奏と相川とfate
CD発売の1ヶ月前、2月15日にheaven/spiritの両A面シングル発売がTwitterで告知された。
また、エンドレスのアニメのスポンサーにfateの所属レコード会社ゾロレコードが入りアニメの途中ではCD発売のCMも流れ始めた。
それと同時に、エンドレスの公式サイトではfateのCD発売記念スペシャルライブの応募が始まった。
受付期間はエンドレスの放映後から4日間。
Twitterや公式サイトでは、今回のライブは非売ライブだと言うことを伝えていたがfateのスタッフもアニメスタッフもどれだけの人数が集まるか心配していた。
特にfateのスタッフは5日後に始まる自動車メーカーのプレゼントもあるので、ここでどれくらいの人数が応募するかによって自動車メーカーの方の明暗も左右すると言うことで、とても気になっていた。
しかし、非売ライブと言うこともあってかエンドレスのサイトでの応募はスタッフの予想を軽々越えた。
エンドレスのサイトでは整理番号を発行し受付締め切りの翌日に当選者の番号をサイトに掲載した。
それにより自分の当落選が分かりやすく、もし落選した場合は自動車メーカーのサイトの方へすぐに応募できるようにした。
応募する方からしたら、一度落選してもすぐにチャンスがやってくるのでとても嬉しい企画になった。
放課後、琳たちとバンドの練習を終えて学校を出ようとしたとき奏のスマホが鳴った。
奏がスマホを見ると相川からの着信だった。
「もしもし」
と奏が出ると
『若狭奏君のスマホですか?』
と相川はふざけて言った。
「そうですけど…イタズラなら切りますよ」
と奏が言うと
『あー!待って待って。あのさ、今どこにいる?』
と相川は言った。
「今、学校出るとこですけど」
『学校?そっか、ちょうど良かった。あのさ、俺も今お前の学校の近くにいるんだけど、これから一緒に飯食べない?』
「飯ですか?…でも、俺友達も一緒なんで」
『友達?もしかして、誕生日にあった奴らか?』
「はい、そうですけど」
『だったらさ。その子たちも一緒にさ』
と相川は言った。
奏たちが相川の待つカフェに着くと
「よう、久しぶりだな。元気だったか?」
と相川は笑顔で言った。
「はい。まぁ、元気です」
と奏が言うと
「そうかそうか。最近、和も綾子も忙しそうだから奏一人で寂しいかなと思ってさ」
と相川は言った。
「別に寂しくないですけど…」
と奏が言うと
「そっか、もう高校生だもんな。で、今日は何食べる?どこでも良いぞ」
と相川は言った。
奏たちは相川に連れられてファミレスに行った。
「ファミレスなんて何年ぶりかな?10年は来てないな…」
と相川が言うと
「本当ですか?」
と琳は驚いた顔をした。
「まぁな。…それよりも本当にここで良かったのか?別に遠慮しなくて良かったんだぞ。高校生なら食べ盛りだろ?焼き肉でも寿司でも良かったのに」
と相川が言うと
「そんな所に行ったら何万もかかりますよ」
とさっちゃんが言うと
「この前のSperanzaの横浜公演のあとにメンバーを打ち上げに連れてったら一晩で何十万も無くなったぞ。それに比べたら可愛いもんだよ」
と相川は言った。
「プロデューサーってわけそんなに儲かるんですか?」
とさっちゃんが聞くと
「そんなには儲からないよ。特に俺は事務所の社員だからフリーの奴よりは貰ってないよ。まぁ、安定はしてるけどな」
と相川は笑った。
注文した料理が運ばれてきて、奏たちが食べ始めると相川は
「ところでさ、君たちはfateって知ってる?」
と聞いた。
「fateですか?あれですよね、エンドレスの曲の」
と勇次郎が言うと
「そうそう、それ」
と相川は言った。
「fate、カッコいいですよね?声とかナゴミさんに似てる感じだし。曲もめちゃくちゃカッコいいし」
と勇次郎が言うと
「だよな。絶対売れると思うよな」
とさっちゃんも言った。
「ライブ行きたくてエンドレスのサイトも自動車のサイトも応募したけど4人ともハズレたよな」
と琳が言うと
「4人で応募したの?奏も?」
と相川は驚いた顔をした。
「はい。4人で応募すれば誰か当たるだろと思ったんですが見事にダメでしたね。でも、ライブを生配信するって言ってたから家で見ますよ」
と琳が言うと
「あれね、競争率が本当スゴかったんだよ」
と相川は言った。
「相川さん、知ってるんですか?」
と琳は言った。
「そりゃな。うちの事務所だし一緒に仕事してるからな」
と相川は言った。
「一緒に?じ…じゃ、fateって日本人なんですか?バンドなんですか?それから…」
と琳が興奮気味に聞いたが
「悪いけど、fateの情報は漏らせないんだよ。マスコミも知らないし、芸能人でも本当に限られたごく一部の人しかfateの情報を知らないし、それもライブが終わるまで絶対に口外しないって約束してくれた人だけだから」
と相川は言ったあと
「だから、俺も何も言えないし…もしバラしたら仕事が無くなるかもしれないしな」
と相川は言った。
「奏だって両親から何も聞いてないだろ?同じ事務所でも」
と相川が言うと
「はい。まぁ、もともとそうゆう話は家でしないんですけどね。最近は前にも増してバカ夫婦だし、一緒にいる方が恥ずかしくて俺は部屋に引き込もってますし」
と奏は言った。
「前にも増して?何、和は綾子にべったりか?」
と相川が言うと
「べったりって言うか…。父さん、料理手伝ったり母さんがスタジオに入ると父さんもついて行ったり…。いつでも母さんと一緒にいたいみたいですよ。父さんの愛情の度が過ぎて心配になりますよ」
と奏は言った。
「ハハッ。和がね…。本当、いつまでたっても綾子が好きなんだな」
と相川が笑うと
「異常ですよ」
と奏はため息をついた。
「でもさ、俺は奏の両親のこと憧れるけどな」
と琳が言うと
「それはよその親だから思うだけだよ。自分の親だと本当嫌だよ…。本当、子どもの前で何してんの?って時もあるよ」
と奏は言った。
「そりゃ、うちの両親ならちょっとキモいけど奏の両親なら何をしても絵になるって言うかさ。…子どもの前でって何してんの?」
と琳が身を乗り出して聞くと
「そりゃ言えないよな?見てる方はまたかって感じだけど、あいつらのイメージもあるしな」
と相川は言ったあと
「そうだ、忘れるところだった。今日はこれを渡そうと思ってたんだよ」
とテーブルの上に封筒を置いた。
「これって」
と言って奏が封筒の中身を確認してると
「fateのチケット。事務所が関係者用にチケット配ったんだよ。スタンディングのチケットなんだけど、良かったら見に来いよ」
と相川は言った。
「でも、相川さんは?」
と奏が言うと
「俺は申し訳ないけど一スタンド席でゆっくり見させてもらうから」
と相川は言った。
「スタンド席があるんですか?」
とさっちゃんが聞くと
「まぁね。スタンド席は2階なんだけど芸能人とか特別なチケット持ったVIPしか入れないんだよ」
と相川は言った。
「相川さん、VIPなんですか?」
と奏が言うと
「どう見てもVIPだろ?」
と相川は笑った。
「そうだ。1つだけfateの情報教えてやろうか?」
と相川が言うと
「えっ、なんですか」
と琳は嬉しそうに言った。
「それは、fateは売れるってこと」
と相川が言うと
「それはそうでしょうけど…」
と琳が不服そうに言った。
「バカ、ただ単に売れるって訳じゃないぞ。海外でも通用するってことだよ」
と相川が言うと
「海外?」
と勇次郎は言った。
「そうだよ。英語で歌ってるって言うのもあるけど、そのうちボレロやSperanzaなんて比べ物にならないぐらい有名になるぞ」
と相川は言ったあと
「地球の裏側でライブやったりfateの歌を口ずさむ人がいたり…。あいつらなら叶えられると思ってるんだよ」
と相川は子どものように瞳を輝かせて言った。
「スゴいですね…」
と勇次郎が言うと
「でさ、fateの活躍を見て君たちみたいな若い子がいつか自分も世界にって夢見て音楽やって…。で、日本のミュージシャンがどんどん世界に通用するレベルになって海外でも活動するのが当たり前になって…そうゆうの考えると楽しくなるんだよな」
と相川は言った。




