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恋する猫の葛藤

作者: ぱくどら
掲載日:2015/02/22

 私は、ご主人様の祐樹さまに恋をしておりますっ!

 なぜかって? もう運命としか思えないのです! 愛や恋に理由なんていりませんっ!

 それになんとなく、祐樹さまとは以前、どこかでお会いしたように思ってならないのです。

 ……きっとわたくしの前世で、熱い絆で結ばれていたに違いありません。


 この言いようのない、ドキドキとする想いを伝えたい。

 けれど、わたくし、人間の言葉がしゃべられないのですっ!


 口を開けても「にゃーにゃー」という言葉しか出ません。

 ですが本当は違うのです。

 本当はもっと、もっと別のことをお伝えしたいのです。

 

 けれど、祐樹さまはお優しい方で、わたくしが鳴くと大きな手で頭を撫でてくれます。

 背中や顎の下、お腹も……至福の時です。もう、幸せなのです。


 だから、なおさら、わたくしは人間の言葉を使いたいのですっ!

 お慕いしている気持ちはもちろん、日々の感謝の気持ちを伝えたいのですっ!


 あぁ。

 神様。

 

 平日のお昼の孤独感。

 祐樹さまの携帯に電話して、おしゃべりができたらどんなに楽しいでしょうか。


 仕事から帰って、お酒を飲む祐樹さまの隣。

 祐樹さまの仕事の愚痴を、相槌を打ちながら聞けたならどんなに喜ばれるでしょうか。


 わたくしは、普通の猫ではなく少しでも役立てるような猫になりたいのですっ!



 ……と、夜空に鳴いても仕方ありません。

 神様なんてきっといないでしょう。


「……ただいまぁ」


 ハッ!

 祐樹さまがおかえりになられました。急いで玄関にお迎えに行かなければ。


「良い子にしてたか? よしよし……」


 大きな手で抱えられます。くんくん……女の匂いはないようです。

 あぁ……祐樹さま。もっと撫でてください。


「……よし、ちょっと降りてて」


 フローリングに着地です。

 どうやら祐樹さまはスーツを脱いでいるようです。じっと見ちゃいます。

 ……おぉさすが祐樹さま、良い身体です……鍛えられてて……たまらないですっ!


「……なんだ? 俺の裸でも見たいのか?」


 白い歯を見せてわたくしに笑いかけてくれましたっ!

 そうですとも、わたくし、祐樹さまを見たいのですっ!


「にゃーにゃー!」

「……え? 返事した?」


 ハッ!

 思わず祐樹さまの言葉に反応してしまいました。

 ……あれ、よく考えれば……これはこれで良いのではないでしょうか。


「……にゃん」

「……もしかして言葉がわかる、とか?」


 そうです、そうなんです、祐樹さまっ!

 わたくし、人間の言葉はしゃべることができませんが、言葉を理解することはできるのです。

 せめてそれだけでも知っていただけるといいのですが……。


「にゃーん」


 ちょっとだけ頷いてみましょう。


「えっ!?」


 あっ……。やりすぎました。

 祐樹さま……ドン引きされています。


 こ、これはまずい。疑いの眼でわたくしを見下ろしていらっしゃいます。

 や、やはり猫らしく振る舞わなければいけませんっ……!


「ゴロゴロ……」


 足元にすり寄って鳴けばイチコロなのです。

 身体を足に擦りつけながら、ひたすら鳴きます。

 祐樹さま、わたくしはただの猫です。さぁ、撫でてください。


「……うーん、やっぱり変わった猫だなぁ」


 と言いつつ、やはり祐樹さまは撫でてくださいました。

 やっぱり気持ち良いです……。


「拾ったときからどうも……言葉を理解しているような節があるな……気のせいだといいんだが……」


 ちらりと顔を伺うと、まだ疑いの眼で見ていらっしゃいます。

 ……猫が言葉を理解していると気持ち悪いのでしょうか。ちょっと悲しいです。


「……うーん。まぁ……いいか! よしよし、お前はかわいいなー!」


 抱きかかえられました。目の前に凛々しい祐樹さまの顔がっ!

 こんなにも近いなんて、わたくしとっても幸せですっ!

 って……祐樹さま……どんどん顔が近づいてきているんです……がっ!


「……俺がシャワーから上がるまでご飯待ってろよ」


 ほ、ほ、頬にっ! 祐樹さまの唇がががっ!

 フローリングに降ろされても、わたくし、ドキドキして身体が動きませんっ!


「なんだよ、そんなに嫌だったか? ……ま、いいけど」


 ち、違いますっ! 祐樹さま、逆なのですっ!

 ああああ、もう、やはり、言葉をしゃべりたいのですっ!


 あぁ……お風呂場に行かれてしまいました。

 猫として愛されているのは……十分わかります。

 想いを伝えたい、けれど、それはきっと祐樹さまの望んでいることとは違うのでしょう。

 わたくしが猫らしく振る舞うことで、祐樹さまが癒されるならば、わたくしはこれを続けます。


 あぁ……いつの日か……。

 祐樹さまに面と向かって想いを告げることができるならば……。

 そして、祐樹さまがわたくしを受け入れてくださるならば……。


 そんな日を夢に抱きつつ、今日も猫らしく振る舞うこととします。 

お付き合いいただきましてありがとうございました<(_ _*)>


投稿した本日が2月22日で、猫の日、ということを知りまして……思いつきで書いてしまいました。


お楽しみいただけましたら嬉しいです。

お読みくださいましてありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] くんくん……女の匂いはないようです。 G子の個性がここに集約されている気がしましたっwww
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