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8 クリーニング

 宿に戻るともう夕食の時間だった。

 購入した服を部屋に置き、さっそく食堂に行く。一番乗りのようで、他の客はまだ誰もいない。6人掛けのテーブルが6つ置いてあり、その奥に厨房が見える。

 厨房との仕切りにもなっているカウンターのところでトレーに乗った食事一式を受け取り、テーブルに自分で運ぶ。白い米の飯と焼き魚だ。米が有るのには驚いたが、この世界での初めての食事だ。お腹が減っている感覚は特に無いが、食べてみる。

 うまい! 最高だ! あー、味覚が有ってよかった。


 夕飯を食べながら周りを見てみると壁にカレンダーが貼ってあった。それと少し大きめの時計も掛かっている。あまりにも薄型なので掛かっているというよりは、こちらも貼ってあると言うのが正しそうだ。時計はアナログ表示だが文字盤の中には今日の日付も表示されていた。

 ついに今の日時を確認できた。今日は1507年3月16日。製造されてから既に300年以上経っていたことになる。

 ルナは時計を知らなかったようで、時計の見方を教えてあげた。

《300年前は時計なんて有りませんでしたよ》

 ルナの時計はほぼ合っていたが、1日のスタートの基準が異なるのか、若干違っていたので補正する。

 メニューで誕生日がようやく表示されたのを確認した。1486年2月28日生まれだ。


 食べ終わった俺は、トレーを返却口に返し、ようやくやって来たこれから食事をする客とすれ違うように部屋に戻った。


 購入した服にさっそく着替える。

 服屋で思いついた服へのエナの流し込みを練習してみる。服の隅々までエナを行き渡らせるのは少しコツが必要だったが、慣れれば問題は無い。通常使用で劣化しない程度を維持するためだけであれば、全身の服にエナを常時流していても1日50EPほどの消費だ。50EPといっても実際にはEPの自動回復があるので、減っていることに気がつくことは無いだろう。


 後は、ベッドに寝ころびながら静かに過ごすか。


 お金を手に取って見る。綺麗な刻印がされている。材質はなんなんだろう。金銀銅に見えるが、純金とかってことは無いんだろうな。

《解析してみましょうか?》

 お、解析できるのか。

《異空間収納庫に入れれば解析可能です》

 そう言うと、手からお金が一瞬消えて、再び現れる。

《解析しました》

 早いな。

《銅がベースで、色を付けるために金銀を少し混ぜていますね。それと魔力が封じ込められているようです。恐らく偽造防止用だと思われます。あとは汚れにより色がくすんでいます》

 へー、魔力で偽造防止か。凄い技術だな。


 汚れも解析できたということは、もしかすると。

 ルナ、この銅貨から汚れだけを取り除くことが出来るか?

《それはできません。一度流体に変化させても良ければできますが、元の形に戻すことができませんので、取り除いた後は金属の塊になってしまいます》

 無理か。

 ん? すると水や空気を綺麗にするのは出来るということか?

《はい。それならできますね》

 今度試してみるか。



 さて、久しぶりにゆっくり出来るので、メモに残っている『プログラムについて』を確認する。


<プログラム>

・スキルや魔法と同等の現象を実現するための手法や設計図などは、プログラム構築モジュールに送ることでプログラム化でき、それをパッケージ化することが可能です。このパッケージを機能と呼びます。

・手法の導出や設計図への展開、およびプログラム構築モジュールへの送信はAIシステムが行います。

・他に、自作プログラム作成用のエナ操作モジュール群やライブラリ群があり、プログラム構築モジュールに頼らず独自のプログラムを作成することも可能です。独自プログラムもパッケージ化が可能です。

・作成方法などは、EPプログラミングマニュアルに従ってください。


 ついに来たな、俺の得意分野。

 ルナ、EPプログラミングマニュアルを表示してくれ。

《はい》

 目の前にマニュアルが表示される。

 内容をパラパラと斜め読みして見る。

 相当なボリュームがあり理解するにはかなりの時間が掛かりそうだ。

 これからは、夜はこのマニュアルの解読を行うこととしよう。

 そう思いながら、とりあえず読み始めて見た。





 朝5時を過ぎた。そろそろ動き始めてもおかしくない時間だろう。EPプログラミングマニュアルを閉じて、ベッドから起き上がる。

 服にエナを流したまま柔軟体操のように少し体を動かしてみる。問題無さそうだ。

 破れにくくなるのか確認しよう。

 買ったばかりの服で試すのは気が引けたので、昨日洗って既に乾いているボロ服を手に取り、ナイフも用意する。

 まずはエナを流していない状態でボロ服をナイフで切ってみる。切れる。

 ボロ服にエナを流し、ナイフで切ってみる。思った通り切れない。ただ、かなりの力を入れると切れるようで、この材質はエナによる強化の限界は低そうだ。

 両方にエナを流して切ってみる。まあナイフが勝つな。


 あれ? 服にエナを流せるのであれば、流している間にクリーニングも使えるんじゃないのか?

《出来る可能性は高いですね》

 汚れてもいいようにシャワー室で実験を開始する。

 まずは、ボロ服を手に持ちエナを流す。そのまま手の先をクリーニングするイメージで実行してみる。

 ボロ服から黒ずんだ汚れがパラパラと落ちる。染み込んでいたゴブリンの血なんかも取れている。あっと言う間に新品のような色と触り心地だ。まあ、ボロボロなのはそのままだが。

 綺麗にたたんでみると新しいタオルに見えなくもない。

 今度はボロ服を水で濡らす。

 その状態でエナを流し、クリーニング。

 ボロ服から水がジャーっと落ちて、あっと言う間に乾いた。


 昨日買った紐でも試したが、問題なくクリーニングできる。ただし、クリーニングを強めに行ってみたところ、せっかく染めてあった色までも落ちてしまうことが分かった。強弱を間違うとダメだな。まあ、漂白したい時は便利だろうが。



 今度は銅貨を1枚取り出す。

 同じようにエナを流しクリーニングすると、これも汚れがパラパラと落ちる。

 おおー、ピッカピッカだ。新品の輝き。綺麗過ぎて逆に偽物っぽいぞ。

 身分証のサイフに入れて見るが、正しく金額が表示されたので、偽物に変わったりはしていないようだ。



 こうなると、錆だらけの剣にもクリーニングを試したい。どうなるのだろうか。

 ベッドの横に置いてあった剣を持ち、再びシャワー室に入りクリーニング実行。

 錆がボロボロと一気に剥がれ落ちた。

 見違えるほど綺麗にはなったが、錆に侵食されていた部分はボコボコだ。まあ、サビだらけよりは遥かに見栄えは良くなった。


 クリーニングした結果として、シャワー室の床にはかなりの量の錆が散らばっていた。

 これ水で流していいのか? 環境的にどうだろうか。

 掃除しようにも、水で濡れているところに錆が散らばっているので拾い集めるのは大変そうだ。

 ルナ、この錆を異空間収納庫に入れられるか?

《錆に手を近づけるか、手で触れてくれれば収納できますよ》

 手を近づけるだけでもいいのか。

 ルナ、どの程度近づければいいんだ?

《5cmぐらいですね》

 水はそのままで錆だけ収納できるか?

《できますよ》

 じゃあ、手を近づけるので収納して見てくれ。

《分かりました》

 錆に手を近づけると、錆が消える。

 手を動かしどんどん収納して行く。錆が手に吸い込まれているような錯覚に陥る。

 まるで掃除機だな。しかも水は吸い込んでいない。吸い込む物を選り分けられる超高性能掃除機だ。

 そうだ、手で持った木刀を近づけてもできるか?

 木刀にエナを流し、木刀の先を錆に近づける。

《できますね》

 錆が木刀に吸い込まれていくようだ。

 これならしゃがまなくてもいいし、本当に掃除機のようだ。

 木かなにかでT字型のノズルのようなものを作れば、掃除機に見えそうだな。

 今度作ってみるか。



 さて、そろそろ朝食が始まる時間だ。そう思い食堂に向かう。

 体的には食べなくても全く問題無いのだが、宿代に含まれていて食べないと勿体無い。というのもあるが、やっぱり美味しいというのが食べる一番の理由か。

 言い方を変えると、うまい物しか食べなくていいってことだ。これは夢のような体を手に入れたかも。


 食堂に着くと、アンナさんがいた。

「アンナさん、おはようございます」

「あ、アースさん。おはようごさいます。早いですね」

「アンナさんもいつもこんなに早いんですか?」

「そうですね。宿の仕事があるのでだいたいこの時間です。でも、いつもは別の部屋で食べるので、このお客様用の食堂で食事することは滅多にないんですよ」


 アンナさんもこれから食事だとのことで、ご一緒することにした。


 アンナさんにこの村のことを少し教えてもらった。

 この村の特産物は塩とのこと。北東の山の地下から上質な岩塩が取れるらしい。山の地下への出入り口は村の中にあり、そこから岩塩を採掘し、食用などの塩に加工して出荷している。

 この村は観光用では無く、働くための村だとのこと。

 出稼ぎで来ている人も多い。



 アンナさんに村の案内用の地図を貰った。小さく畳まれていたが、広げてみるとちょうど座布団一枚ぐらいの大きさだ。

「さて、何があるかな?」

「大した設備はないですよ」

 全体的に見てみる。

「この案内所はアンナさんがいた案内所ですか?」

「そうですよ。私が昼間に働いているところですね」


「雑貨屋はあるみたいですけど武器屋とか防具屋は無いのですか?」

「雑貨屋が武器屋、防具屋も兼ねてますね。あまり大したものは置いてませんよ。ちゃんとした物が欲しい場合は、町まで行ったほうがいいですね」


「食事処、宿屋もいくつもありますね。服屋、市場なんかも何軒かあるし」

「宿は、うちもそうですけど仕事で来た多くの人が使いますね」


「職業斡旋所なんかもありますね」

「この村でのお仕事を紹介してもらえますよ。まあ、仕事の種類は選ぶほどは無いですけどね」


「ん? このバス乗り場って?」

「ここは町との定期バスや、村内の周回バスの乗り場ですね。大きな駐車場もあってマイカーなどもここに停められます」


「バス?」

「はい、バスです。定期バスは40人ほど乗れるバスで、毎日3便がこの村と町とを往復していますよ」


「バスというのは馬車とは違うんですよね?」

「ええ違います。見たこと無いですか? うちにも10人乗りのマイクロバスなら有りますよ。見てみますか?」

「是非見せてください」


 マイクロバスは宿の裏手の駐車場に停めてあった。

 見るからにマイクロバスだ。色は白く、箱型をしている。

 しかしタイヤが付いていない。ええー? どうやって走るんだ? ルナ知ってるか?

《全く知りませんけど》


「あの、タイヤが付いてないみたいですけど」

「え、タイヤですか? えっと、バスにはタイヤは付いてないですね。普通」

「そうなんですか」

「ええ。昔の馬車とかにはタイヤが有ったようですね。学校で習いましたよ」


「7時半に宿泊者を工場に送迎しますが、乗ってみますか?」

「是非、お願いします」



 一旦部屋に戻り、先程貰った地図を眺める。

《この国の名前はフィンプラスって言うみたいですね》

 ああ、そう見たいだな。貰った地図の左下あたりにこの国のおおまかな地図とロネス村の位置が示されていて、その上にフィンプラスと少し大きめの文字で書かれている。今いる国の名前すら知らないって、はっきり言って世間知らず過ぎるな。

 ロネス村のすぐ横にランスベルの位置も描かれていて、ルナの地図とほぼおなじだった。あと、王都やその他の目ぼしい町や村も記載されている。地図の縮尺が正確じゃなさそうなため距離までは分からないが、だいたいの位置は把握できる。ルナの地図にもそれらの情報が追加されたようだ。



 暫くして7時半近くになったので駐車場へ行ってみると、アンナさんも来たところのようで、ちょうどバスに乗り込むところだった。運転はアンナさんがするようだ。

 運転席にアンナさんが座ると、なんとバスが20cmほど音もなく浮いた。車体の下を覗いてみたが完全に浮いているようだ。

 マジかー。

《マジみたいですね》

 アンナさんの魔法か?

《さあ、どうでしょう?》

 アンナさんに聞いてみるか。


「これはどういった原理で浮いてるんですか?」

「んと、私も詳しくは知らないんですけど、魔法陣が付いていて魔石で動くんです」

「へー、そうなんですか……」

 良く分からない説明だが、魔法陣ときたか。

《つまり、物を浮かせられる魔法陣がマイクロバスに埋め込まれていて、その魔法陣に魔石の魔力を供給することで浮上するということなんでしょうね》

 そんな魔法陣があるのか。重力をどうにかできるって事だろうか。ルナ、同じような機能が作れるか?

《考察中ですが、時間が掛かりそうです》

 そうか、引き続き頼む。


 俺も乗り込み、一番前の席に座った。少しすると他に6人が乗り込み出発となった。

 乗り心地は最高だ。すーっと走って、すっと止まる。けたたましいエンジン音もなく、変な振動も無い。

 運転席には丸いハンドルではなく、飛行機に使われそうな操縦桿が付いている。それを片手で前後左右に動かしバスをコントロールしている。

《運転は簡単そうですね。アースでも運転出来そうですよ》

 でもってのは余計だが、確かに簡単そうだ。


 驚いたのが、曲がり角で横Gがかからないことだ。普通なら、どんなにゆっくり曲がっても横に押し出される遠心力がかかるはずなんだが、それが一切無い。

《横方向の重力も細かく制御しているようですね》

 横Gに慣れている俺からすると、なんとも不思議な感覚だ。ただ座っているだけなのにバランスを崩しそうだ。例えていうなら、停止しているエスカレータを登ろうとしたときに転けそうになるのに似ている。まあ、直ぐに慣れるだろが。


 10分ほどで工場の門の前に着いた。

 6人全員降りて、皆、門に設置されている石板に身分証をタッチして工場に入っていく。


 帰りはアンナさんと2人だ。ちょっとしたドライブだな。


「空とか飛べそうですね」

「それは流石に無理ですね。このバスは空を飛ぶようには作られていませんからね」

 ということは、この世界には飛行機などの空を飛ぶ乗り物も有るといことか。

《そのようですね》


 平な道であれば結構なスピードが出るとのこと。

 ある程度の高さの障害物なら、高度が自動的に調整されて難なく進むことができる。

 上り坂でも問題はないが、頑丈ではないため山など魔物が出るような場所では使われることはないそうだ。

 ただし、山用の乗り物が無い訳ではないらしい。


 宿に戻った後、アンナさんは仕事へと向かった。





 暫くして雑貨屋へと向かう。

 目的は、剣に合う鞘だ。剣を裸のまま持ってうろうろしていると如何にも怪しげなので、鞘が必要なのだ。武具も雑貨屋に売っているらしい。

 店に入ってみる。いろいろな物が所狭しと並べられている。

 さて、あるかな。

 店主に聞いてみるも、この剣の形が古すぎてバッチリ合うものは無いようだ。仕方がないので、多少ぶかぶかでも無いよりはましと言うことで適当な金属製の安い鞘を購入。2000エル。


 せっかくなので、他の物も見て回る。

 他にあったものは、料理道具、掃除道具、カバン、タオル、文具など生活雑貨が主か。

 武器や防具は対ゴブリン用ぐらいで店の片隅に申し訳程度しかおいていなかった。



 北側の壁から外を見ると、一人の作業員が新しい壁を立てているのが見える。何が作られるのかは分からないが、壁は既に50mくらいが完成している。この村に隣接した別の村でも作るのだろうか。

 その作業員は草色の作業服に、黄色いヘルメット、黒っぽい地下足袋という前世で良く見た格好をしている。望遠機能で良く見てみると、その作業員は体格も良く無精髭を生やしており、いかにも熟練者といった50歳くらいの中年の男だ。

 穴を掘って、そこに長さ4mほどのガラス状の分厚い板を慎重に立てていく。

 板を立てる時には重機を使って板を吊り上げているが、穴を掘るのは手作業というか魔法だ。土魔法だろうか。

 穴も重機で掘ればいいと思うのだが。ちなみに重機にもタイヤなどは無く地面から僅かに浮いている。

 その他にも、板を洗っているのだろうか重機で吊り上げた際に水を掛けて風で乾かしているみたいだ。水魔法と風魔法か。

《魔法を3種類も使える人はそうそう居ないはずですよ》

 へー、すごい人なのかもしれないな。


 壁を作っている理由が気になったので、たまたま近くにいた老人に聞いてみた。

「あの壁を作っている理由って知ってますか?」

「ああ、あの壁か。この村が手狭になってきたってことで村を拡張するらしいよ」

「ロネス村が広くなるってことですか?」

「まあ、そういうことだね」

「へー、拡張ですか」



 皆当たり前の用に働いている。俺も何かして稼がなきゃ。このままでは数日で金が尽きる。

《お金が無くなったら洞窟にでも住めばいいじゃないですか》

 まあ、そうなんだけど。それは最後の手段にしたいなぁ。

《では、冒険者になるのはどうですか?》

 冒険者? もしかしてそれは魔物狩りを専業とするあの冒険者か?

《はい。冒険者です。冒険者ギルドに登録して、頑張って強い魔物を沢山討伐すると、お金も地位も名誉も手に入れられますよ》

 やっぱり有るのか冒険者ギルド。それが有るならやっぱ冒険者がいいなぁ。

《ただ、アンナさんに貰った地図を見る限り、この村には冒険者ギルドは無いみたいですね》

 次の町にはあるのか?

《私の知る限りでは有りますよ》

 じゃあ、町に行ったら冒険者ギルドに登録することにしよう。町に行った時の楽しみができたな。

《はい》

 取り敢えず、この村では他の方法でなんとか働いてみるさ。


 そんなことを話しながらも、少しずつ出来上がっていく壁。一人の男が黙々と壁作りを行っているのを俺は飽きずに見ていた。





 夕方になったので宿に戻ろう。


 夕食はまたしても一番乗りで、他人から見るとまるで暇人に見えることだろう。まあ、仕事をしていないので暇人なのは確かだが。

 夕食を食べ終えるころには、他の客もちらほら食堂にやってきて食事を始めている。客の中にはポタメらしきものを見ながら食事している人が何人かいる。電話でもしているのだろうか。

 食べ終わった俺は、トレーを返却口に返したついでに、そのポタメを何気に覗いてみた。んっ! そこには映像が写っている。テレビか? 内容は良く分からないがどうもニュースのようだ。スマホでは一般的な機能なのだが、気づいたら俺はなぜかそのポタメに釘付けになっていた。あまり見ていると変におもわれそうなので、気になりつつもその場を後にし、これから食事をする客とすれ違うように部屋に戻った。


 そういう事か。

《何がそういう事なんでしょう?》

 ポタメだ。みんなの情報源はポタメだったんだ。新聞やテレビや本が無いのがどうも引っかかっていたんだが、たぶん昔はテレビなども有ったんだろう。それが、今はそれら全てがポタメになったんだろう。つまりポタメが無いと全く情報が入ってこないってことだ。

《情報欲しいですね? ポタメって売ってるんでしょうか?》

 まあ普通に売っているとは思うけど。

《じゃー、買いましょうよー》

 確かに情報は欲しいが、金も無いし慌てる必要も無いんじゃないか? まだまだ俺の第二の人生は始まったばかりだ。町に行った時に考えても遅くはないと思う。

《はい》

 だが、いつかはポタメを持たないとダメっぽいな。そんなことを思いつつ、プログラムの勉強に取り掛かり明け方まで続けた。



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