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別世界の日本で納豆を食べる話

作者: 木之元大地

 どうも。異世界に来ました。

 来ちゃいました。来ちゃったんですよ。

 余りに暇なので深呼吸からのよっしゃをしようとして、よっゴブヘハッ、みたいになったと思ったら異世界に、です。

 深呼吸から叫ぶの無理。息を吸いきってからのよっしゃはきついし、息を吐ききってももちろん。

 ただ、やはりエネルギーは凄かった様で、色々吹っ飛び、そう。

 神さん、異世界に転移ですよ。

 その際に、溜めてた力やら、なんやかんやも飛んで、戻れません。溜めねば、得ねば。

 まあ、分霊分社にあれらは無事ですからね、私のいた日本は大丈夫でしょう。


「おーう、神さま。飯持ってきたぞ」

「あぁ、ありがとうっございます、おはようございます、何時もお供えいただきすみません」

「やーやー、神さまのお陰で妻も子もピンピンしてるのよ、これぐらい気にしねぇでな。それに、日本の話も聞けるし」

 彼は私が転移した先にあったお家の世帯主さんで、ファルファリオスさんです。ファルファリ♂です。犬面なので。

 奥さんも娘さんも犬面です。

「と言っても、話せるのは漫画やらアニメやらドラマなんなですけどね。技術は同じですし」

「まぁなぁ。犬面に生まれたのがびっくりしたぐらいしか生活に変わりはないし」

「サラリーマンさんですからね、たしか。信仰がまだ身に近い世界でよかったです、本当」

「近すぎて俺なんかタメ口だけどな」

 別世界の神で、祟り神でもないから、まあ、そんなもんでしょう。神としての力はあれど、世界との縁がなく、ならば代わりになる接続もしていませんし。

「さて、今日の朝ごはんですが」

「朝ごはん、ですか」

「納豆と海苔、いりこで取った豆腐の味噌汁に、卵焼きですよっと」

 納豆、納豆ですか。いやぁ、大好物ですよ。

「神さま、納豆大丈夫だよな?おんなじ日本人でもダメなやつダメだったし」

「大丈夫、大好きですよ、納豆は。インターネットで見たパワー納豆は嫌ですが」

 パワー納豆はこわい。こわい。あれは嫌だ。こわい。

「そのパワー納豆がなにかは知らんが、普通の納豆だ。タレ入りだけど、醤油もつけとく」

「塩分取りすぎですね、日本人」

 たまごかけごはんとか醤油食ってるな感じが。

 味噌とかもろに塩ですし。

「ファルファリオスさんは塩分気をつけてくださいね。早死には駄目ですよ」

「最近は調子いいし、大丈夫だろうさ。神さま拾った御利益かねぇ」

「だといいんですが、力とかなくなっちゃいましたからね、一回」

 哀しいことに。

 悲しいことに。

「まあそれでも無病まではいかずとも、病を遠ざけるぐらいは出来ますからね、健康に過ごして頂ければありがたいことです」

 蓋を開けて、タレと辛子をどかして不透明のビニールを取る。

 挽き割りだった。

 私は光った。強い。

「何故、挽き割り納豆なのでしょう」

「いやこう値段で見て挽き割りの方が少し高いからお供えにいいかと」

「そうですか。…………そう、ですか」

 私のことを思ってなら何も言えません。

 丸の大豆のままが好きだったりしますが、挽き割りも美味しいですしね。

「ありがたくいただきます。急に光ったりしてすみませんね」

「あ、いや、気にしなくても」

「いえいえ」

 タレの小袋を開けて、納豆に。ほんの数滴醤油。辛子は全部。ご飯にかけて、味付け海苔で巻くように。

 一口。

「あぁ、久々の納豆はいいですね」

 ただ、やっぱり塩食ってる。

「卵焼きもふわりとして素晴らしい。なんでしたかね、巨人たいほー卵焼きでしたか。いやはや、甘いのもいいものです」

 味噌汁も一口。豆腐と葱と、少しのわかめ。

「今日のご飯も美味しいですね。どれ、食べてる途中ではありますが、朝の挨拶に参りましょう」

「あ、その、神さ」

 座ったまま浮かんで、襖を開けて、ドアを開けて。

 ダイニングキッチンでご飯を食べる奥さんと娘さんの前に来て気づいたのです。

お二人の手元。

 納豆です。

 小粒、納豆です。

 私は光った。

自分はひきわり派

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