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拝啓、お姉さまへ  作者: 一華
4月
7/52

お姉さまに聞きたいことがあります! 2

お風呂セットを持って部屋を出ると、隣の部屋から出てきたらしい子とばったりと出くわした。

一年生の子だ。名前はなんだったっけ?と記憶を辿る。

夕食の前に食堂の説明を受ける前に集まった一年生同士で挨拶をしたものの、緊張していたのでほとんど覚えていない。

困っているとこちらを見つめる澄んだ瞳と目が合った。

「改めて、はじめまして。隣の部屋に入ることになりました。一年生の春野幸(はるのゆき)です」

「こちらこそ、改めて。小鳥遊柚鈴です。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

柔らかな笑顔で微笑まれて、可愛い子だなと思った。容姿云々というか、空気がほんわかしてる。

隣の部屋が幸みたいな子で、なんだかほっとした。


お風呂上がりかと観察してみると、幸の肩にかかる髪は後ろで一部分だけ纏められて結ばれているが、濡れていた様子はない。手には、お風呂セットを入れてるらしいカゴを抱えている。

どうやら幸も浴場に行くところらしい。

「あの、お風呂入る所だったら一緒に行かない?」

子犬みたいに、小首を傾げてお伺いを立てられる。

確か、幸さんは長野から来た、と言ってたな。

柚鈴は夕食前の自己紹介の時間のことを思い出した。

緊張しながらも笑顔で、ゆっくり丁寧に自己紹介をしていたのが彼女だった。


「なんだかみんなの大浴場なんて、どきどきしちゃうね」

「そうだね」

「さっきの食堂もなんだか緊張しちゃって、美味しかったのは覚えてるんだけど、何食べたかイマイチ覚えてないよ」

「え?ハンバーグだったよね?目玉焼き乗ってた」

「はぁ!そうだったー!半熟玉子だったね。美味しかったなぁ。また食べたいなぁ」

ころころ変わる表情に、ふふっと笑ってしまう。

このほんわかは、どうも感染するものらしい。


大浴場は一階の中央奥にある食堂を過ぎての、寮の最奥にある。

中は広々としていて、髪を乾かすための洗面台には大きな鏡が何枚も飾られている。奥に着替えるためのロッカー、それから大浴場に続く扉がある。

木材を多く使っていて、まるで温泉に続いているような内装に、まだ入ってもないのに癒し効果絶大。

幸と2人で感動していると、入浴を終えた1年生たちが「お先に」と部屋に帰っていくのにハッとした。

慌ててロッカーに向かう。


「はうっ憂鬱だなぁ」

「なにが?」

「私、体型キューピーちゃんなんだもん」

まじまじと言われ、思わず見つめると、はふっと体を両手で隠された。

「セクハラは大反対っ」

「大して私も変わらない気がするけど」

「違うよー!スレンダーとキューピーちゃんは違うよー!」

「スレンダーは褒めてない、よね?」

思わず手を止めて、言葉を返してしまい、中々着替えが進まない。


そうこうしてる内に後から入ってきた人が

「その調子だと、私が上がっても居そうね」

と笑って、先に浴場に進んで行ってしまった。

はっとして、2人で慌ててイソイソと服を脱いだ。

先に体を洗ってから、お風呂に浸かる。

「広いお風呂気持ちいいねー」

はふーと、どちらからともなくため息。

どうものんびりし過ぎたらしく、湯船に浸かってるのは、先ほど追い越した人と3人だけだった。

それどころか、二年生が入り口まだ来て、お風呂の準備を始めているので、最終グループだろう。


なんとなく、もう1人に目が行く。

日に焼けた肌とお風呂に浸かってても分かる背の高さ。短髪が男の子みたいな少女は、おそらく同級生だと思うが、間違いないだろうか?

少なくとも食堂では挨拶してない。


「あの、さっき夕食でお会いしませんでしたね」

「部活、してきたから。さっき帰ってきて慌てて食べたの」

「部活?と言うことは」

先輩だろうか?と言葉を選んでいると

「1年だよ。入学前だけど、練習させてもらってるの」

一年生なのか。良く通る声をしていた。

なんだかカッコいい。

その言葉に2人から自己紹介をすると、はにかむように笑って見せた。

「高村(かおる)。陸上部よ」

「脚早いの?」

「まぁまぁ、かな」

そういいながら、どこか自信を感じる言い方だ。

常葉学園は、スポーツ推薦からの特待生受け入れもしていたはずなので、その枠での合格者なのかもしれない。

部活動に既に参加しているとは、一足先に常葉学園の一員になったようだ。

ワクワクする気持ちになってしまう。

「学園はどうだった?」

「今日は部室とグラウンドしか見てないけど、良く整備されてると思ったよ。わざわざ出てきて良かった」

「薫さんはどこ出身なの?」

「静岡」

短く答えつつ、疲れを癒すように伸びをする姿はどこか絵になる。


「そういえば、助言者(メンター)制度のこと聞いた?」

ふと思い出したように、薫さんが口に出した。

さっきまで志奈さんと話していただけに、柚鈴は口ごもってしまう。

湯だったのか少し赤くなった顔の幸さんがうんっと大きく頷く。

「聞いたよ!と、いうか聞いてたというべきかな。親戚に常葉学園出身者がいるんだ。その時とは制度変わっちゃったみたいだけど、今の助言者(メンター)制度についても教えてもらった」


幸さんの親戚は『お姉さまと妹』がメインだったころに常葉学園にいたんだろうか?

私がお風呂に鼻近くまで浸かって話を聞いていると、薫は困ったように頭をかいた。

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