生からも役員見習いに付いてもらうことになっているのよ。首席入学者は概ね特待生だから、学園側も頼みやすいのよ」

「とすると、もしかして生徒会長も主席入学だったんですか?」

「私は次席入学だったみたいだけど、それなりに手伝ったわ。ブロンズのバッチを頂いたのは2年生の時よ」


遥先輩が薫さんににっこりと笑ってみせた。

「生徒会のバッチを持ってたら、助言者(メンター)制度のペアを持たなくても良いわよ」

「そうなんですか?」

「ひとまず、生徒会長は全生徒の模範であり全員の助言者(メンター)となるという建前で絶対。その他も特に強い希望がなければ、ペアは持たないわ。生徒会業務が忙しいから、学校側の配慮もあるし、一年生首席なんて助言者(メンター)側も指導しにくいのよね。薫さん、生徒会見習いしてみる?」

「うわ。大変そうなんで、遠慮します」

話は続いていくが、柚鈴は志奈さんの存在が頭にちらついて仕方なかった。

学年首席とも特待生とも聞いていないが、生徒会見習いではあったらしい。

助言者(メンター)制度に関わりのなかった理由は分かったけど、このバッチを生徒会見習いになったわけでもない柚鈴に渡して、良かったんだろうか?


いや、ダメだろう。

真意が分からず、オレンジジュースを一気に飲んでも味を感じなかった。

志奈さんに聞いたら、教えてくれるだろうか?

妙にご機嫌な志奈さんから、「要求されること」があるのが目に見えて、とほほと肩を落とした。

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