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恋する猫の葛藤

作者: ぱくどら

 私は、ご主人様の祐樹さまに恋をしておりますっ!

 なぜかって? もう運命としか思えないのです! 愛や恋に理由なんていりませんっ!

 それになんとなく、祐樹さまとは以前、どこかでお会いしたように思ってならないのです。

 ……きっとわたくしの前世で、熱い絆で結ばれていたに違いありません。


 この言いようのない、ドキドキとする想いを伝えたい。

 けれど、わたくし、人間の言葉がしゃべられないのですっ!


 口を開けても「にゃーにゃー」という言葉しか出ません。

 ですが本当は違うのです。

 本当はもっと、もっと別のことをお伝えしたいのです。

 

 けれど、祐樹さまはお優しい方で、わたくしが鳴くと大きな手で頭を撫でてくれます。

 背中や顎の下、お腹も……至福の時です。もう、幸せなのです。


 だから、なおさら、わたくしは人間の言葉を使いたいのですっ!

 お慕いしている気持ちはもちろん、日々の感謝の気持ちを伝えたいのですっ!


 あぁ。

 神様。

 

 平日のお昼の孤独感。

 祐樹さまの携帯に電話して、おしゃべりができたらどんなに楽しいでしょうか。


 仕事から帰って、お酒を飲む祐樹さまの隣。

 祐樹さまの仕事の愚痴を、相槌を打ちながら聞けたならどんなに喜ばれるでしょうか。


 わたくしは、普通の猫ではなく少しでも役立てるような猫になりたいのですっ!



 ……と、夜空に鳴いても仕方ありません。

 神様なんてきっといないでしょう。


「……ただいまぁ」


 ハッ!

 祐樹さまがおかえりになられました。急いで玄関にお迎えに行かなければ。


「良い子にしてたか? よしよし……」


 大きな手で抱えられます。くんくん……女の匂いはないようです。

 あぁ……祐樹さま。もっと撫でてください。


「……よし、ちょっと降りてて」


 フローリングに着地です。

 どうやら祐樹さまはスーツを脱いでいるようです。じっと見ちゃいます。

 ……おぉさすが祐樹さま、良い身体です……鍛えられてて……たまらないですっ!


「……なんだ? 俺の裸でも見たいのか?」


 白い歯を見せてわたくしに笑いかけてくれましたっ!

 そうですとも、わたくし、祐樹さまを見たいのですっ!


「にゃーにゃー!」

「……え? 返事した?」


 ハッ!

 思わず祐樹さまの言葉に反応してしまいました。

 ……あれ、よく考えれば……これはこれで良いのではないでしょうか。


「……にゃん」

「……もしかして言葉がわかる、とか?」


 そうです、そうなんです、祐樹さまっ!

 わたくし、人間の言葉はしゃべることができませんが、言葉を理解することはできるのです。

 せめてそれだけでも知っていただけるといいのですが……。


「にゃーん」


 ちょっとだけ頷いてみましょう。


「えっ!?」


 あっ……。やりすぎました。

 祐樹さま……ドン引きされています。


 こ、これはまずい。疑いの眼でわたくしを見下ろしていらっしゃいます。

 や、やはり猫らしく振る舞わなければいけませんっ……!


「ゴロゴロ……」


 足元にすり寄って鳴けばイチコロなのです。

 身体を足に擦りつけながら、ひたすら鳴きます。

 祐樹さま、わたくしはただの猫です。さぁ、撫でてください。


「……うーん、やっぱり変わった猫だなぁ」


 と言いつつ、やはり祐樹さまは撫でてくださいました。

 やっぱり気持ち良いです……。


「拾ったときからどうも……言葉を理解しているような節があるな……気のせいだといいんだが……」


 ちらりと顔を伺うと、まだ疑いの眼で見ていらっしゃいます。

 ……猫が言葉を理解していると気持ち悪いのでしょうか。ちょっと悲しいです。


「……うーん。まぁ……いいか! よしよし、お前はかわいいなー!」


 抱きかかえられました。目の前に凛々しい祐樹さまの顔がっ!

 こんなにも近いなんて、わたくしとっても幸せですっ!

 って……祐樹さま……どんどん顔が近づいてきているんです……がっ!


「……俺がシャワーから上がるまでご飯待ってろよ」


 ほ、ほ、頬にっ! 祐樹さまの唇がががっ!

 フローリングに降ろされても、わたくし、ドキドキして身体が動きませんっ!


「なんだよ、そんなに嫌だったか? ……ま、いいけど」


 ち、違いますっ! 祐樹さま、逆なのですっ!

 ああああ、もう、やはり、言葉をしゃべりたいのですっ!


 あぁ……お風呂場に行かれてしまいました。

 猫として愛されているのは……十分わかります。

 想いを伝えたい、けれど、それはきっと祐樹さまの望んでいることとは違うのでしょう。

 わたくしが猫らしく振る舞うことで、祐樹さまが癒されるならば、わたくしはこれを続けます。


 あぁ……いつの日か……。

 祐樹さまに面と向かって想いを告げることができるならば……。

 そして、祐樹さまがわたくしを受け入れてくださるならば……。


 そんな日を夢に抱きつつ、今日も猫らしく振る舞うこととします。 

お付き合いいただきましてありがとうございました<(_ _*)>


投稿した本日が2月22日で、猫の日、ということを知りまして……思いつきで書いてしまいました。


お楽しみいただけましたら嬉しいです。

お読みくださいましてありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] くんくん……女の匂いはないようです。 G子の個性がここに集約されている気がしましたっwww
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